心霊スポットの噂より知ってほしい、ある巫女の話「白高大神」【奈良】

白高大神
奈良最大の心霊スポットと噂される白高大神。朽ち果てた神社は不気味ですが、元々ある宗教施設でした。優れたシャーマンとして一世を風靡した巫女中井シゲノの人生をご紹介します。

少女が悪霊に取り憑かれたという噂

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2ちゃんねるのオカ板やネット上の心霊スポット探訪サイトなどで白高大神(しらたかおおかみ)に関するうわさ話を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。ここは数多くの祠や朽ち果てた鳥居が点在していて、地元では有名な心霊スポットとなっているのです。

例えば面白半分で訪れた16歳の少女が、悪霊に取り憑かれて頭がおかしくなってしまった──というような話はネットですぐに見つけることができるでしょう。

しかし詳しく検証しているサイトは少ない

白高大神
白高大神は奈良県で最も恐ろしい地として有名になり、Youtubeには肝試しに訪れた人の動画がどっさりアップされています。しかしながらあくまでうわさ話の範疇を出ないような探訪記が多く、白高大神が本当はどのような場所であったのか詳しい考察がされているサイトは数えるほどしかありません。

キーワードは「玉姫教会」「中井シゲノ」

白高大神
白高大神について調べることはさほど難しくはありません。なぜなら入り口の鳥居に、「玉姫教会」「中井シゲノ」とはっきりと宗教法人名、教祖名が刻まれているからです。この2つの名前ですぐに見つかるのが、東京大学出版会から出ている、アンヌ・ブッシィ著『神と人のはざまに生きる──近代都市の女性巫者』という書籍です。

『神と人のはざまに生きる』とは

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アンヌ・ブッシィは日本で16年間暮らし、民族宗教研究のフィールドワークを専門としていたフランス国立極東学院教授です。『神と人のはざまに生きる』は、中井シゲノという女性宗教職能者の人生を日本語で上梓した研究論文。まだ民族宗教学が日本でも重視されていなかった1980年代にフランス人である著者が根気強く聞き取り調査を続けたという、大変貴重で価値ある資料でもあります。

中井シゲノの人生

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中井シゲノは1903年(明治36年)に奈良の農家に生まれました。巫女であった大叔母の才能を受け継ぎ、8歳で初めて神が降りるという体験をして以来、大叔母の元でシャーマンとなる修行を続けました。19歳で結婚し長女と長男をもうけますが、22歳の時に事故で長女の足が目に直撃して失明してしまいます。

失明後滝壺で滝行を続ける

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目が見えなくなったシゲノは、観音菩薩を祀っている滝壺で滝行をすることにしました。古の昔、天皇が盲目の皇子の目を滝の水で洗ったことで、皇子の目が見えるようになったという霊験あらたかな滝でした。

狐の守護神が降りてきた!

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1927年(昭和2年)、突然「白高(しらたか)」という真っ白なキツネの神様(守護神)がシゲノに降りたのです。これまで何も見えなかった目に明るい光や色が映るようになりました。シゲノはその後も滝行を続け、その間に次女も生まれました。しかし今度は3年後に夫が亡くなるという不幸に見舞われます。

玉姫社を譲られる

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1934年(昭和9年)夢のお告げでなけなしのお金を持って大阪に一人赴き、夢に出てきた神社をタクシー運転手と共に探すシゲノ。そこでようやく見つけた神社が、安居天神とその境内にある玉姫社でした。これまでの人生、白高のキツネ、夢のお告げのことを安居天神の宮司さんにお話しすると、宮司さんは今は祀る氏子のいない玉姫社を、シゲノに譲ることを約束しました。

大阪中から信者が集まる

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1936年(昭和11年)にしげのは大阪に定住し、修行三昧の日々を送りました。玉姫社の信者は徐々に増えていきました。主な信者は芸者さん、料亭などの女将さん。神がかりになったシゲノは、信者さんの悩み事をピタリと当て、的確なアドバイスを与えました。戦争中にも信者は大阪中から続々と集まるようになり、中には政治家、官僚、会社経営者といった人々もシゲノのもとに通うようになりました。

伏見稲荷神社のお墨付き

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そして1939年(昭和14年)、玉姫教会は全国の伏見稲荷の総本山、伏見稲荷大社の特別講社になるまで成長しました。敗戦で信者が激減したものの「本物の神の言葉を聞ける巫女」としてシゲノの名声は高まっていったのです。

