6000体もの猿の像が奉納されている、埼玉県鴻巣市の三ツ木神社。猿はどれも性器が彫刻されており赤い粉がかけられています。いったいなぜ真っ赤? 猿の像のいわれと大欅について。
ちょうど手水舎の工事をしていました
三ツ木神社(みつきじんじゃ)は住宅街の真ん中にあり町に溶け込んでいるこぢんまりした神社です。きっとお祭りのときには地元の方でいっぱいになるんだろうなあ。ほのぼのした雰囲気ですね。訪れた時は手水舎の工事をしていました。
神社の中にあったケヤキだけが伐採をまぬがれた
三ツ木神社は400年以上前に雲海上人が諸国巡歴の途中に山王(大山咋神:オオヤマクイノカミ)を祀ったのが起源。その当時はナラやクヌギなどが生い茂る雑木林だったみたい。市街地に発展するまでにほとんどの木々は伐採されましたが、このケヤキは神社の中にあったために生き残りました。
幹の中に納められた真っ赤な猿の石像
樹高は22メートルもあり、バックリ割れた幹には大人数人が中に入れそう。幹の中を覗いてみると、中に石像が納められていました。この像は猿を模したものなのですが、真っ赤な色粉で塗られていてどきりとさせらせます。
安産で小猿を抱いて育てるサルにあやかる安産祈願
三ツ木神社は安産祈願で知られる神社です。安産祈願というと、多くの仔犬を楽に産むことから犬を祀ってあることが多いのですが、ここは猿。山王(大山咋神)の神使は猿ですし、猿も比較的安産で小猿を抱いて子育てすることにあやかって祀られているのでしょうね。
6000体もの猿の石像を奉納
境内にはなんと6000体もの猿の石像が奉納されています。願い事をする時に神社から猿の石像を一体借りて持ち帰る風習があります。願い事が叶ったら石像を戻すだけでなく新たに一体奉納するのでしょうか? 岡山県備前市の田倉牛神社はそういう倍、倍のシステムで大量の牛が奉納されていましたね。
赤色は御朱(ごしゅ)といわれる粉
でもいったいなぜこんなに真っ赤なのか。この赤い塗料は御朱(ごしゅ)といわれる粉です。自分の治したい部分に赤い粉をつけると完治すると言われています。こちらのおさるさんは全体が真っ赤。それだけ病に悩める人が多いのでしょうね。
山王の伝説
猿の石像はほとんどのものが性器を持っています。三ツ木神社は安産祈願の神様ですから、性器が真っ赤に塗られた猿が多いですね。前述のようにこの神社は山王(大山咋神)を祀っています。
山王が丹塗りの鏑矢(かぶらや)に姿を変えてして川を下ったところ、川遊びをしていた玉依姫命(タマヨリヒメノミコト)の陰部に矢が刺さり、姫が寝床に矢を置いておいたら妊娠したという伝説があります。
丹塗、矢、川が象徴するもの
丹塗りの赤色は生理の血を、矢は男性性器を、川は性交を連想させますね。山王社と関わりのある神社が懐妊や出産と結び付けられるのは自然なことです。愛情を持って子育てをする猿の像の性器が赤く塗られているのも山王信仰があるからなのでしょう。
祠の中にはぎっしりと猿の石像が納められている
祠の格子にはたくさんのよだれかけがかけられ、中にはぎっしりと猿の像が納められていました。たくさんの人々の願いがこのように形となって表れている場所を訪れるといつも心打たれます。(2016年07月17日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
三ツ木神社(みつきじんじゃ)
住所 :埼玉県鴻巣市愛の町171
電話 :048-596-0619
時間 :参拝自由
拝観料:無料
駐車場:なし