絶世の美女・玉藻前は恐ろしい九尾の狐「化生寺・殺生石」【岡山】

化生寺・殺生石
玉藻前(たまものまえ)は、平安時代末期に鳥羽上皇の寵愛を受けた絶世の美女。その正体は九つの尾を持つ妖狐・九尾の狐。玉藻前にまつわる岡山県真庭市の化生寺を訪ねました。

手塚治虫『百物語』の玉藻前

化生寺・殺生石
私が玉藻前を知ったのは、手塚治虫の『百物語』でした。手塚治虫は生涯で3度ゲーテの『ファウスト』をマンガ化していて、その一つが『百物語』です。

主人公・不破臼人(ふわうすと)が悪魔との契約で手に入れたいと願う美女が玉藻前でした。マンガだけでなく昔から歌舞伎、浄瑠璃、小説などでひっぱりだこの人気悪女(?)ですよ。

毒石・殺生石に変化

化生寺・殺生石
鳥羽上皇をたぶらかし宮中から脱走したものの、都の軍隊と戦いに敗れて殺生石に変化した玉藻前。殺生石に近づく人間や動物はその毒気にやられてバタバタと倒れました。そして毒石・殺生石を調伏するために使わされた名僧・玄翁(げんのう)和尚。

石は砕けて飛び散った

化生寺・殺生石
玄翁和尚が呪文とともに殺生石を砕くと、石はいくつかに割れて日本各地に飛び散りました。あなたふと、御仏の力。そのうちの一つがここ化生寺に落ち、境内に奉られているというのです。

地中深く埋められた殺生石

化生寺・殺生石
石で作られた囲いの中に大きな石が置かれていてものものしい雰囲気。この下に空飛ぶトリまで落としたという毒の石が……。説明書きによると一文六尺(約5メートル)の地中に埋められているんですって。ということはこの囲いの中の石は殺生石ではないのね。

天候・時間帯によっては不気味かも

化生寺・殺生石
お天気が良かったこともあってそれほど怖い雰囲気ではありませんでしたが、山間の静かなお寺なので、雨のしとしと降る夜は一人で行けなさそう。玄翁和尚の法力が効いているはずだし、地中深く埋められているので大丈夫とは思うのですが……。

日本各地の殺生石伝説

化生寺・殺生石
殺生石が砕けて落ちた場所ですが、新潟、群馬、広島、四国、大分などいろいろな地に伝説として残っています。最も有名なのは栃木県の那須湯本温泉にある殺生石です。温泉地だけあって硫黄などのガスが吹き出していていかにもな雰囲気なんですよ。福島県にも殺生石がありますね。

九尾の狐・玉藻前と栃木から吹っ飛んできた巨石「殺生石」【福島】
昼ドラでよく「この女狐」なんて罵り合うシーンがありますね。でもなぜ悪賢い女のことを女狐と言うのでしょう? 今回は女狐に関係ある福島の殺生石をご紹介します。

三国を股にかける妖狐

化生寺・殺生石
江戸時代の作家・高井蘭山の『絵本三国妖婦伝』には、九尾の狐はインド・中国・日本とインターナショナルに国を乱した妖怪として登場しています。殷の時代の中国では傾城の美女・妲己(だっき)として、ブッダの時代のインドでは斑足(はんぞく)太子の妃・華陽夫人として、再び周の時代の中国にて幽王の愛妾・褒似(ほうじ)として、そして平安時代には玉藻前として──

4人の美女になるとはなかなかの妖術。それにしてもどこの国の権力者も美女に弱いのね。(2008年05月05日訪問)【麻理】

参考文献

地図&情報

化生寺(かせいじ)・殺生石(せっしょうせき)

住所 :岡山県真庭市勝山748
電話 :0867-44-2062(玉雲宮)
駐車場:無料(30台)

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