埼玉県の地蔵寺ではあまりの地蔵の数の多さに言葉を失います。その数1万4000体以上。無数の風車が一斉に回っている様子は胸に迫るものがあります。水子供養発祥の地を訪ねました。
紫雲山地蔵寺の沿革
地蔵寺は正式には紫雲山地蔵寺と言います。初代住職の橋本徹馬氏は以前は政治評論家として活動していました。橋本氏は社会問題の多くが人命軽視に関係があると考え、また人工妊娠中絶の後遺症に悩む人々を救うために地藏寺を建立しました。
時の総理大臣・佐藤栄作氏も落慶式に列席
昭和46年(1971)09月18日の落慶式には、当時の佐藤栄作総理大臣もかけつけたそうです。地蔵寺は水子供養の発祥の地と言われ、今も数多くの方々が水子地蔵を奉納されるそうです。
45年間に14000体の地蔵奉納
視界を覆い尽くすような無数のお地蔵様は、建立以来ここ45年の間に奉納されたものなんですね。それだけ悩める方がいらっしゃったのだと思うと物悲しいような切ない気持ちになります。
枯れない造花がよりいっそう悲しげ
カラフルなプラスチックの風車や枯れない造花が、うら悲しさを一層つのらせます。この一体一体に人々の悲しみが宿っているのだと思うとため息をつかずにはいられません。
ある意味圧倒されるような美があるけれど……
こんな風景は日本広しといえどもここだけでしょう。ある意味圧倒されるような美があります。でもとてもはしゃぐような気持ちにはなれずに、ただただ無言で境内をまわりました。
水子とは何か?
水子とは流産したり人工妊娠中絶によって死亡した胎児のことですが、もともとは日本の神話において生まれてすぐに海に流された水蛭子が由来であるとも、流産することを「水になる」と言ったことに由来するとも言われます。
水子供養は比較的新しい風習
ただし水子供養は地蔵寺の創建が1971年であることからも分かるように比較的新しい風習です。供養が女性の精神的な痛みを和らげる癒やしの効果がある一方、よりいっそう罪悪感を強めたり強迫観念の一種となっている面もあります。
水子供養の是非は宗教者の間でも賛否両論
また占い師や霊能力者が水子の祟りという概念を使って高額な供養を押し付けたりするなどの問題も出てきました。あまりに悪質な霊感商法は論外ですが、水子供養の是非については宗教関係者、学者の間でも賛否が分かれています。
いずれにしても心の慰めになりますように
どちらにしても、地蔵寺の風景が心を痛めた女性たちの慰めとなっていれば良いなと思います。お地蔵様に手を合わせて、夕暮れの寂しげな地蔵寺を後にしました。(2016年07月16日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
地蔵寺(じぞうじ)
住所 :埼玉県秩父郡小鹿野町飯田2174
電話 :0494-75-1635
拝観料:無料
駐車場:無料
関連URL:紫雲山地蔵寺公式サイト