大阪人権博物館リバティおおさか。部落問題を中心とする人権問題専門の博物館です。メディアがあまり取材することがないスポットですが、存在を知っていただきたく思い足を運びました。
人権問題専門の博物館
タクシーで向かう途中、 運転手さんが話しかけてきました。
「わざわざあんなとこ行くなんて学校の先生か何か?」
「わしこの辺地元なんやけど、あのへんは昔っからいろいろありましてなあ」
「あそこらゴーストタウンですわ、ほんま」
……話を聞いているうちにだんだん顔がうつむいてくるのでした。
同和対策事業の一環
大阪人権博物館は、1969年に国会で成立した同和対策事業特別措置法の同和対策事業の一つとして開設されました(※)。建物は戦前に西浜部落の人々が解放に向けて闘った、栄小学校の旧校舎を利用しています。このような経緯から展示は同和問題を中心に扱っていますが、様々な差別についても学ぶことができます。
家の中にある差別意識
一般家庭の部屋の中を再現したコーナ。床にちらばった参考書は「学歴は必須」という差別、ご飯を作るのはお母さんの役目という性差別、ブランドのバックは「お金持ちが良い」という差別。良い仕事に就きたい、健康が一番、文明社会は素敵、家柄がなくちゃ──こういうのも差別なのかな。
女性差別問題の展示
私は女性なので性差別の展示に興味がわきました。女性の人生すごろくなるものが掲示されていましたが、目指すは良い結婚。子供の時には親に従い、嫁いでは夫に従い、老いては子に従うお決まりのコースを歩むことになります。
逆に男性差別というものもあります。痴漢の冤罪や離婚時の親権についてもそうでしょうね。
容姿端麗──は今でも?
こちらの展示は「容姿端正明朗な方」「上品な婦人」「身長1米55糎以上」などを条件にした新聞の求人広告。まあ、これはおおっぴらに言わないだけで就職活動の現場では今もありますよね。
アイヌ民族・在日コリアン・ウチナーンチュ
アイヌ民族や在日コリアン、ウチナーンチュといった人々のコーナもあります。学校で習う日本史ではさらっと流されてしまうので、歴史的な事件などここで詳細に知ることができます。私のアイヌ民族の知識の大半は手塚治虫の『シュマリ』ぐらいなので勉強になりました。
『野茂とホモの見分け方』
13年前に起こった論争の展示・書籍『野茂とホモの見分け方』。ゲイコミュニティからの抗議を受け発禁処分になった本です。同性愛者に対する差別だという意見や、単なるジョークが言葉狩りにつながるという反論など様々な意見があります。笑いと差別は紙一重なんですね。
被差別部落と皮革産業
被差別部落では昔から皮革業の仕事が行われてきました。牛や馬、ネコなど様々な動物の皮、太鼓をはじめ革を使った工芸品・美術品の展示があります。岡山の鼻ぐり塚でも思ったんだけど、誰だって肉を食べて革製品を使ってるのにどうしてなんだろう。不思議だ。

誰もが差別され、差別する側に
最後にホームレスの展示を見ました。この不況の世の中、職をなくして路頭に迷う可能性は誰にとってもゼロではありません。大阪人権博物館に来ると誰もが何かしら、差別されたり差別する側に立っていることに気づかされます。
同和問題をはじめとする差別問題には大きな利権が関わっていることもあり、簡単には結論が出ませんが、展示を見ながら考えをまとめてみるにはとても良い施設だと思います。(2008年08月17日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
(休館)大阪人権博物館(おおさかじんけんはくぶつかん)リバティおおさか
1985年の開館から35周年を迎えましたが、2020年06月01日から休館となりました。ご注意ください。なお2022年をめどに新しい場所で再出発の予定です。住所 :
大阪府大阪市浪速区浪速西3-6-36
電話 :06-6561-5891
時間 :水〜金は10:00~16:00(入館16時30まで) 土は17時まで
休館日:日曜、月曜、火曜、第4金曜、祝休日、年末年始(12月20日〜01月10日)、04月01日〜10日、03月20日〜31日、08月13日〜15日
入館料:大人500円
駐車場:無料(20台)
関連URL:大阪人権博物館公式サイト