地下水をたたえた巨大プールにうねうねとした根が沈められています。ここは富山県の魚津埋没林博物館。水の中の2000年前の巨木は神秘的かつ幻想的です。埋没林とは何なのでしょう?
なぜ2000年前の木が水中に?
普通木は年月が経てば腐ってしまいます。しかし魚津の埋没林(まいぼつりん)は不思議なことに2000年もの間、元の木材の質を保っています。その理由の一つが冷たくきれいな地下水の存在があります。そのためこのように水中に木を保存する展示方法が取られているのです。
1930年の魚津港建設工事で発見
1930(昭和5)年の魚津港建設工事の際に海岸の砂浜を掘り下げた土中から200株以上の樹根が発見されました。富山県魚津市の埋没林は国の特別天然記念物に指定されています。樹根の大部分は杉の木で、推定樹齢500年の巨木も発見されました。
タイムカプセルのように保存された樹根
土木工事をしていた人たちはさぞ驚いたことでしょうね。土の中からたくさんの巨大な根が次々と出てきたのですから。魚津では2000年前から海面が上昇したことで杉の原生林に砂や泥炭層が厚く堆積し、そのままタイムカプセルのように木を数千年も保存し続けたのです。
発掘現場を覆うようにして建設された水槽
この水中展示室は1952年から53年にかけて行われた発掘現場を囲うようにして水槽を作り、地下水を満たしたものです。水中の埋没林は発見された当時のまま、全く動かすこと無く水中で保存されています。2000年前の景色がまるごとそのまま残っているだなんてワクワクしませんか?
第二次世界大戦中、戦後に薪として燃やされてしまった
そんな貴重な埋没林ですが、多くは第二次世界大戦中や戦後に薪として燃やされてしまったそうです。あああ、なんてもったいない……。魚津埋没林博物館に展示されているのは燃やされずにすんだ数少ない埋没林です。
あまりに幻想的で時が経つのを忘れる
地下水が入れられている巨大プールは側面にのぞき窓が取り付けられているので、あらゆる角度から木の根を観察することができます。その姿はあまりに幻想的で時が経つのを忘れてしまいそうです。なんと美しいのでしょう。
珍しい幹の部分の埋没林
こちらは乾燥展示室。私が見上げているのは、珍しい幹の部分の埋没林。普通土に埋まらなかった部分は腐り落ちってしまうため、埋没林のほとんどは木の根の部分です。でもこれは土に埋もれる前に倒れたので幹ごと保存されました。高さは10mもあります。
上下を逆に展示してある樹根
この樹根は上下をひっくり返して展示しています。全体の直径は5m30cm。根っこが幹を抱え込んで成長しています。幹が枯れて倒れた後に、杉の根が幹の上に成長したと考えられています。なんとも不思議な形。現代アートみたい。
チェーンソーがなかった時代なので手斧で切断
ここの展示は触って良いとのことなので手を伸ばしてみました。ほほー、これが2000年前の木か。ところどころ切断されているのは、昔の職人さんが手斧(ちょうな)を使って手作業で切った跡。チェーンソーの無い時代は掘り出すのも一苦労だったでしょうね。
魚津市のもう一つの名物・蜃気楼
魚津埋没林博物館はその名の通り埋没林がメインのミュージアムですが、魚津市のもう一つの名物といえば蜃気楼です。魚津の蜃気楼は江戸時代から有名だったそうですよ。ハイビジョンホールや企画展示室では蜃気楼についても学べます。
ただし蜃気楼が見られる条件は極めて厳しいです
ただし魚津で蜃気楼が見られるのは4〜5月頃がピークです。平均気温が平年以上、1日の温度差が10度以上、北北東の微風、晴れが数日続いた後──などかなり条件が厳しいので、見たい方は長期滞在しないと難しいかもしれません。(2017年11月04日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
魚津埋没林博物館(まいぼつりんはくぶつかん)
住所 :富山県魚津市釈迦堂814
電話 :0765-22-1049
休業日:年末年始
時間 :09:00~17:00
入場料:大人530円
駐車場:無料
関連URL:特別天然記念物 魚津埋没林博物館~埋没林と蜃気楼の博物館