まるで紅の要塞! 広島県福山市の草戸稲荷はエキセントリックな外観に反して、初詣の時期には40万人が訪れるメジャー神社です。県内では広島護国神社についで参拝者が多いんですよ。
草戸稲荷神社は日本三大稲荷の一つ?
日本三大稲荷(にほんさんだいいなり)と呼ばれる寺社は諸説あります。調べてみると第一等の京都・伏見稲荷は文句無しとしても、第二、第三の稲荷を主張しているところは日本各地にあります。広島県福山市の草戸稲荷神社(くさどいなりじんじゃ)もその一つ。
そう言えば以前ご紹介した豊川稲荷も日本三大稲荷と言われていましたね。
弘法大師・空海が創建した歴史ある神社
草戸稲荷神社は平安時代に空海(弘法大師)が隣接するお寺・明王院の鎮守としたのが始まり。福山市内では初詣の参拝客が最も多く訪れ、その数40万人とも言われています。広島県内でも広島護国神社に次いで多い参拝客ですし、長い歴史もありますから、メジャー神社であることは間違いありません。
山を背景にそびえ紅の要塞
なぜここが珍スポットなのかというと、理由はこの社殿です。山を背景にそびえるコンクリート建築は、まるで紅の要塞。巨大な楼閣はあまりにも迫力がありすぎる奇っ怪建築となっているからです。下から見上げた時のかっこよさと言ったらもう!
以前の草戸稲荷神社は芦田川の中洲にあった
もともと草戸稲荷神社は目の前の芦田川の中州にあったのですが、度々洪水によって社殿が壊されてしまっていました。この社殿は昭和14年に建てられたものなんですね。コンクリート製の堂々たる三階建てなのでもう洪水で破壊されることはありません。
懸作り(かけづくり)のユニークな建築
このように崖や山にぴったりとくっつくようにして建てられた木造建築物を「懸造り(かけづくり)」と言います。これまでも京都の清水寺や、福島の左下観音堂をご紹介しました。日本各地にはたくさんの懸造り建築の寺社がありますが、世界的に見ると珍しい建築方法です。
参拝者はコンクリートの階段を登って本殿へ
昔の本殿は拝殿の裏にあって目立たないものだったそうですが、このド派手なコンクリート建築になってからは、楼閣の最上部に移設されました。参拝者は階段を使って登ることができますので、私もえいこらせと上に行ってみました。
福山市を一望できる絶景が広がる
なんて清々しい景色でしょう! 福山市内を一望できますよ。目の前には芦田川。高層の建物があまりないので空が広々としていますね。草戸稲荷神社が人気なのも素晴らしい眺望があるからなのかもしれません。
ただ高所恐怖症の人にとっては怖すぎる風景かも
本殿から下を覗いてみた風景です。芦田川にかかる朱塗りの太鼓橋が見えます。河川敷の緑とのコントラストが美しいですね。でも……うう、クラっとします。高所恐怖症の人にとってはかなり怖い景色かもしれません。
鎌倉時代〜室町時代に栄えた草戸千軒町(くさどせんげんちょう)
でもあなたは疑問に思いませんでしたか? いったいなぜもともと川のど真ん中に神社なんて建てたんだろうって。実はこのあたりは鎌倉時代から室町時代に草戸千軒町(くさどせんげんちょう)という大規模な都市があったのです。様々な商人や職人が集まる商業の街だったと言われています。
洪水によって沈んだ、幻の中世大都市
草戸千軒町の遺跡は芦田川の中洲にあったのですが、遺跡のほとんどは洪水のために破壊されてしまいました。江戸時代の中頃・福山藩士によってまとめられた『備陽六郡志(びようろくぐんし)』という資料によれば草戸千軒は1673年の大洪水で川の底に沈んだと記述されています。
なぜ草戸千軒町がなくなってしまったのかは謎のまま
洪水によって壊滅した幻の中世都市──なんてロマンがかきたてられますね。実際草戸千軒町は「日本のポンペイ」とも言われています。でも実はなぜ集落が16世紀ごろになくなったのかははっきりとは分かっていません。平安時代からあった草戸稲荷神社の神様はきっと幻の街の興亡をご覧になっていたでしょうね。(2017年05月03日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
草戸稲荷神社(くさどいなりじんじゃ)
住所 :広島県福山市草戸町1467番地
電話 :084-951-2030
休業日:年中無休
時間 :08:00~16:00(※本殿開門時間 参拝は自由)
拝観料:無料
駐車場:無料(100台)
関連URL:草戸稲荷神社