新潟県燕市の国上寺は、709年創建の越後最古の古刹です。そんな由緒正しきお寺に、なぜか半裸・全裸の男性たちが描かれた絵がいっぱい! あまりにも煩悩を刺激しすぎるボーイズラブ的イケメン絵巻を取材しました。
新潟屈指の古刹である大寺院
国上寺(こくじょうじ)は広大な敷地に六角堂、山門、鐘楼、講堂など歴史的建築物が点在する新潟屈指の大寺院。戦国武将上杉謙信の御祈願寺であり、高僧として知られる良寛さん、源義経、親鸞聖人、夢窓国師など歴史上の偉人たちが来山したという輝かしい歴史もあります。
2019年に賛否両論の大論争となったお寺
そんな国上寺には次から次へとクルマや観光バスが乗り付け、境内を散策する観光客も大勢います。つまりはもともと大メジャースポットであって、決してマイナー観光地というわけではありません。しかしながら2019年の4月からネットを中心に賛否両論の大反響を呼ぶ、注目のお寺になりました。
本堂の「イケメン官能絵巻」
それは冒頭の画像にある通り、本堂に設置された「イケメン官能絵巻」です。私が訪れた2019年のゴールデンウィークは、絵巻が発表されてわずか1ヶ月ということもあり、できたてほやほやの絵巻物を拝観することができたのです。
世界的アーティスト・日本画家の木村了子氏の作品
制作は美少年・美青年画で有名なアーティスト木村了子(きむらりょうこ)さんです。そもそもなぜ現代風のイケメンを本堂に描くこととなったのか? それは日本の高齢化に伴い、若者のお寺離れが進んでいることに対する危惧です。今後も末永く仏教の教えを存続させるためにも、国上寺は思い切った大改革に取り組んだのでした。
すべてはご住職の空想から生まれた!
本堂にあったご住職による説明書きにはこうありました。
私は小さい頃より、とある空想をしながら過ごしてきました。もし、国上寺に縁のある5人の偉人が同じ時代に生まれていたら、もし、一堂に会したら、何を語り合い、どんな日常を過ごしただろうか。
5人全員で一緒に井戸水を浴びたのではないだろうか。良寛と酒呑童子が大親友になっていたのではなかろうか。相撲をとったら誰が勝つだろうか。そんな空想を重ねながら国上寺の住職を勤めあげてきたのです。
(中略)
そしてこの度、世界的アーティストである木村了子先生とコラボレーションし、圧倒的な画力とストーリー展開力をお借りして『イケメン偉人空想絵巻」を制作しました。私が小さな頃から胸に抱いていた5人の物語が、ついに、息をのむ甘美な絵巻として実現したのです。
なるほどご住職の空想から全ては始まったんですね。
登場人物の5人とは?
ご住職の言う5人とは「謙信・義経・弁慶・良寛・酒呑童子」です。酒呑童子(しゅてんどうじ)は空想上の鬼ですが、フィクション・ノンフィクション含めて国上寺ゆかりの人物を絵巻物に、しかも世界的なイケメン画の大家である木村了子さんに依頼するという発想は実にユニークですよね。この画像は北側の阿弥陀如来。国上寺の御本尊の絵です。
【西側】五鈷杵掛けの松 名手笛奏之絵巻
では東西南北の絵巻を順番にご説明していきましょう。これは西側の絵です。
現在は枯れてしまっている伝説の「五鈷杵掛けの松」に集う五人。日本画に松はつきものですからこれはぴったりのモチーフですよね。
半ケツ&ニーソの義経
笛の名手として知られる源義経(みなもとのよしつね)。思い描いているのは愛妾である静御前でしょうか……
て、半ケツ&ニーソの義経なんて生まれて初めて見た! 着物は極端に短く、義経は美しい広背筋を見せておりますが、袖はしっかり長く風に揺れています。木村先生、実に分かっていらっしゃいます。
仲良く寄り添う良寛さんと酒呑童子
