黄金色の蛇腹式内扉、時計針式フロアインジケータ。そんなレトロエレベーターに乗ってみたいと思いませんか? 京都市下京区の東華菜館には日本最古の稼働中のエレベーターがあるんですよ。
京都繁華街で目を惹くクラシカル建築
京都の繁華街である四条河原町の四条大橋西詰。鴨川沿いに人目を惹く美しい建物があります。これが老舗の中華料理店・東華菜館(とうかさいかん)です。京都で有名な北京料理と言えばここ。地元の方にも観光客の方にも人気の名店です。
アメリカ人建築家・ウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計
鴨川側から見た東華菜館の建物。大正時代に新しいビアレストランをイメージして、建築家のウィリアム・メレル・ヴォーリズにデザインを依頼。スパニッシュ・バロックの洋館が大正15年(1926)に完成しました。
洋食レストランから中華料理店へ転身
戦争中になると洋食レストランとしての営業が難しくなり、二代目店主の浅井安次郎氏が友人の中国人・于永善氏に建物を託しました。そして昭和20年(1945)の末に北京料理店・東華菜館が誕生しました。現在の店主は于純政氏で、京都市左京区に東華菜館・洛北店も1993年にオープンしました。
映画やドラマのロケにも使われる登録有形文化財の建築
ご覧ください! この壮麗な入り口を! 繊細な彫刻が施されていますね。登録有形文化財に指定されているのも納得です。特徴的で美しい建築なのでよく映画やドラマのロケにも使われるています。アニメ『夜は短し歩けよ乙女』にも出てくるので聖地巡礼する方もいらっしゃるとか。
大正ロマンあふれる美しい内装・家具調度品
内部も負けてはいません。あっちを見てもこっちを見てもアール・デコの美しい装飾が目に入ります。家具調度品も惚れ惚れするようなものばかり。私が好きなスチームパンクの時代よりはやや新しいのですが、こんな大正ロマンあふれる内装にもワクワクが止まりません。
蛇腹・手動式のレトロエレベーターが現役で稼働中
東華菜館に来た一番の目的は、このエレベーターです。ガラスと木でできた入り口、蛇腹式の扉、手動式──大正時代を舞台にした映画やドラマでよく見かけるレトロなエレベーターが現役で動いているのですよ。これは超貴重!
1924年米国OTIS製のエレベーター
1924年の米国で製造・輸入されたOTIS製です。扉の上部に設置された時計針式のフロアインジケーターは、エレベーターの箱が上がったり下がったりするのに連動して針が動くのです。このオーバーエンジニアリングなアナログ感がたまりません。
【動画】で見る東華菜館の蛇腹エレベーター
写真・動画撮影の許可をいただいて何度か乗り降りさせていただきましたのでぜひ、蛇腹式エレベーターの動きをご覧ください。内部が狭いため箱の全体を撮影することができなかったのですが、手動式のメカニカルな動き伝わればいいなあと思います。
日本一の優美な東華菜館エレベーター
このような蛇腹式エレベーターは東京・銀座の奥野ビルにもあるのですが、キラキラと黄金色に輝く蛇腹や重厚な木製モールディングなど、エレガントさ・優美さの点で言えば日本一のレトロエレベーターと言っても過言ではありません。
ただしエレベーターのみの見学はできません
このあまりにも美しすぎるエレベーター、きっとご覧になりたい方がたくさんいらっしゃると思います。でも一つだけご注意を。エレベーターのみの見学はできません。それはそうですよね、ここは中華料理店なのですから。ぜひランチ・ディナーとともに楽しんでください。
一般客席もあるけれどできれば個室予約をおすすめします
大正時代のモダン建築に興味のある方は、お料理を食べるお部屋も見どころです。予約なしでも気軽に食べられる一般客席もありますが、個室を予約するとじっくりインテリアを堪能できますよ。コース料理はお一人様5000円からです。(※2017年07月現在)
博物館の中で食事をしているかのような空間
お料理よりもインテリアに興味津々だったので、お皿が運ばれてくる合間にあちこち写真を撮ったりメモしたりしていました。まるで博物館の中で食事しているかのよう。でもあまりせわしないのも同行の旦那様に申し訳ないので、早々に切り上げてお食事をいただきました。
意外にリーズナブルな正統派北京中華料理
お料理ももちろん美味しゅうございました。前菜から始まって一皿ずつウエイターさんが個室の扉を開けて給仕してくださるスタイルです。正統派の北京中華料理でかなり量もありました。お値段もロケーションや歴史を考えればかなりリーズナブルだと思いました。
店主のご挨拶まで
ふと窓に目をやるとキラキラした鴨川の流れが眩しい。食事の終わりには店主の于さんがご挨拶までしてくださる心遣い。ウェイターさん、ウェイトレスさん、スタッフのみなさんも丁寧な物腰でにこやかに対応してくださりサービスも大満足でした。
古き良き時代のエレベーターと中華料理をご堪能あれ
西洋風の建物で中華料理とは一見ミスマッチに思えますが、様々な異文化が一般庶民にまで波及した大正時代をそのまま具現化しているようでした。古き良き時代のエレベーターと伝統の中華料理をぜひご堪能あれ。(2017年02月26日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
東華菜館(とうかさいかん)蛇腹エレベーター
住所 :京都府京都市下京区西石垣通四条下ル斎藤町140-2
電話 :075-221-1147
休業日:年中無休
時間 :11:30~21:30
駐車場:なし
関連URL:古き良き伝統 京都の東華菜館