長崎県の生月(いきつき)島は人口7600人の美しい島。戦国時代にはキリシタン信仰、江戸時代には捕鯨が盛んでした。博物館・島の館はすべて本物の剥製でできたドームが見ものです。
博物館には4つのエリア
この博物館は4つのエリアに分かれています。勇魚とりの物語、かくれキリシタン、島の暮らし、シーファンタジックアリーナです。珍の嗅覚が発達している方は、4つ目がメインであることを容易にかぎ分けられるはず。でもまあ一つずつ順番に見てみましょう。
第1エリア・勇魚とりの物語
最初はクジラ漁について。大きなクジラの骨格標本が天井に浮かんでいます。これはミンククジラとツチクジラ。大きいですが、クジラとしては10mほどで小型だそうです。下には精巧に作られた鯨とりのジオラマがありますよ。
生月の捕鯨の歴史
生月では1725年から捕鯨が始まり、文政年間(1818年頃)には西海だけでなく日本一の規模を誇る捕鯨の地になりました。 1725年(享保10年)から1873年(明治6年)までの142年間に捕った鯨は21,790頭。最盛期には3000人以上の漁師さんが働いていまし た。
どうしてもこっちの方に……
迫力あるジオラマやクジラの骨格標本に目を奪われますが、どうしても珍奇なものにフラフラと吸い寄せられてしまいます。ミンククジラの心臓、胎児、眼球、性器の標本……。この手のものが苦手な方すみません。こんなにたくさんクジラの標本があるのはここぐらいではないかしら。
クジラのような大きなお相撲取り
生月島出身の力士、生月鯨太左衛門(いきつきげいたざえもん 1827~1850)の実物大人形がありました。なんと身長七尺五寸(227センチ)。当時の人の平均身長を想像すると、ものすごい巨漢ですね。私の手と比べてみてください。まさにクジラ級。でも24歳の若さで亡くなってしまったんですって。
第2エリア・隠れキリシタン
2つめのエリアは隠れキリシタンについて。教会風の展示室に戦国時代からのキリシタン信仰の品々が並んでいます。明治時代にはキリシタンの禁制は解除されたのですが、島民は潜伏時代の信仰形態をそのまま受け継いでいます。
迫力ある信仰の品々
掛け軸になった聖母子像。空には天女のような天使が舞っています。受胎告知の絵の大天使ガブリエルと聖母マリアは着物を着ています。日本史の教科書でおなじみの踏み絵や魔鏡(反射の光に十字架や聖像が浮かび上がる鏡)もあって興味津々。キリスト教と島の信仰の融合を見られる貴重な資料です。
第4エリア・シーファンタジックアリーナ
3つめの島の暮らしエリアは割愛させていただいて、いよいよお待ちかねのシーファンタジックアリーナへ。生月の近海の様子をそっくり再現した一室です。ここがスゴイのは、この魚たちは模型ではなくて、全部本物の剥製だってこと!
360度の海中散歩
その数250種400匹。ジンベイザメやマンボウなんて大物から、フグ、ハリセンボンなどのカワイイものまで天井、壁、床を埋め尽くしています。さすが黒潮と日本海の海流がぶつかる生物相。真ん中に観賞用のスロープがあって360度、ぐるりと海中を見渡し海中散歩できる心憎い演出。このアイデアは素晴らしいですね。
細部まで手を抜かない凝りよう
生月に漂着した、フィリピン、中国、韓国、ロシアなどからのゴミまで展示してある凝りよう。ここまでくると単なる展示ではなくアートの域に達しています。この博物館の学芸員さんの職人芸、こだわりを感じました。(2007年11月08日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
島の館(しまのやかた)
住所 :長崎県平戸市生月町南免4289-1
電話 :090-53-3000
時間 :09:00~17:00(受付16:30まで)
休館日:年始(1日、2日)※臨時休館あり
入館料:大人520円
駐車場:無料
関連URL:平戸市生月町博物館 島の館公式サイト