大阪府岸和田市のきしわだ自然資料館は驚くほど剥製が充実しています。かつてこの地にはB級マニア垂涎の東洋剥製博物館があり、閉鎖の際に数多くの剥製が資料館に寄付されたからです。
ネットでかつての姿を偲ぶ
東洋剥製博物館は館長・蕎原文吉(そばはらぶんきち)氏自らの剥製コレクションを公開した博物館でした。パンダにトラ、ピューマにキリン──500点以上の剥製が展示されていたのですが閉鎖してしまいました。
『全国お宝スポット魔境めぐり!』のインタビュー
『全国お宝スポット魔境めぐり!』という本に掲載されている蕎原氏のインタビュー記事が実に素晴らしいものでした。つくづく東洋剥製博物館の閉鎖が残念です。
きしわだ自然資料館に寄贈
しかし幸いなことに蕎原氏のコレクションはきしわだ自然資料館に寄贈されたため、3階に常設展示されています。蕎原コレクションの一部だけですが、今も見学できるのは嬉しい。
今では手に入らない剥製がずらり
レッドデータブック記載の貴重な動物たちが並んでいますよ。これらのコレクションはワシントン条約(1973)前に集められたものばかりなのでどうぞご安心を。もうこんな博物館は今後作ることはできないでしょうね。
触ってもOKの剥製展示
ライオンやシロクマはお触りOKというのも嬉しい。触っても大丈夫な博物館は珍しいです。軽く叩くとコンコンと堅い音がします。見学に来ていた子供たちもぺたぺたなでていました。子供たちに愛されている博物館ですね。
東洋製要博物館に比べるとこぎれいすぎるかも
うーん、でも惜しい。東洋剥製博物館時代の展示はこんなにこぎれいではなく、混沌としたカオス状態だったんですよ。何十匹という狸がはっぴを着てだんじり祭りやっていたり、ごった煮状態の陳列で珍獣の剥製が所狭しと並んでいたり。
整然としすぎていて残念
生物学的分類はオールスルー。個人の趣味を前面に押し出した爆走状態の博物館がユニークでした。匂い立つような珍の芳香が漂っていたのに、新しいきしわだ自然資料館は整然としすぎているなあと。
兵士の慰霊のために蒐集
『全国お宝スポット魔境めぐり!』によると、これらのコレクションは戦争で亡くなった兵士の慰霊のための蒐集なのだそうです。蒐集の資金作りに葬儀の贈答品の会社を設立。さらに博物館の入館料で得る収益を寺院建立資金にしようとするも、売り上げが上がらず計画は中断。閉鎖に至るというわけで。
蕎原さんについて詳しい展示があってもよいのでは
一応蕎原さんについての説明書きもあるのですが、もうちょっと氏の貢献を称えるような展示にしても良いのではないでしょうか。その後東洋剥製博物館はどうなったのかと学芸員さんに訪ねましたが、みなさん詳しいことはご存じないようでした。
きしわだ自然資料館の他の展示
せっかくなので、1階2階の展示も見て回ることにしました。ナウマン象の標本模型や、ブナ林を再現したジオラマなど、なかなか丁寧に作られている展示です。身近な生物を飼育展示しているコーナもあります。
リアルなため池の自然
「ため池の自然」展示は結構リアル。池の中の小さな生き物たちの生活を学べます。男の子の人形がしゃがんで池をのぞき込んでいます。こういう半ズボン小学生ってまだいるのかな。
庶民的なコレクション
学芸員さんやきしわだ自然友の会の会員さんが持ち寄ったものが多く展示されています。コイにニワトリ、ウシガエル、ネコ──と博物館としてはかなり庶民的なラインナップ。私も骨格標本を作ったことがあるのでで楽しく見学しました。
アットホームな博物館
ティッシュを敷いたキャンディーの缶にはひからびたヤモリ。カードには友の会の中学生(かな?)の子が「親せきの家で大そうじをしていた時荷物の間からひからびて出てきた」と書かれていました。アットホームな雰囲気が良いですね。(2008年08月16日訪問)【麻理】
追記:東洋剥製博物館の今は?
かつて東洋剥製博物館のあった場所へ行ってみました。更地になっていて何一つ残っていませんでした。寄贈されなかったコレクションはいったいどうなってしまったのか……。うう、もったいないなあ……。
参考文献
地図&情報
きしわだ自然資料館(きしわだしぜんしりょうかん)
住所 :大阪府岸和田市堺町6-5
電話 :072-423-8100
時間 :10:00~17:00 (入館16:00まで)
休業日:月曜 祝日、祭礼、年末年始など
入館料:大人200円
駐車場:無料7台
関連URL:きしわだ自然資料館 – 岸和田市公式ウェブサイト