広島市内中区の交差点にキツネの像が立っています。広電江波終点前ということもあり交通量も結構ある通りです。いったいなぜこんなところに? 今回はある狐の妖怪にまつわるお話です。
ブロンズ像は、キツネ界の女ボス・おさん狐
この像のキツネの名前は、おさん。おさん狐とかおさんわ狐などと呼ばれている狐の妖怪です。名前から言ってメスで、年老いたおばあ
さんキツネです。一説には御年80歳。500匹もの眷属(けんぞく:一族郎党。または手下)を従える、キツネ界の女ボスです。
馬方や美女に化けて人々をからかっていた
江波のおさん狐は馬方や若者、とくに美女に化けることが多く、人間を騙してはからかっていたそうです。でも決して人を殺めるような残虐なことはしなかったので地元の方からは親しまれているキツネと言われています。
まんが日本昔ばなしの『おさん狐』
私も『まんが日本昔ばなし』で「おさん狐」の回を見たことがあるのですが、美女・美熟女に化けては若者たちを騙し、若者の方でもキツネと知りつつ一晩過ごす豪の者もいたとか、また旅の男に酒をさしつさされつキツネが昔の恋を語る──という酸いも甘いも噛み分けた大人の男女の話でびっくりしました。(まんが日本昔ばなし〜データベース〜 – おさん狐)
おさん狐が祀られている丸子山不動院
ここ広島のおさん狐は、江波のブロンズ像から少し離れた丸子山不動院(まるこやまふどういん)に祀られています。こちらもついでのお参りすることにしました。ほら、この看板にも狐のイラストが描いてあるでしょう?
広島のおさん狐は2種類いる!?
ところで愛され系おばあちゃんのおさん狐だけでなく、実は広島市内には邪悪なおさん狐のお話も伝わっています。こちらのおさん狐のお話もご紹介しておきましょう。(オサンギツネ | オサンギツネ | 怪異・妖怪伝承データベース ※リンク切れ)
その昔おさんという狐がいました。おさん狐は尻尾に火をともしてよくライオンに化けて人を騙していました。ん? ライオン?
おさん狐のせいで職人が打ち首に……
ある職人があまりに悪戯がすぎるおさん狐を捕まえて火あぶりにしようとしました。おさん狐は翌晩に大名行列に化けてみせると言って職人に許しを請いました。翌日の晩、見事な大名行列が現れたので職人がおさんを褒めると、実はそれは本物の大名行列で、職人は打ち首になってしまいました。
キツネがライオンに化ける?
うーん、そもそもキツネがライオンに化けるって日本の民話っぽくないんだけど──とツッコミが入りそうですが、このお話にはタヌキと化かし合いをして大名行列の殿様にキツネが斬られた、またはタヌキが斬られた──というバージョンもあるみたいです。
おさん狐、結構酷いことしてるみたい
他にも漁師のおばあさんに化けておじいさんを騙して魚を横取りし、後日狐が化けたものと勘違いして本物のおばあさんをおじいさんがぶっ叩いてしまったとか(あったかふるさと憩いの場)、美女に化けてわざわざ妻や恋人のいる男に言い寄って一悶着起こしてほくそ笑む──とかかなり性悪なおさん狐の言い伝えもあります。
今も広島の街中で生き続けているおさん狐
性悪悪女系なのか善良おばあちゃんなのか──いずれにしても昔の民話のキツネが、現代の広島でブロンズ像として地元の方々に親しまれているというのは微笑ましいものがありますね。私は21世紀になっても生き続けているこんな妖怪や民話が大好きなのです。(2017年05月03日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
おさん狐の像(おさんぎつねのぞう)
住所 :広島県広島市中区江波東 広電江波終点前信号
駐車場:なし
関連URL:オサンギツネ | オサンギツネ | 怪異・妖怪伝承データベース※リンク切れ