兵庫県西宮市の越木岩神社には御神体となる巨大な霊岩・甑岩(こしきいわ)が鎮座しています。六甲山地はこのような不思議な巨石群で知られています。パワースポットとしても有名です。
こしきいわの「こしき」って何?
越木岩神社(こしきいわじんじゃ)の名前は御神体である甑岩(こしきいわ)が由来です。甑(こしき)というのは古代中国で発祥した米などをを蒸す蒸籠(せいろ)のことです。甑の具体的な形や使用法は舞台遺跡/高坂丘陵ねっと様のページ(リンク切れ)を御覧ください。
六甲山系の磐座信仰の一大霊場・越木岩神社
もともとこのあたりは、古代より岩を信仰する磐座(いわくら)が盛んでした。六甲山地には特別巨石が多いことから一大霊場となっていたんですね。戦前に荒深道斉(あらふかみちなり/どうさい)という神学者が六甲山系の調査を数十回にわたって行い、数多くの磐座を発見したことで広く世に知られるようになりました。
甑岩にまつわる不思議な伝説
越木岩神社の巨石・甑岩には不思議な伝説があります。
大阪城の石垣を築く工事が始まった時、この甑岩を城の石垣にする計画が持ち上がりました。村人はこの岩には白い竜が住み着いていると必死で抵抗したものの、結局は岩を切り出す作業が始まってしまいました。
岩の裂け目から摩訶不思議な白煙が吹き出した!
石切職人たちがのみを打つと、突然岩の裂け目から白い煙がもうもうと吹き出しました。その白煙にふれた職人たちは苦しみもだえ斜面を転がり落ちました。役人たちも命からがら逃げ出して工事は中断。そして甑岩は越木岩神社の御神体として今も人々の信仰を集めているのでした。
おしまい。
一周すれば女性向けの様々なご利益があるそうです
甑岩は拝殿左側の斜面の石段を登った先にあります。高さは10m、周囲40mの花崗岩の巨石です。小高い丘の上に鎮座していてその周りの小道をぐるりと一周することができます。女性の守護神で、縁結び、恋愛、子授け、安産のご利益があるそうですよ。また音楽や芸術関係にも霊験あらたかとか。私もよーく拝んでおきました。
大阪城修築のときの名残り
この石垣のような部分は大阪城修築(1620〜1628)のときに石垣として切り出されそうになった際の名残りです。備中松山城主である池田備中守長幸の家紋が刻まれています。
この岩の上から摩訶不思議な煙が出てきたのかー。このような言い伝えの民話と歴史的史実ががっちり組み合わさった物的証拠を見るとワクワクが止まりません。
海の安全、豊作に霊験あらたかな貴船社
甑岩だけではなく、山頂には様々な磐座があります。これは貴船社(きふねしゃ)。龍神をお祭りしていて、海上の安全、豊作など水に縁のある諸行を守護しています。
戦後の土地開発で失われてしまった巨石群
こっちにも磐座。甑岩を中心にあちこちにこんな大岩がゴロゴロしています。実は六甲の巨石群は、戦後の宅地開発で失われてしまったものも多いのですが、このように神社の境内にあるものはなんとか残されているんですね。
保存が危ぶまれる越木岩神社の磐座
しかし越木岩神社の磐座の保存も実は危ういという噂があります。神社の境内の森の北側と東側はこんな空地になっています。以前ここには夙川学院短期大学があり、50年前に学校が建設される際には磐座を保存する方向で話がついていました。
敷地内の磐座は破壊撤去……
しかしその後資産運用の失敗により短期大学はポートアイランドへ移転。神社としては磐座の保存を訴えましたが、夙川学院が土地を売却した不動産会社はマンション建設のために磐座を容赦なく破壊撤去してしまったのです。
今後も各地で磐座は失われつつあるのかもしれません
私が訪れた日はたくさんの参拝者が訪れていて、甑岩をはじめとする磐座の小道をギリギリですれ違うぐらいのにぎわいでした。熱心に手を合わせる方々の行列もあったほどです。千年単位で祀られてきた信仰の場所が徐々に小さくなってしまっているのはなんとも悲しいですね。(2018年05月03日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
越木岩神社(こしきいわじんじゃ)
住所 :兵庫県西宮市甑岩町5-4
電話 :0798-31-0009
拝観料:無料
駐車場:無料(20台)
関連URL:子授け・泣き相撲の越木岩神社│兵庫