箱根の山は天下の険♪ でも箱根の標高は846m。それほど険(けわ)しい山ではないのですが、これは関所の厳しさを歌っているのかもしれません。神奈川県の箱根関所を訪れました。
江戸時代の軍事拠点
箱根関所が設置されたのは江戸時代の初期、元和5年(1619)です。徳川幕府は全国53ヶ所に関所を設けましたが、中でも、曽福島(長野)、碓氷(群馬)、新居(静岡)そしてここ箱根の4カ所は規模の大きい重要な関所でした。この辺は日本史で覚えましたよね。
入り鉄砲に出女
「入り鉄砲に出女」という言葉を思い出した方もいらっしゃるでしょう。関所では特に江戸に入ってくる武器と、江戸から出ていく女性に注意していました。人質として江戸に住んでいる大名の奥さんが勝手に国元に逃げると幕府は困るからです。大名がこれ幸いと謀反を起こしたらえらいことですからね。この関所も明治2(1869)年に廃止。おかげで今は誰でも全国自由に旅ができるというわけ。
人見女が入念に検査
箱根の関所では入り鉄砲の検査は行っていませんでしたが、女性には特に厳しかったようです。女性の通行手形には、ほくろの位置や目鼻の形などの特徴が書かれていました女性の旅人を人見女という係が体の隅々まであらため、妊娠の有無はもちろんのこと結った髪をほどいてほくろやはげなどの特徴まで調べたというのだから徹底してます。
モノトーンの人形展示
箱根関所には常に20数名の役人が勤務していました。箱根関所ではこの写真のように等身大のモノトーン人形が置かれています。色がついていないのは、当時の人の身体的な特徴や服の色・模様が分かっていないからです。史実と異なっているとまずいため、あえてこの色にしているんだとか。
最近の資料調査で復原
とは言え表情は生き生きしてますよ。顔を見合わせて「やれやれ、今日も一日疲れましたな」と言っているようなお役人のお二人。土間で火を起こして調理中の人も。江戸時代の関所役人が書き残した『箱根御関所日記書抜』などの資料によって当時の役人の様子が分かってきたそうです。
みなさんトイレをのぞきます
トイレがあると迷わず直行。上番所の下雪隠です。格子があって中には入れませんが、観光客のみなさんも気になるのか近づいてのぞいています。すぐ隣は芦ノ湖ですが、そのまま流しているわけではなくて、汲み取り用の壺が埋め込まれていました。江戸時代の人は意外に清潔で環境にやさしいトイレを作っていたんですね。
関所破りは重大な罪
それにしても昔はセンサーや空中パトロールもないんだから、人気の少ない山を抜けるなんて難しくなさそうに思えます。でも軽い気持ちで山越えは御法度。明治大学博物館で知ったんですが、関所やぶりは、主人殺し、親殺しと並んで重大な犯罪とされていました。関所を通らずに山を抜けた者は磔(はりつけ)です。

関所抜けして死罪になった人は何人?
国境線を突破すると即銃殺ってぐらい厳しいんだなあ──と思ったら、250年の関所の歴史上死罪になった人はたったの6人しかいないそうです。関所抜けを試みた人は多かったようですが、ほとんどの人は見つかっても「道に迷った」という名目の、藪(やぶ)入りとして追放処分されました。このあたり、厳しいばかりでない江戸の法の人情が感じられますよね。
全面リニューアルで珍スポットではなくなりました
箱根関所は昭和40年オープン。90年代にはわりと香ばしい珍スポットだったんですが、昭和58年(1983)に関所の図面や報告書が見つかり、平成19年(2007)に資料に基づいてリニューアルされたんです。近くにある箱根関所資料館にほのかな残り香を感じられますのでご一緒にどうぞ。(2009年02月28日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
箱根関所(はこねせきしょ)
住所 :神奈川県足柄下郡箱根町箱根1番地
電話 :0460-83-6635
時間 :09:00~17:00(12月〜02月は9:00~16:30)
休業日:年中無休
入館料:大人500円(関所&資料館の共通券)
駐車場:無料(108台)
関連URL:箱根町 箱根関所『よみがえった箱根関所』