奈良に修行の道場を開く

白高大神
ここ奈良の白高大神は、滝行の道場として玉姫教会によって開かれたものです。不治の病に苦しむ人、悩み事を抱えた人が道場に通い、シゲノは神を降ろして解決方法を語りました。シゲノの能力はずば抜けており、信者はますます増えていきました。

天才的なオダイ・中井シゲノ

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シゲノのような巫女のことは「オダイ」と呼びます。著者が伏見稲荷の神官から聞いたというこんなエピソードがあります。神官の一人は「中井シゲノに会えば、他のオダイに会うには及ばない。彼女のようなオダイはもういない」と言ったそうです。

不思議な赤の迷宮・4キロ続く千本鳥居「伏見稲荷大社」【京都】
   京都の伏見稲荷といえば無数に連なる赤の鳥居。ふもとから山の上まで4キロも続く千本鳥居です。新緑に鳥居の朱色が映えて壮観な眺めです。実は千本どころか1万基もあるんですよ。

89歳の大往生を遂げる

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玉姫教会は1964年(昭和39年)に伏見稲荷大社の大阪南支部に昇格したものの、その後は次第に信者が減ってしまいました。中井シゲノは1991年(平成3年)、89歳の大往生でこの世を去りました。たくさんいた信者さんはどこに行ってしまったのでしょう。今では見る影もなくここ白高大神も廃墟化してしまっています。

なぜ玉姫教会は巨大化しなかったのか

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天才女性シャーマンと言えば、奈良県の天理教教祖・中山ミキ(1798〜1887)、大本教の出口なお(1837〜1918)、天照皇大神宮教の北村サヨ(1900〜1967)の名前が浮かびます。中井シゲノは1903年生まれですのでやや遅れたものの、彼女らに匹敵する(または凌駕する?)ような能力者でした。なのになぜ玉姫教会はこのように廃墟化してしまったのか、最初とても不思議でした。第二の天理教になった可能性も十分にあったというのに。

シゲノの能力が図抜けていたからこそ

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一時期は毎月何十件と外回りして、個人の悩みを聞き神を降ろしていた中井シゲノ。でも彼女の能力が図抜けていたからこそ、直接神の言葉を聞けなくなった信者さんが離れてしまったのでしょう。巨大宗教団体化するためには、企業のように儀式のマニュアル化や後継者への指導が必要なのですが、中井シゲノの天才性に依存していた玉姫教会は、彼女亡き後の組織の維持が難しかったのかもしれません。

シャーマンとしての人生を全う

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また中井シゲノ自身も、生涯修行を続け神との対話に命をかけていました。宗教団体の巨大化は維持よりも、個人の神との交わりの方を大切にしたかったのでしょう。そういう意味では彼女は真のシャーマンとして生きた、最後の巫女だったと言えます。

今は狐の白高さんとおしゃべりかな?

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私は夕暮れ時に白高大神を訪れてみましたが、恐ろしい場所とは感じませんでした。単に私に霊能力がなく鈍いだけなのかもしれませんが。廃墟化しているものの神社はひっそりとした佇まいで、自然に溶け込んでいるかのようでした。今は中井シゲノさんは白狐・白高と差し向かいで、のんびりおしゃべりでもしているのかもしれません。

まずは調べてみよう

白高大神
ただここが心霊スポットである理由は本当は別にあって、何らかの事件が起こったりしたのかもしれません。でも単に「寂れているから」、「怖そうな雰囲気だから」といったことで、無責任な噂に振り回されるのはいかがなものでしょうか。遊び半分面白半分ではなく、そこに何があったのかを真剣に調べて真摯な気持ちで足を運ぶなら、悪霊も寄り付かないのではないかと個人的には思います。

あくまで自己責任で

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とは言え。たとえ思い込みだとしても具合が悪くなってしまう人もいらっしゃるかもしれません。それに廃墟化しているので転んだりしたら大怪我にもつながります。個人のお宅ではなく神社なので、足を踏み入れることは違法ではありませんが、心霊スポットと言われる場所を訪れる時はあくまで自己責任でお願い致します。(2013年02月02日訪問)【麻理】

当ブログでは基本的に廃墟や心霊スポットは扱っていませんが、白高大神の本当の歴史をぜひ知っていただきたく記事にしました。

参考文献

地図&情報

白高大神(しらたかおおかみ)
住所 :奈良県奈良市大和田町1392
※情報修正2017年09月

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