コロポックルの家!? 明治の論争と軍需工場「吉見百穴」【埼玉】

吉見百穴
岩山にあいた無数の穴。埼玉県吉見町の吉見百穴は、明治時代にコロポックルの住居かそれとも墳墓かと大論争を巻き起こしました。軍需工場にも使われた不思議な穴を見学しました。

天狗や雷神があけた穴?

吉見百穴
吉見百穴(よしみひゃくあな)は現在確認されているだけで219個の穴があります。江戸時代にも十数個見つかっていたので、その昔には天狗があけた穴、雷神の仕業などとも噂されましたが、現在では古墳時代の横穴式集合墳墓であることが分かっています。これほどの規模の遺跡は大変珍しく、大正12年には国指定史跡となりました。

史跡の一部を見学することができる

吉見百穴
219の穴は全て開放されているわけではありません。南側の通路は以前は見学できたようですが、現在は立入禁止の札が立てられています。看板の新しさからいってつい最近まで入ることができたみたい。がけ崩れかしら。

ホビット、いやコロポックルの家!?

吉見百穴
岩山に開けられた穴の直径は約1メートルほどで腰をかがめてやっと体が入る大きさ。『ロード・オブ・ザ・リング』のホビットの住居みたいですよね。そんな風に考えた人こそ、吉見百穴の発掘調査を行った明治時代の帝大大学院生・坪井正五郎氏です。ただしホビットではなく、妖精・コロポックルの家であるとして。

人類学の第一人者・帝大の坪井正五郎

吉見百穴
坪井正五郎は日本の人類学の創始者の一人で、東京大学理学部生物学科に在学中に学友と人類学の会を創立し、明治20年(1887)にこの岩山の調査を行いました。そしてこの横穴は小人のような日本の先住民族・コロポックルの住居であるという説を主張しました。

コロポックルの存在を証明できないと反論

吉見百穴
コロポックルはアイヌ民族の間で信じられていた不思議な力を持つ小人で、「竪穴に住む人」という意味のトィチセコッチャカムイとも呼ばれます。しかし坪井正五郎と共同発掘した白井光太郎は「コロポックルは妖精のようなもので存在の証明はできない」と坪井説を否定しました。

明治時代の帝国大学はトンデモ説いっぱい

吉見百穴
妖精の家だ! いいや違う! みたいな論争を真面目にしているのがなんとも牧歌的ですよね。明治時代の帝大は福来友吉博士の超能力論争とかあって面白いです。夢とロマンがある時代でした。

千里眼千鶴子と明治時代の超能力大論争「福来博士記念館」【岐阜】
    福来友吉博士。透視・念写などの超能力研究で知られる異端の学者です。福来博士の出身地・岐阜県高山市には明治時代に巻き起こった超能力論争に関する福来博士記念館があるんですよ。

飛行機を作る軍需工場として

吉見百穴
さてこの吉見百穴の別の顔は軍需工場の跡地。吉見百穴は昭和20年に飛行機を作るための大規模な軍需工場として利用されたのです。当時東京武蔵野市にあった中島飛行機が爆撃されて航空機の生産ができなくなったため、慌てて吉見百穴が工場候補地として選ばれたのでした。

設計図もないまま重要史跡をダイナマイトで爆破

吉見百穴
時は戦争末期。日本軍はほとんど設計図のないままダイナマイトで岩盤を爆破しました。先に述べたように吉見百穴は大正15年には国指定史跡となっています。それなのにこんな荒っぽい方法で軍需工場を作ったなんて狂気の沙汰です。それだけ日本の戦況が苦しく軍部は焦っていたのでしょう。

できあがって一ヶ月後に終戦

吉見百穴
高さ3メートルの広々とした通路が碁盤の目のように走っています。訪れたのは夏の暑い日でしたが、ひんやりとした空気。ここには当時井戸やお風呂もありました。

突貫工事だったので落盤事故で亡くなった方も多かったそうですがようやく工場が完成、昭和20年の7月にはエンジン部分の製造が開始されました。しかしご存知のように1ヶ月後には日本は終戦を迎えます。

たった一ヶ月で軍需工場は無用の長物に

吉見百穴
日本の歴史的に重要な史跡をダイナマイトで破壊し、多数の落盤事故死亡者を出し、飛行機は作られること無く軍需工場は無用の長物に。軍部の上層部は吉見百穴に工場建設の前の時点で日本が勝つことはないと分かっていたろうになんたることか……。

心霊スポットとしての噂

吉見百穴
古代の死者の眠りを妨げたからか、または無用な破壊をして死者を出したからかここは幽霊が出るという噂もある心霊スポットとしても知られています。霊感ゼロの私としては怖くもなんともありませんでしたが、ただただ虚しい気持ちでいっぱいになりました。

関東では貴重なヒカリゴケの自生地

吉見百穴
さてそんな悲しい歴史のある吉見百穴ですが、さらに別の顔があります。それはヒカリゴケの自生地。ヒカリゴケはホタルのように自らが発光するのではなく、球状の細胞がレンズのように光を反射して明るく見えるのです。ヒカリゴケが自生する地はとても珍しく、関東平野で見られるのはここの他に皇居のヒカリゴケが知られています。

暗闇にかすかにぼんやり光るコケ

吉見百穴
とてもかすかでしたが、よく目をこらすとぼんやり光っているのが観察できました。ヒカリゴケの淡い光を写真に撮ることは難しかったので、ぜひあなたの目でその神秘的な輝きをご覧になってくださいね。(2016年07月17日訪問)【麻理】

参考文献

地図&情報

吉見百穴(よしみひゃくあな)
住所 :埼玉県比企郡吉見町北吉見327
電話 :0493-54-4541
休業日:年中無休
入場料:大人300円
時間 :08:30~17:00
関連URL:吉見町役場 吉見百穴/ヒカリゴケ
※情報修正2016年10月

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