ぎょろりと目をむいたおっかない閻魔大王。「悪いことをすると地獄に落ちるよ!」と親は子供をしつけますが、新潟市の普談寺には地獄と極楽を再現したジオラマがあるんですよ。新潟っ子のトラウマかも?
普談寺・別名「朝日の観音様」
新潟市秋葉区の大悲山普談寺にやってきました。長い石段を上がっていくとお堂がありました。普談寺は真言宗智山派のお寺で、昔から「朝日の観音様」と呼ばれています。なぜかということこんな伝説があるからです。
普談寺の観音像伝説
昔、和泉国(大阪)で一人の武士が海から観音様をひろいあげました。ある夜に武士の夢枕に観音様が現れて「越後(新潟)で病気に苦しむ人々を救うため、明日の夜明けに私を越後に向かって投げてほしい」というのです。武士はその通り観音様を空に投げました。
観音像のおかげで流行り病もなくなった
一方その頃、越後では流行り病に人々が苦しんでいました。ある日村人が草むらで金色に輝く観音様を見つけました。そしてそこにお堂を建てておまつりすると、越後の病気がすぐにおさまったそうです。それが「朝日の観音様」の由来。
観音様、どうかこのコロナの日本も救ってほしい!
地獄極楽の3Dジオラマを拝観するため
でも私がここに足を運んだのは本尊である木造十一面観世音菩薩座像(朝日観音)を見に来たのではなく、このお寺の一角にある地獄極楽の3Dジオラマを拝観するためでした。これまでも数々の地獄極楽を見てきた私ですので、ここもぜひにと思ったわけです。
地獄、極楽、賽の河原
プレハブ小屋のような建物のガラス戸を開けてみると……中は3種類のジオラマが作られていました。右から地獄、極楽、賽の河原です。人形はどれも極彩色に塗られていてド派手。それぞれの世界は金色の額で飾られています。
第一のジオラマ・地獄
まずは地獄。ううっ。おどろおどろしい! 閻魔大王が裸の死者たちを裁いています。中央には浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)。これは生前に行った悪さが映像として映し出される鏡です。これで死者が嘘をついてもすぐにバレてしまうって仕組み。
地獄の責め苦を受ける死者たち
地獄行きと決まった死者たちは臼(うす)と杵(きね)で粉々にすり潰されたり、後ろ手に縛られてぶっ叩かれたりしています。また背景が怖い。真っ赤に燃え盛る地獄の業火で死者たちが火炙りになってます。人形はやや可愛らしくも感じますが、絵の方はおどろおどろしさ全開。
第二のジオラマ・極楽浄土
真ん中は極楽浄土です。阿弥陀如来様を中心に、たくさんの観音様や菩薩様が雲に乗って下を見下ろしています。下は蓮の花が咲く池。天女が裸で水浴びを楽しんでいます。
カラフルで温かい雰囲気の極楽
背景は地獄とはうってかわってパステルカラーで温かい色彩です。色とりどりの花が描かれ、天女たちが空を舞っています。阿弥陀如来&仏の皆さんも、金色を基調色にカラフルな色合いなので楽しげ。やっぱりどうせ死ぬならこっちの方がいいですな。
第三のジオラマ・賽の河原
そして向かって左側が賽の河原(さいのかわら)です。親より先に死んだ子供たちがここで鬼たちにいじめられています。正直言って昔はこの仏教の考え方にはあまり賛同できなかったのですよ。だって親も可愛そうだけど、幼くして亡くなった子供だって死にたくなかったろうし。誰も得してない。
仏教における賽の河原の意味とは?
でもこんな話を聞きました。これは実は親御さんの気持ちを前に向かせるための教えなのだと。
親が毎日嘆き悲しんでいると、その間子どもたちは賽の河原で苦しまねばなりません。なぜなら「親を悲しませる罪」を犯しているからです。でも親がその悲しみを乗り越えられたら、子どもたちはここから開放されるのだそうです。
子供を亡くした親御さんへのいたわりと励まし
子どもたちが泣きながら河原で石を詰んでいます。せっかくきれいに詰んでも鬼たちがそれを蹴散らして崩してしまうのです。こんな労働、ブラック企業よりもひどい。
でもさっきの地獄絵図よりは鬼たちもカワイイ顔をしていて、どことなくユーモラスです。私は子供を亡くした親御さんへのいたわりや励まし、愛情が感じられて、それ以降は賽の河原の光景も好きになりました。
ユーモラスな表情の仁王様
ちなみに普談寺の仁王門もぜひご覧になってくださいね。普通は恐ろしい形相の仁王様なのですが、ここの仁王様は大きな目が可愛らしく、優しい人柄を感じるお顔をしているんです。地元の幼稚園児・小学生は普談寺に遠足に来ていたりするそうですよ。子供にはトラウマチックかもですが、大人になればその優しさに気づくのではないでしょうか。(2019年05月06日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
大悲山 普談寺(だいひざん ふだんじ)
住所 :新潟県新潟市秋葉区朝日2503
電話 :0250-22-2439