日本一物証の残る怪談『番町皿屋敷』のお寺「長久寺」【滋賀】

長久寺
一ま〜い、二ま〜い……皿を数える幽霊・お菊の怪異を語る『番町皿屋敷』。皿屋敷の伝説が残る地は全国各地にありますが、滋賀県彦根の長久寺には、お菊の墓と皿の実物が存在します。

『番町皿屋敷』とは?

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『番町皿屋敷』はこんなお話です。

下女のお菊はある日誤って下方の皿を割ってしまい、怒った主に手打ちにされます。以来夜になると井戸のそばにお菊の幽霊が現れて皿の数を「いちま〜い、にま〜い……」と数え、そして最後に「一枚足りない」と恨めしそうにつぶやくようになりました。この怪異が夜ごと続き、とうとうお家断絶になってしまったのでした。

日本で唯一お菊の皿が残っているお寺

長久寺
お菊の怪談が残るのは全国で50ヶ所近くあるそうです。細かいディテールは各地で違っているものの、おおよその怪談はこの流れ。柳田国男によると「封建社会において理不尽に殺された使用人」の存在を元に作られた典型的な物語だといいます。似たような話が各地で起こったため、皿屋敷の話を借りて言い伝えとして残ったんですね。

一番有名なのは江戸五番町に伝わる番町皿屋敷ですが、実は彦根の長久寺は日本で唯一「お菊の皿」の実物が残っています。

彦根の皿屋敷騒動について

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彦根の皿屋敷騒動は一般に伝えられる物語と少し違っています。

皿は井伊直政が徳川家康から拝領されたものを大阪冬の陣で武功のあった孕石(はらみいし)家に与えたと言われています。1664年に彦根藩主の孕石政乃進は侍女のお菊と恋仲になりますが、政乃進の本心を確かめるために「皿と私とどっちが大事?」と家宝の皿を一枚割ってしまいます。

長久寺の皿はすべて割れてしまっている

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「私と仕事とどっちが大事?」的な事を聞かれると男性としては困りますよね。わざと皿を割ったお菊に怒り心頭の政乃進。結果お菊を手打ちにしてしまいます。

そして怒りが収まらない政乃進はすべての皿を割ってしまいました。長久寺には皿は9枚あったものの大正時代に貸し出した際に3枚が紛失。現在は6枚が残っていて言い伝え通りすべての皿が粉々に割れてしまっています。

長久寺に事前予約するとお菊の皿を見せていただけるとのことです。(画像はYouTubeより)

お菊の墓も残っている

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またお菊さんの墓は本来長久寺の末寺に無縁仏としてあったのですが廃仏毀釈運動によって廃寺に。一説によると、長久寺に墓が移管されてから一年後に墓石にお菊の戒名が浮かび上がるという怪異が起こったそうです。これもまた不気味ですね。

『番町皿屋敷』は本当にあったことかもしれない

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なお、お菊を殺した政之進は後に出家。全国行脚してお菊供養の旅を続け、孕石家は断絶してしまいました。また長久寺にはお菊さんの供養の際に屋敷にいた女性292名の名が書かれた寄進帳も存在しています。身分の低い女性のためにこれだけしっかりした供養がされるのは異例のことです。

割れた皿、墓、孕石家の断絶、寄進帳──とかなり歴史的物証、事実が残っているので本当に彦根にはこんな怪異があったのかもしれませんね。(2016年01月09日訪問)【麻理】

参考番組

「歴史ミステリー 番町皿屋敷は階段ではなかった?」。30分以上ある動画ですが、実際の番組は10分ほどです。

参考文献

地図&情報

長久寺(ちょうきゅうじ)

住所 :滋賀県彦根市後三条59
電話 :0749-22-0914
時間 :09:00~17:00
拝観料:無料
駐車場:無料(5台)
関連URL:皿屋敷 – Wikipedia

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