からくりとは糸やゼンマイなどの動力を使って、人形や仕掛けなどを動かすこと。石川県金沢市、金沢港の先に、金沢港大野からくり記念館があります。からくり好きなら行くしかない!
メルヘンチックな円形の建物
金沢港大野からくり記念館(かなざわこうおおのからくりきねんかん)の建物はこんな可愛らしい建物です。建築家・内井昭蔵氏のデザインで、曲線、円をイメージさせるメルヘンチックな建築。子供たちがたくさん集まるからくり記念館にふさわしい外装ですよね。東京の世田谷美術館や沖縄の浦添市美術館も内井氏の建築ですよ。
金沢に永住した発明家・大野弁吉
なぜからくりと金沢市の大野町が関係あるの? それは江戸時代の発明家・大野弁吉(おおのべんきち 1801〜1870)が永住した地だからであります。彼は京都で生まれ、長崎で医学、天文学、航海学、写真学などさまざまな分野の学問を習得し、結婚後に石川の大野村へと移り住みました。
加賀の平賀源内
彼はからくり人形、望遠鏡、写真機、エレキテル、ライター、ピストルなども制作したことから加賀の平賀源内、日本のレオナルド・ダ・ヴィンチなんて呼ばれることもあります。写真機は1枚の銀板写真を見ただけで構造を理解して自作してしまったとか。まさに平賀源内や、からくり儀右衛門こと田中久重のようなすごい天才ですよね。

可愛らしいおもちゃの仕掛けも
館内には大野弁吉の作ったからくりだけでなく、江戸時代に各地で流行したからくりの数々が見られます。茶碗を乗せるとお客さんのもとに運ぶ・茶運び人形、米俵の穴からネズミが顔を出したり引っ込めたりする・ねずみからくりなど可愛らしい仕掛けのものも作りました。大野弁吉は彫刻家としての才能もあったので、メカニカルなだけでなく、美術工芸品としても美しい出来になっています。
お金も地位も興味なし!
これはご存知エレキテルですね。こんなものまで自作してしまう大野弁吉、すごすぎます。でも出世やお金に全く興味がなく、加賀藩が才能に目をつけて召抱えようとしたのに断ってしまったりして、生涯貧乏のまま過ごしました。本人はモノづくりが大好きで、人を驚かせる仕掛けを作れたらそれで満足だったのでしょうね。
ちなみに私が改造したエレキテルはこちら。

あっという間に般若の顔
角出しガブという人形の仕掛け。普段は可愛らしいお顔に娘さんなのですが、小猿という仕掛け糸を引くと口が裂けて、血走った目に変わり、角が出ます。バネはセミクジラのヒゲ、糸は三味線の糸が使われています。女心は江戸時代からこういうもんです。
のぞきからくりの体験もできる
のぞきからくりをご存知ですか? 江戸時代後期に流行った、お祭りや縁日の見世物のからくりです。見物料は4〜8文(60円〜120円ぐらい)で、中を覗くと物語の人物や背景を楽しめるというもの。覗いてみると口上の音声が流れて、継子いじめのお話が始まりました。見るも涙、語るも涙?
人力で回る舞台背景
こちらは回り舞台のからくりを再現したジオラマ。舞台転換の時に背景がぐるっと回るあれです。私の年代だと『8時だョ!全員集合』の回り舞台が印象に残っていますが、こんな昔からあったのね。もちろん当時は人力。舞台下の裏方さんがえっさ、ほいさと回していたのであります。
指南車の実物大レプリカ
指南車の実物大レプリカもありましたよ! 指南車とは歯車の装置によって人形が常に一定の方向を向くようになっている仕掛け。古くは中国の伝説の皇帝・黄帝が作らせたと『史書』に書かれています。
常に一定方向を指し続ける人形
指南車とはいうけれど「南の方角を指すメカ」ではありません。磁石ではなく、車輪が曲がった角度と同じ分だけ人形を反対向きに回すしくみ。だから最初に設定した方向を人形が指し続けるんですね。黄帝が敵に攻め込まれた時、指南車のおかげで霧の中でも方向を見失わずに勝利したそうです。
ぐるぐる回してみよう!
私がパシャパシャ写真を撮っていると、学芸員の方が「良かったら指南車を動かして見ませんか?」と声をかけてくださいました。ラッキー! あっちこっち動かしても人形の指差す方向がまったく変わりません。調子に乗ってぐるぐる回してみましたよ。
体験教室でからくり英才教育
本館の隣にある子供からくり体験棟では毎月2回、体験教室が開かれています。からくりおもちゃやパズルがいっぱい! 金沢市の子、うらやましいな。こんな施設で子供の頃からからくりの仕組みを学んだら、将来有望なメカニックになりそうです。(2006年07月23日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
金沢港大野からくり記念館(かなざわこうおおのからくりきねんかん)
住所 :石川県金沢市大野町4丁目甲2番29
電話 :076-266-1311
時間 :09:00~17:00
休館日:水曜、年末年始
入館料:大人300円
駐車場:無料