長野県の八ヶ岳高原の尖石遺跡は縄文時代の土偶や土器の発掘で知られています。その尖石(とがりいし)という奇妙な名前は、ある不思議な石に由来します。神秘的な尖石の言い伝えや財宝伝説をご紹介します。
縄文時代の遺物が発掘されている尖石遺跡
1920年代に小学校の教員をしていた宮坂英弌氏が茅野市・尖石から縄文土器を発見したことをきっかけにこの地で発掘調査が始まり、たくさんの土器・石器・土偶が出土しました。宮坂氏は自宅の馬小屋を改造して「尖石館」を開館し初代館長となりました。この尖石館は次回ご紹介する尖石縄文考古館の前身ですね。
地元の方は「とがりいしさま」と呼ぶ石
その尖石(とがりいし)遺跡という名前は、遺跡内にある公園の一角にぽつんと祀られている尖石に由来します。大きさは高さ1mほど。一見なんの変哲もない岩ですが、地元の方には「とがりいしさま」と呼ばれて大切にされています。この石が実に奇妙なんですよ。
長者が隠した巨額の財宝が埋まっている?
実はこの一帯では明治時代から土器や石器が見つかっていたのですが、村人は祟りを恐れてそれらの出土品を捨ててしまっていました。それらの遺物は昔この地に住んでいた長者のものであり、尖石の下には長者が隠した巨額の財宝が埋まっていると噂されていました。
掘り出そうとした村人が急死した長者の呪い
ある時に村人が財宝を掘り出そうとこの石の下を掘ったところ、その夜におこり(熱病)にかかって死んでしまったと言います。またこの石は地表は1mほど現れてはいるものの、地面の下はどのくらいあるのかわからないほど巨大だとも伝えられています。
岩の表面に残る奇妙な溝の謎
石の表面には模様のような溝が刻まれており、縄文時代に石斧を磨くためにつけられた跡だとも、祭祀の呪術目的でつけられた跡だとも考察されています。宝物伝説や呪いとも相まって現在も地元の人々の畏敬の念を集めている尖石。財宝を取り出そうと石の下を掘ることだけは決してなさいませんよう。(2019年05月25日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
尖石(とがりいし)
住所 :長野県茅野市豊平南大塩4734-132