ここはインドか中国か? 表と裏の磨崖仏「鷹取磨崖仏」【神奈川】

鷹取山の磨崖仏
ここはインド? 中国? 実は神奈川県横須賀市です。磨崖仏(まがいぶつ)とは国宝・大分の臼杵磨崖仏のように岩に彫られた巨大な仏像のこと。エキゾチックで日本に見えません。

真名の長者の言い伝えと埋蔵金の隠し場所「臼杵磨崖仏」【大分】
大分県には臼杵磨崖仏と呼ばれるたくさんの石仏があり、日本初の国宝磨崖仏として観光名所となっています。ここにはミステリアスな言い伝えと黄金の埋蔵金伝説が残っているんですよ。

鷹取の名前の由来

鷹取山の磨崖仏
ここ鷹取山(たかとりやま)は標高139メートル。山全体が公園になっています。鷹取という地名の由来はいくつか説があるようです。

(1)鎌倉時代猟師が鷹を領主に献上していたから
(2)太田道灌が鷹狩りをしたから
(3)山が「高い」から「たか」の音が残った

……などなど。それほど高い山でもないから(1)か(2)かもね。

かつてのは建築資材として人気

鷹取山の磨崖仏
これが鷹取磨崖仏(たかとりまがいぶつ)。この山の岩は軟らかくて加工しやすいため、昔から建築土木用材として愛用されてきました。大正時代の最盛期には、5万円(現在の1億円)の生産高があったそうです。石材を採取していたから岩が垂直に切り立っているんですね。

しかし関東大震災の土地の変動によって石を船積みしていた水路が使えなくなったこと、コンクリートが人気の資材になったことで現在採取は行われていません。

横須賀市在住の彫刻家・藤島茂氏の磨崖仏

鷹取山の磨崖仏
逗子市在住の川口満という方が、横須賀市在住の彫刻家・藤島茂氏に依頼して昭和35年から1年かけて制作されたそうです。大きさは高さ8メートル、幅は4.5メートルの弥勒菩薩像です。

公園での岩登りは禁止

鷹取山の磨崖仏
つい登って記念撮影したくなりますがこの公園での岩登りは禁止なのでご注意を。この弥勒菩薩像の他にも、釈迦如来像の磨崖仏もあったのですが、昭和40年に鷹取小学校建設のために破壊。あーあ……。それにしても依頼人・川口満氏はいったいどういう方なのかしら。地元の名士かな。

実はもう一つの磨崖仏が

鷹取山の磨崖仏
ここまでは神奈川のガイドブックにもよく載っていることなのですが、実はもう一つ別の磨崖仏が存在するのです。でも公園内の地図を見てもどこにもそんなことが書かれていません。辺りに看板も説明書きもありません。もう一つの磨崖仏は遊歩道の途中にありますので注意深く探して下さい。

木をかき分けて行くと壁に磨崖仏

鷹取山の磨崖仏
道さえないので遊歩道の途中の木ををがさがさとかき分けて進みます。するとかつての採石跡の壁一面に石仏が! 赤、青、黄色などカラフルな色が塗られていて、先ほどの藤島氏の磨崖仏とは全く雰囲気が違っています。色が塗られていないものはまだ制作途中なのか、放置されているのか……?

彫刻したり塗装したりすることは禁止

鷹取山の磨崖仏
そのタッチは素朴で彫刻のプロではなさそう。半立体の藤島磨崖仏と違い、平面的なレリーフです。いったい誰がこれを彫ったんでしょう? でも傍らには「壁面に彫刻したり塗装したりすることを禁止しますという注意書き」がありますよ。藤島磨崖仏は横須賀市公認ですが、これらのレリーフは勝手に作られたもののようです。

いたずらで彫ったものではなさそう

鷹取山の磨崖仏
壁のかなり高い部分や足場の悪いところにも彫刻されています。いたずらでちょろっと彫ったという感じではありません。ちゃんと足場を組んで時間をかけて彫刻・塗装されたみたい。稚拙な部分もあるかもしれませんが、込められた強い思いが伝わってくる、とても味のある磨崖仏です。

知られていないのはもったいない

鷹取山の磨崖仏
私はひっそりと隠されるように、また横須賀市から完全に無視されたような形で存在しているこれらの仏がもったいないと感じました。土質がもろいのでまねをして彫刻する人が続くと危険があるからだと思いますが、人に知られないまま風雪に朽ちていったりしたら悲しいなあ……。

お子さんも楽しめるアドベンチャーゾーン

鷹取山の磨崖仏
さて。磨崖仏の他にも鷹取山はアドベンチャースポットとしてもお勧めです。ハイキングコースの途中には切り立つ壁を鎖を頼りに進んだり、岩をよじ登ったりするデンジャラスゾーンも。と言ってもお子さんでも楽しめますのでご安心を。

フリークライミングをしている方々も

鷹取山の磨崖仏
フリークライミング、ロッククライミングを楽しんでいるグループもいました。ただし岩登りは許可が必要ですので勝手に登るのは厳禁ですよ。そして勝手に自分で磨崖仏を彫ったりするのも厳禁です。(2009年03月02日訪問)【麻理】

追記:2009年07月06日

鷹取山の磨崖仏
この磨崖仏の制作を依頼された方、彫刻家の方について気になり、後日横須賀氏の観光課の方に取材をいたしました。ところが現在資料が全くない状態で、分かっているのは

1.逗子市在住の制作依頼者・川口満氏は実業家(どのような業種なのか一切不明)で現在はお亡くなりになっていること
2.彫刻家の藤島茂氏は二紀会委員で藤島氏も亡くなっていること

だけでした。またもう一つの磨崖仏に関しては一切不明。情報をお持ちの方がいらっしゃったらぜひご連絡くださいませ。

参考文献

地図&情報

鷹取山磨崖仏(たかとりまがいぶつ)鷹取山公園(たかとりやまこうえん)

住所 :横須賀市湘南鷹取3-3-520
電話 :046-822-8333(横須賀市環境政策部公園管理課)
入場料:なし
休業日:年中無休
駐車場:なし

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