酒呑童子は良寛さんの膝枕でのんびりくつろぎ中。筋骨隆々の大男である鬼の酒呑童子もこの絵の中ではGACKTのような色白の美青年になってますね。赤い髪にそっと手を添える良寛さんの優しさも感じます。
上杉謙信の肩を抱いて慰める弁慶
上杉謙信は病に倒れた恋人を想って笛を奏でています。本来謙信公の肩を弁慶が抱くなど、昔の主従関係では考えられないシチュエーションですが、空想の中ではこんな親密さもありですね。てかなんで弁慶は半裸状態なの? マッチョがすぐ脱ぎたがるのと同じ心理でしょうか。
【北側】露天風呂湯浴之絵巻
そして北側。これが最も物議を醸している絵です。なぜなら全員全裸だからです。新潟には名湯が多いため、現実的にも5人の偉人たちが温泉に浸かったのではないかというご住職の空想から生まれました。この建物裏の北の方には秘密の温泉があると想定しているのだそうですよ。
キラキラと煌く金箔の日本画
全体的に金箔が使われており、最も派手な絵巻となっています。こういうキンキラのド派手な絵、個人的に私は大好きですね。椿や竹など日本独自の植物が描かれていてとてもおめでたい雰囲気です。
良寛さんの背中を流す弁慶
良寛さんの背中を流す弁慶。大事な部分はちゃんと金色の雲(湯気?)で隠されています。肉体派の弁慶ですが、お風呂のときにもネックレス(数珠)は肌身離さず身につけているおしゃれさんですね。
バスタイムを楽しむ5人
上杉謙信はヘアターバンのように布を巻き付けています。ヘアケアにも気を使っているイケメンのようですね。お酒のひょうたんを持つ酒呑童子に、艶めかしいポーズを決める義経も楽しそうにバスタイムを楽しんでいます。
【東側】龍乗遊戯之絵巻
東側。中国の五行思想では龍(青龍)は東を意味します。中国では東に龍の絵を飾ると運気が上がると信じられていますが、国上寺も同じくますますの繁栄を願って東側に龍を配置しました。荒れ狂う波と身体をうねらせる龍がダイナミック!
酒呑童子をそっと支える弁慶
弁慶と酒呑童子は大股開きではしゃいでいますね。よく見ると弁慶は酒呑童子の腰に手を回して、彼が龍の頭から落ちないようにサポートしています。さりげない心遣いが紳士的です。
真っ逆さまに闘う義経と謙信
上杉謙信と源義経はお互い剣を交えながら真っ逆さまに海へダイブ。やんちゃな義経に手こずっているような謙信の表情がリアルです。なかなか日本画には見られない躍動的な構図です。
ものすごく美化されている良寛さん
私が訪れた時はまだ製作途中ということでしたが、かなりおなかいっぱいのBLを堪能いたしました。絵巻では美老人となっていた良寛さんですが、境内の銅像をみると人の良さそうなおじいちゃんですからね。まさかこんな風に美化されるとはさすがの良寛さんも想像できなかったでしょうね。
現代事情に合わせて、攻めの姿勢で動く国上寺
官能的すぎる絵巻は、ネットでもリアルでも賛否両論の大論争を生みましたが、私個人の意見としては全然アリですね。今後はお寺もどんどん変わっていく必要がありますもの。でなければ仏教はいずれ廃れてしまうでしょう。「SNS炎上供養」もなさっている国上寺、かなり攻めてるお寺です。(2019年05月06日訪問)【麻理】
追記
ちなみにこのお寺を訪れた日のツイートは5000RTを超えました。
このお寺は煩悩を刺激しすぎる!
越後最古の古刹、新潟県燕市の国上寺にて。ボーイズラブ的イケメン絵巻。 pic.twitter.com/TZjPVrnt2H
— マダムスチーム/蒸気夫人 (@IgarashiMari) May 6, 2019
参考文献
地図&情報
国上寺(こくじょうじ)
住所 :新潟県燕市国上1407
電話 :0256-97-3758
休業日:年中無休
駐車場:無料
関連URL:国上寺公式サイト|国上寺は良寛ゆかりの五合庵、上杉謙信の祈願寺です。|新潟の水子供養・永代供養