男より犬を愛した女の悲しいイヌガン伝説「ティンダバナ」【与那国島】

ティンダバナ・イヌガン伝説
沖縄県与那国島の祖納集落を一望できる・ティンダバナ(ティンダハナタ)。今回はティンダバナに伝わる悲しくも奇妙な物語、男よりも犬を愛した女の伝説をご紹介しましょう。

久米島の女と小浜島の男の子孫

ティンダバナ・イヌガン伝説
昔々たくさんの男たちとオス犬一匹と女が乗った貢納船が、久米島から琉球王国へと向かっていました。ところが途中嵐に遭い船は漂流。一行は無人島であった与那国島に巡り尽きました。

男が一人ずつ消えていく

ティンダバナ・イヌガン伝説
島は湧き水に恵まれていてみんな安堵したものの、その夜恐ろしい事が起こり始めました。一行のうちの男が一人また一人と次々姿を消していったのです。とうとう最後に残ったのは犬と女だけになってしまいました。この犬と女が住み着いたのがティンダバナと呼ばれる岩の砦です。

小浜島の漁師も漂着

ティンダバナ・イヌガン伝説
一方、小浜島の男が漁をしている時に漂流して、同じく与那国島にたどり着きました。ティンダバナまでやってきた男は女に出会いました。女は血相を変えて言いました。

女の忠告にも関わらず男はとどまった

ティンダバナ・イヌガン伝説
「ここには猛犬がいるので、見つかれば噛み殺されます。どうか早く島を出てください」 しかし女はあまりに美しく、男は女のそばから離れようとしませんでした。そして男は用心のためにガジュマルの木の上に登って眠りました。

格闘の末に犬を殺した男

ティンダバナ・イヌガン伝説
するとその晩に目をらんらんと光らせた巨大な犬が、唸り声を上げて木の上の男に襲いかかろうとしました。男は漁に使っていた銛で、格闘の末になんとか犬を突き殺しました。翌日返り血に染まった男を見て、女は犬の遺骸はどこに埋めたのかと聞きましたが、男はかたくなに場所を教えようとはしませんでした。

7人の子供をもうけたが……

ティンダバナ・イヌガン伝説
その後二人は夫婦になり、7人の子宝に恵まれました。長い月日が経ちました。ある日のこと、男はこれまで隠し通してきた犬の遺骸を埋めた場所を、女に話してしまいました。もう子供も7人生まれたし、女に話しても良いだろうと思ったのです。

女はいなくなってしまった

ティンダバナ・イヌガン伝説
しかしその夜女はいなくなってしまいました。翌日男はあたりを探しまわり、犬の遺骸を埋めてある場所へ行ってみました。すると女は犬の骨を抱いて死んでいました──

与那国島の人々は久米島の女と小浜島の男が結ばれてもうけた7人の子の子孫であると言い伝えられています。

異類婚姻譚の典型的な昔話

ティンダバナ・イヌガン伝説
以上『与那国島異聞(ikemaroo1著)』の「イヌガン伝説」の概略です。イヌガンとは与那国島の言葉で「犬神」という意味です。

私はこういった民間伝承が好きで、個人的に全国の言い伝えを調べているのですが、イヌガン伝説は民俗学で言う異類婚姻譚(いるいこんいんたん)の典型的なお話で、たいてい「悲劇で終わる」という昔話の文法にも沿っている興味深い伝説です。

イヌガン伝説は与那国民俗資料館のサイトでも全文読むことができる。(イヌガン1|与那国民族資料館

与那国の伏姫と八房

ティンダバナ・イヌガン伝説
また曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』に書かれた、伏姫と八房のカップルを思い出された方も多いでしょう。この物語は、中国の「盤瓠伝説(ばんこでんせつ)」からヒントを得たとも言われています。与那国島から台湾が見えるぐらいですから、与那国島は中国の伝承の影響が大いにあることが考えられるでしょう。

「犬祖伝説」とも呼ばれる伝承は、インドネシアから中国南部にかけて広がっており、宮古島や長崎にもこの系統の話が伝わっているという。なお「犬婿入り」の話は日本全国に点在しているが、土地の人々が伝説の子孫であるという内容は、日本の南の島々に限られる。

いろいろ考えさせられる

ティンダバナ・イヌガン伝説
そういう硬いお話は別にしても、この悲劇的なラストシーンにはとても引き込まれますね。たとえ子供を7人もうけたとしても、女は本当に愛する人(犬)を忘れられないものなのなんだなあ。いろいろと考えさせられる物語です。特に男性にとっては。(2012年05月13日訪問)【麻理】

参考文献

地図&情報

ティンダバナ
住所 :沖縄県八重山郡与那国町与那国
電話 :0980-87-2402(与那国町観光協会)
入場料:無料
時間 :見学自由
駐車場:無料
関連URL:与那国民族資料館
※情報修正2017年09月

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