妖怪・油すましを知っていますか? 水木しげる画の妖怪を思い浮かべた方も多いでしょうね。熊本県栖本町に油すましの里という場所があります。油すましの墓と言われているのですが……。
油すましの故郷・熊本県栖本町(すもとちょう)
山深い風光明媚な熊本県栖本町(すもとちょう)。ここは妖怪油すましの故郷と言われています。説明書きにはこうあります。
河内村へ帰る老婆が小さな孫の手を引いて、草積峠(くさづみとうげ)にさしかかった時、「昔しゃーなーこがんとこれー、油すましどんの出よらいたちゅうわい。」(昔はこのような所に、油すましどんが出現していたそうだよ)と言うと、「いまもでるぞうー」と言いながら現れた。
油すましの話の初出は『天草民俗誌』(1932)
この話は天草中学校の教師をしていた民俗学者の浜田隆一が、昭和7年(1932)発行の『天草島民俗誌』で発表し、柳田国男が妖怪として紹介したことで広く知られるようになりました。
写真右は、水木しげるロードにある油すましのブロンズ像。説明書きのカワイイキャラクタ・油すましのどんたとは全然イメージが違いますね。水木版は完全におじいちゃんだもん。
ガサッ!という音にビックリ
案内板に従って山道をのぼっていきます。野鳥の鳴き声が山に響いていてちょっとしたハイキング気分。途中ガサッと音がしたので足元を見ると、大きな蛇が落ち葉の間をぬって山の中へと消えていきました。ああ、びっくりした! 油すましかと思った。
噂をすると現れる、妖怪・油すまし
妖怪油すましは、噂をすると現れるという特徴があるらしいのでしきりに同行した旦那様と油すましの話をしたのですが、出現したのは結局蛇だけでした。そうこうしていると「ようこそ油すましの里」の看板が見えてきました。どうやらこの下にあるようです。
2004年の民俗調査で見つかった、油すましどんのお墓
ここは昭和57年(2004)に栖本町老人会による民俗調査で見つかった油すましどんのお墓と言われる供養塔です。この供養塔は山道拡張工事によって別の墓地に移転されていましたが、現在はこの場所に戻されました。
おばけは死なない〜♪でもお墓はある
じゃじゃーん! これが油すましの墓です! 『ゲゲゲの鬼太郎』主題歌では「おばけは死なない〜♪」と歌われていますが、「お墓がある妖怪」というのはかなり珍しいのではないでしょうか。
首のないお地蔵さんが手を合わせた形
でもよく見ると不気味……。首がないお地蔵さんの像が手を合わせた形をしていて全体的に苔むしています。頭がなくなったのは拡張工事の時だと言われていますが、一緒に発掘はされなかったのかしら。小瓶に入った油は地元の方がお供えしたみたいですね。
両隣の石像も同じく顔、頭がない
その両隣には同じように手を合わせたお地蔵様のような石像があるのですがどちらも顔が削られたり、頭がなかったり。辺りは人っ子一人おらず鳥の声だけが響いています。見学・拝観は自由のようですがこれはとても夜中に単独探訪は無理だなあ。足元悪いし怖いし。
伝承が少なく謎の多い妖怪
天草地方の方言では「油を搾る」ことと「油をすめる」というそうです。どんは親しみをこめた呼称。油すましは他の地方ではほとんど伝承がなく、具体的にはいったいどんな妖怪なのかは謎となっています。
残念ながら町文化財には指定されず
栖本町ではまちおこしの起爆剤として油すましの墓を全面プッシュしたかったようですが、町文化財保護審議会は「ごく普通の地蔵と変わらない」として町文化財には指定されませんでした。残念。もうちょっと妖怪っぽい特徴があれば良かったのですが……。これはおそらくごく普通の供養塔なのかもしれません。
栖本町の町おこしとして油すましの知恵を借りたい!
油すましは『ゲゲゲの鬼太郎』では準レギュラーのポジションで、映画やアニメでは天才的な切れ者として活躍しています。美しい自然に囲まれた栖本町の町おこしとして、妖怪・油すましの知恵を拝借したいところです。(2017年05月05日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
油すましどんの墓(あぶらすましどんのはか)
住所 :天草市栖本町河内3883-1
電話 :0969-66-3111(天草市栖本支所産業建設係)
休業日:年中無休
時間 :見学自由(※夜はお勧めしない)
入場料:無料
駐車場:無料(5台)
関連URL:油すまし – Wikipedia