福井県のお寺に伝わる河童の銅印。水の中にひきずりこまれるなど河童の害に合うこともなく、あらゆる水難から守ってくれるという銅印です。ツイッターでの謎解きの協力を仰ぎました。
お寺の詳細は伏せます
このお寺は開創から千年以上も経つ由緒正しいお寺ですが、観光寺ではありません。銅印を拝見しお話を伺うこともできたのですが、ご住職からお寺の名前を公開するのは避けてほしいとお話がありました。この記事ではお名前をS寺とさせていただいています。
この文字を理解できる方いませんか?
ただご住職ご自身もこの印鑑が何であるのか興味があるとおっしゃっていたので、この記事でぜひみなさんのお知恵を拝借したいと思います。浅学な私にはこの銅印に書かれた文字が全く理解できないのですが、広いネットの世界にはこの方面に深い知識をお持ちの方もきっといらっしゃることでしょう。
河童の銅印にまつわるお話
持ち手の部分に龍が刻まれた河童の銅印の写真とともに、このお寺に伝わる不思議なお話をご紹介します。今から250年ほど前、このあたりに太治郎兵衛という川人足の親方が住んでいました。ある夜更けのこと、太治郎兵衛が病気で臥せっていると部屋の戸を叩くものがありました。
戸口にうずくまる生臭い小男
するとそこには生臭い臭いのする小男がうずくまっていました。「私はこの川に棲む児屋源太郎ともうします。先日の大水で家が流されてしまい住処を探していましたところ、S寺の観音堂の崖下の渕が見つかりました。しかしその渕の底に光るものがありまして、怖くて近づくことができません。どうかこの光るものを取り除いていただきたいのです」
大洪水で棲家を失った河童
先の大水とは、宝暦5年8月に川の堤防が切れ田畑家屋がたくさん水没した大洪水のことでした。太治郎兵衛はこの小男が河童であると見破り、一度は断ったものの仕事を引き受けることにしました。次の日、働いている川人足たちにそのことを語ると「林の又三郎(りんのまたさぶろう)」という男が名乗り出ました。
水底にあった槍の矛先
林の又三郎は泳ぎの達人でした。観音堂の渕にたまった水に飛び込み、濁った水をかき分けて進むと、水底の岩に槍の矛先が挟まっているのを見つけました。林の又三郎は見事矛先を引き抜いて水面に上がってきました。太治郎兵衛も他の川人足も林の又三郎を褒め称えました。
お礼に渡した5つの卵
翌日のこと。河童の児屋源太郎が太治郎兵衛の家を訪ねました。「おかげさまで皆安心してあの渕で暮らすことができるようになりました」そしてお礼として、うずらの卵のようなものを5つ差し出しました。しかし太治郎兵衛は少し薄気味悪く感じ、その卵を捨ててしまいました。
次のお礼の品は銅印
しばらくすると再び河童の児屋源太郎がやってきて、卵は食べたかと尋ねました。正直に捨ててしまったというと、今度は銅印を差し出しました。「これを持っていれば日本国中の川太郎(河童)からいたずらされることはありません」
病を癒す、コリの卵
そして先日と同じ卵を3つ渡しました。「この卵はコリという鳥の卵で、大変めずらしいものです。ぜひ召し上がってください」。太治郎兵衛が卵を食べてみると、長年苦しんでいた持病がすっかり良くなり、川工事の仕事に精を出せるようになったということです。
現在の川はお寺から離れている
以上がS寺に伝わる河童の伝説です。これが昔洪水を起こして河童が住めなくなったと言われている川。透き通った水が清々しい川ですね。でもお寺があるところからは30メートルほど離れています。伝説ではお寺の観音堂の下に渕があるということでしたね。
資料に残るカッパ伝説の証拠
この画像は昔のお寺の写真です。境内のすぐ横に川が流れています。昔はお寺のすぐ横を川が流れていたんですね。太治郎兵衛という人物も過去帳に記されている実在の人物ですし、槍の穂先も長年太治郎兵衛の本家の庄家太左衛門の家に保存されていたそうです(残念ながら、戦災で消失)。
不思議な銅印とコリの謎
資料もいくつか残されているので単なるお伽話ではないようなのですが、この銅印が実際に何であるかは現在分かっていません。万病を治すコリの卵も正体不明。銅印は一説には日本と中国の間の絹の貿易で使われたのではないかとも言われています。歴史ミステリーの謎にぜひ挑戦してみてくださいね。【麻理】(2011年09月25日訪問)
追記:2014年10月06日
ツイッターでこの河童の銅印のミステリーについて、謎解きを呼びかけたところたくさんの方が情報をくださいました。Togetterにまとめましたのでよろしければご覧ください。(福井県のお寺に伝わる河童の銅印について – Togetterまとめ)
この銅印の謎に一歩近づけたような気がします。情報を下さった名探偵の皆様、本当にありがとうございます! 引き続き情報がありましたら、ぜひツイッターコメント欄などでお知らせください。【麻理】
参考文献
地図&情報
S寺
住所 :福井県