これぞまさにヴンダーカンマー!「つやま自然のふしぎ館」【岡山】

つやま自然のふしぎ館
心臓バクバク、興奮しっぱなしだった岡山の珍スポット・つやま自然のふしぎ館。個人的に超お薦めスポットです。 これぞまさにヴンダーカンマー。驚異のコレクションをしかと見よ!

ヴンダーカンマーとは?

つやま自然のふしぎ館
私がなぜこれほどに推すのかというと「これぞまさにヴンダーカンマー」という博物館だから。ヴンダーカンマーとは、珍奇なものをコレクションした個人的博物館のことです。これについて書き始めると止まらないので詳細は弊ブログ「スチームパンク大百科」の記事をご参照ください。

ヴンダーカンマー(Wunderkammer)驚異の部屋とは何か?
ヴンダーカンマーはドイツ語ではWunder(驚異の) Kammer(部屋)と書きます。15世紀のイタリアから発生し18世紀後半まで欧州で流行した珍品を蒐集した部屋です。

2万2000点の蒐集品

つやま自然のふしぎ館
もとは学校の校舎だったという木造の建物には、2万2000点を超える珍しい動物の剥製・昆虫の標本、化石、鉱物、人体の臓器などが展示されています。自然科学中心ですが、一部工学系のレトロメカも集められていますよ。

古き良き時代の懐かしい博物館

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その趣は古き良き時代の懐かしい博物館。旧・三重県立博物館(三重)名和昆虫博物館(岐阜)を思い出す感じ。しかしそのコレクションの規模たるや東京大学の学術資料室に匹敵するのではないかと思われます。

(閉鎖)デジャブを感じるレトロ博物館「三重県立博物館」【三重】
子供の頃に訪れた気がする……そんなデジャヴを感じる博物館が、三重県の三重県立博物館です。昭和の香りのするレトロな外観は古き良き博物館のイメージ。※博物館リニューアル前の記事です。
虫に関するトリビア満載のレトロ博物館「名和昆虫博物館」【岐阜】
「春の女神」とも呼ばれるギフチョウ。ギフチョウを再発見・命名した名和靖博士は明治から大正にかけて昆虫研究に力を尽くした学者です。名和博士の岐阜市名和昆虫博物館を訪れました。

ヴンダーカンマー的な三つの理由

つやま自然のふしぎ館
しかしつやま自然のふしぎ館がヴンダーカンマー化しているのは、単に蒐集数が多いというだけではありません。理由は三つ。一つ目はここは近代的な博物館の整然とした分類よりも、人間の好奇心のおもむくまま並べてみるという「極めて人間的な展示方法」を優先している点です。

独特な剥製の展示方法

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この剥製のコーナーをご覧ください。ジャングルを模したジオラマでは、トリたちが木々で羽を休め、獣が獲物を狙って徘徊する様子を再現しています。氷の上でゾウアザラシが直立し、トラは牙をむいて今にも襲いかかりそう。

レトロで美しいラベル・説明書き

つやま自然のふしぎ館
展示品にはどれも美しい手書きで書かれたラベル、説明書きがつけられています。黒や青のプレートに白の筆文字がしびれます。これだよ、これこれ! こうでなくちゃ。そしてその文章がふるっています。

人間くさい魅力的なラベル

つやま自然のふしぎ館
オオサンショウウオの標本にはこうあります。

ハンザキ窒息死 冬眠後空腹でコイにかぶりついた。大きすぎて口の中の鼻の孔をふさいで窒息死した。その時も他の一匹のハンザキが、しっ尾の方にかぶりついて引きちぎった。ハンザキの習性を示すよい標本である

このような人間くさい魅力的なラベルは、現代の博物館では消え去ってしまいました。

森本慶三氏の個人コレクション

つやま自然のふしぎ館
そしてヴンダーカンマーたる二つ目の理由は、つやま自然のふしぎ館が個人の蒐集が元になっている点です。ここは内村鑑三の弟子であった森本慶三氏が私財を投じて設立した博物館なんです。

神の天地創造が原点

つやま自然のふしぎ館
そして三つ目の理由。「神様の永遠の力と神聖は天地創造このかた造られた物によって知られて明らかに認められる」という聖書の言葉が動機になっている点も見逃せません。

ここで『愉悦の蒐集ヴンダーカンマーの謎(小宮正安著)』を引用してみます。

ヴンダーカンマーが誕生し、発展を遂げてきた過程の根底にあったのは、一切を重んじる万能主義だった。(中略)万能主義が目指す究極の目的とは、宇宙を創った神の英知を探ることにあった

森本氏が神の天地創造から博物館設立の発想を得たのも、正当なヴンダーカンマーの思想に合致しているのです。

最も興味深い展示

つやま自然のふしぎ館
一番興味深い展示品が、人体に関するコーナーです。精巧に作られた手脚の筋肉、骨格、血管模型。美しさにしびれます。もうワクテカが押さえられません。

一つ目のブタ・馬

つやま自然のふしぎ館
胎児のホルマリン漬け(本物)、一つ目のブタの標本。一つ目の馬の写真もあります。このような奇形に関する展示も現代的な博物館では見られなくなりつつあります。怖々ながらも興味津々。

2017年09月01日追記 ツイッターでいただきました情報によりますと、この写真の胎児の標本や馬の写真などは現在撤去されているそうです。展示物がこの記事の当時のものと変化していることもありますのでどうぞご注意ください。

なんと創立者そのものも展示!

つやま自然のふしぎ館
さらに驚くべきことになんと創立者ご自身も展示品となっているのです! こちらは森本慶三氏の脳。もちろん本人の遺志により解剖され、法的な許可を得てつやま自然のふしぎ館に収められています。森本氏とご遺族の熱意にひたすら感嘆するばかりです。

天皇陛下もご訪問

つやま自然のふしぎ館
いかがでしょう、この博物館の素晴らしさが私のつたない文章で伝わるとよいのですが。ちなみに現天皇陛下も皇太子時代に訪れています。あちこちの珍スポットで皇族の方々の足跡を見るにつけ、彼らの珍スポ好きフットワークの軽さに驚かされますね。(2008年05月06日訪問)【麻理】

参考文献

地図&情報

つやま自然のふしぎ館(つやましぜんのふしぎかん)

住所 : 岡山県津山市山下98-1
電話 :0868-22-3518
入場料:大人700円(隣の歴史民族館との共通券あり)
時間 :09:00 ~ 17:00(入館16:00まで)
休館日:月曜日 (3、7、9月)月・火曜日(1、2、6、11、12月)その他の月及び月・火曜日が祝日の場合は開館、年末年始(12月29日~1月2日)
駐車場:無料(隣接の津山観光協会駐車場)※4月1日~15日のみ有料
関連URL:つやま自然のふしぎ館

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