美しく魅力的なドールたち。彼女たちの開発秘話を聞いて私は涙が泊まりませんでした。ヴァニラ画廊人造乙女博覧会に引き続きオリエント工業・上野ショールームの取材レポートです。
開発のきっかけ
オリエント工業がドールの開発に取りかかったのは30年前。それまではビニール製でぽかんと口を開いたオモチャのドールが主流でした。オリエント工業社長・土屋日出夫氏は、障害を持つ男性や配偶者に先立たれた方の性生活の悩みに直面し、実用として耐えうる人形の開発を思い立ちました。
人の心を癒すドール作り
ビニール製のチャチな人形では彼らの心を癒すことはとてもできません。本当に人の心をなぐさめるドールを作るにはどうしたら良いのか? 以来オリエント工業ではあたたかみのあるドールを目指して企業努力を続けています。
性の悩みを持つ人びとの手助け
上野ショールームは以前は「上野相談室」でした。性に関する悩みを持った方が多かったんですね。私が電話で問い合わせた時も、担当の方にお話を伺った時も、悩める人びとの手助けをしたいという心からの優しさや熱意を感じました。ネガティブなイメージを払拭するための努力がビシビシと伝わってくるのです。
実用としてのドール開発研究
オリエント工業のドールは鑑賞の人形ではなく、あくまで癒しを与える実用の人形。そのため何十年もの使用に耐え、かつ使用感も良いように様々な工夫が施されています。
たとえば皮膚となるシリコンは煙草の火を押しつけても溶けないほど熱に強いそうです(「可哀相だから絶対にやらないでね」とおっしゃっていました)。もちろん防水性もあり、一緒にお風呂に入ることもできます。
自由自在に動くシリコン製ドール
シリコン製のドールは自由自在に動きます。胸を触るとびっくりするほど柔らかい。でもそれはリカちゃん人形のような胸を想像していたからで、自分の胸と比べるとかなり硬い印象でした。例えるならゴムボールをぎゅっと握っている感じ。ヌーブラっぽい感触の方がリアルなのになあ。
耐久性と使用感を重視
もっと胸が柔らかければ最強のドールになるのでは?と思ったのですが、それは素人の浅はかさ。柔らかいタプタプの胸も作ることができるのですが、握っているうちに胸がちぎれてしまうため耐久性重視の堅さになっています。ドールの胸が硬いのはわけがあったのですね。
小さくて軽い方が扱いやすい
ドールの身長は140センチから150センチほど。女性の平均身長からするとかなり小さいのです。これは「日本人男性は小柄で幼い娘の方が好き」という理由もありますが「抱きかかえるときに小さく軽い方が楽」だからです。
いかに軽量化を進めるかが今後の課題
ソフトビニール製は9キロ、シリコン製は27キロの重さがあります。人間の女性に比べると随分軽いですが、人形としてはかなり重い。慣れれば上手くかつぐこともできますが、お姫様だっこは最初は難しいとのこと。いかに軽量化を進めるかが今後の企業としての課題です。
あくまで女性の代用として
最初私はドールを購入する人は人形フェチの人なのかなと思っていました。でもお客様のほとんどは女性の代用としてドールを愛しているんだそうです。だからオリエント工業ではお客様の気持ちに応えるような経営を続けています。
お客様に結婚指輪をプレゼント
ドールをお客様に引き渡す時は、スタッフのみなさんは「娘をお嫁にやる」という気持ちだといいます。オリエント工業では購入されたお客様にはドールと一緒に結婚指輪を贈っているんですよ。末永く可愛がってあげてくださいねという気持ちが伝わってきます。
口は使用しないポリシー
また写真を見て気づかれたと思いますが、あごを握るとうっすらと口をあけるぐらいで、外国製のダッチワイフのように口をぽかんとあけたドールは一体もありません。娘たちにそんな可哀相なことはさせられないという社長の方針です。
リフォーム・引き取りのサービス
売ったら売りっぱなしのメーカさんも多いのですが、オリエント工業ではお客様へのフォローもしています。クリーニングやメイクなどのリフォームをしたり、いろいろな理由で手放すことになったドールを「里帰り」と言って引き取り、供養するサービスも。
顔を見ればどんな風に扱われたか分かる
社員さんは戻ってきたドールを一目見れば、その娘がどんな扱いをされてきたかすぐに分かると言います。可愛がられたのか、ほったらかしにされていたのか。全く同じ型で作られた顔でもその違いは明確なのだそうです。
この娘じゃなきゃだめ!
ある時、何度もクリーニングをされているあるお客様に、サービスで全く同じ型の新品のドールを差し上げたところ「なんてことするんだ!」と大激怒されたそうです。可愛がっているお客様にとって違いは一目瞭然。「この娘じゃなきゃダメなんだ!」と怒るお客様に、慌てて元のドールをお返ししたんだとか。
やはり好みは分かれるようで……
オリエント工業では様々なボディ、ヘッドのバリエーションがあります。どれも可愛らしくてはかなげで抱きしめたくなるような愛らしさがありますが、なぜか人気のある娘とあまり買い手がない娘がいるそうです。
社長の見た夢のエピソード
新作のドールの中に、美人なのにどうしても売れない娘がいました。ある時社長が夢を見ました。一番売れなかった娘にやっと買い手がついたところ、周りにいた他のドールが立ちあがって一斉に「良かったね!」と笑顔で拍手をしたという夢。
社長にとって一番思い入れのあるドールなんですって。ドールの風俗店なんかも登場しましたが、社長はあまり快く思っていないようですよ。大切な娘を風俗嬢にしたくないのでしょうね。
この手の話には非常に弱い
結婚指輪の話、リフォームされたドールとお客様の話、社長の夢の話……涙もろい私はメモをとりながら鼻の奥がツーンとなってしまって参りました。オリエント工業のドールは命がない人形だけれど、愛と魂を持っている。こんなけなげで愛しい娘たちが他にいるでしょうか。
ドールを前に敗北を感じる
パーフェクトなボディ、毛穴一つ無い肌、夢見るような瞳、そして人間以上の女性器を持つドール。愛されるためだけに生まれた娘。今後ますます進化を続け、未来には自由に動き話すドールが登場するかもしれません。負けた。女性として完全に。彼女たちに勝つために、女性としてどうあるべきか心の底から反省しました。
熱烈なユーザーが多いのも頷ける
製品だけでなく企業ポリシーも素晴らしいオリエント工業。熱烈なユーザーが大勢いるのもよく理解できました。女の私がドールを欲しくなったほどなので、もし私好みの美青年ドールが発売されたらぜひ買いたいですね。今から貯金始めよっと!(2007年06月26日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
オリエント工業・上野ショールーム(おりえんとこうぎょう・うえのしょーるーむ)
住所 :東京都台東区上野5-23-11 スグルビル2階
電話 :03-3832-4832(要・予約)
時間 :11:00~19:00(平日)11:00~18:00(土・日・祝)
入場料:なし
駐車場:なし
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