神奈川県に全長1キロにも及ぶ、人工地下洞窟があることをご存じですか? この、日本でも極めて珍しい地下伽藍は、横浜市の定泉寺田谷山瑜伽洞。通称・田谷の洞窟と呼ばれています。
閉鎖、工事、閉鎖
田谷の洞窟は、江戸時代に地震か何かで洞門の部分が崩落しており、その後ずっと閉ざされたままになっていました。天保元年になって洞窟内の整備・工事が行われたものの、明治時代に再び閉鎖されました。理由は廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)運動。
無事、廃仏毀釈を逃れる
このとんでもない愚行でどれだけの貴重な文化財が破壊されたか、言いたいことはたくさんあるのですがそれはまたの機会に。ともかく廃仏毀釈を逃れるために閉山したおかげで、田谷の洞窟は無事、今日も存在するのでした。良かった。
鎌倉時代から真言密教の修行として
この地下洞窟が作られ始めたのはなんと鎌倉時代。真言密教の修行として大勢の僧侶がで掘り進んでいったものなのです。全長1キロの洞窟のうち、一般公開されているのは約250メートル。さあ、地下迷宮の世界へいざ行かん。
ろうそくの明かりで洞内を進む
入り口でロウソクに火をつけ洞門から入ります。洞内の気温は一年を通して16、7度。冬でもそれほど寒くは感じません。
壁面や天井に施された仏像彫刻
壁面にはたくさんの仏像。鎌倉時代から修行として彫られたものと、江戸時代の工事で彫られたものが混在しています。修行僧たちは真言をとなえながら、命をかけてノミをふるったのだと思うと身がひきしまります。
複雑な構造の地下迷宮
定泉寺で購入した吉田孝著『田谷の洞窟』に洞内の地図が載っています。これは昭和49年に早稲田大学が調査した時の立体構造図。階段を上ったり下りたり、曲がりくねった細い道が続きます。3メートルほども高さがあるドームやわき水が噴き出している泉もあります。横溝正史の推理小説に出てきそうな地下迷宮。
30分以上かけてそろそろ歩き
洞窟内はそろそろとしか進めません。薄暗いので段差に気をつけなくてはならないし、そっと歩かないとロウソクの火が風で消えそうになるのです。羅漢像(らかんぞう)、曼陀羅(まんだら)、梵字(ぼんじ)……壁面や天井に施された密教美術を眺めながらゆっくり歩きます。
30分ほどでようやく出口
ぴちゃん、ぴちゃんという地下水の音だけが響きます。平日の昼間なので人影も全くありませんし、だんだん心細くなってきます。30分ほど歩き続けてようやく出口につきました。まぶしい外の世界の光に、ほっとします。
夢幻世界を体験してみませんか?
空は素晴らしい快晴。鳥がにぎやかにさえずっています。さっきまでのひっそりとした地下世界が夢のよう。まだまだ発掘されていない地下道や解明されていない謎が多い田谷の洞窟。あなたもこの夢幻世界を体験してみませんか?(2006年02月09日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
定泉寺(じょうせんじ)・田谷の洞窟・田谷山瑜伽洞(たやざんゆがどう)
住所 :神奈川県横浜市栄区田谷町1501
電話 :045-851-2392(田谷の洞窟定泉寺)
拝観料:大人400円
時間 :09:00〜16:30
休業日:年中無休
駐車場:有料(陶郷・日昭住販有料駐車)
関連URL:真言宗 大覚寺派 田谷山 「定泉寺」 – 神奈川県横浜市 田谷の洞窟で知られる寺院です。