鏝絵(こてえ)とは土蔵や家の壁に書かれた漆喰レリーフのこと。起源は飛鳥時代と言われ江戸後期から全国に広まりました。大分県安心院(あじむ)町は70以上の鏝絵が集中しています。
ガイドのKさんありがとう
ボランティアガイドのKさんに安心院町の鏝絵を案内していただきました。あっちの壁にもこっちの軒先にも鏝絵を見つけることができます。解説を聞きながら鏝絵を見られるので分かりやすいですね。
九州の鏝絵はユーモラス
明治23年に作られた、一富士、二鷹、三なすび。大分県には約700点の鏝絵が現存しています。九州の鏝絵は庶民的でユーモラス、おおらかでダイナミックという特徴があります。壁一面を使った巨大なものもあるんだとか。思わず笑顔になってしまう面白い絵柄が多いですね。
住む人の願いが籠められた鏝絵
鏝絵には七福神や龍虎、鶴亀など縁起の良い絵柄が好まれました。火事を避けるための龍、子孫繁栄のためのブドウ、魔物から家を守る鷹など、住む人々の願いがこめられています。その家の商売を表している図柄もあるんですよ。これはお茶の渡辺円さんの「ぶんぶく茶釜」
ヘアーサロンやまかみさんの「子供の散髪」
安心院印刷さんの「ネズミとペン」
ファッションコア河野さんの「十二単」
高度なデッサン力と技術力
鏝絵は粘土状にした漆喰を材料にしています。漆喰は乾きやすく、完全に乾燥してしまうとボロボロと剥がれ落ちてしまいます。鏝絵は壁が生乾きのうちに一気に仕上げなければなりません。左官職人は高度なデッサン力や技術力が要求されたんですね。
べらぼーめ、職人なめんな!
私が鏝絵のことを知ったのは『ギャラリーフェイク』13巻の「左官魂」です。世界各国を旅して技術を学んだイタリア人左官職人・フェルナンデスが、ボロアパートに住むおじいさんの鏝絵の超絶技術に度肝を抜かれるという内容。「べらぼーめ、日本の職人なめんじゃねえぜ!」と日本を誇れる痛快ストーリーでした。
歴史に埋もれた無数の天才職人たち
何百年もの間、全国各地の職人さんが技を競い、創意工夫を重ねて鏝絵を伝えてきたのです。歴史に名が残らなくとも、技に誇りを持って鏝絵を作り続けた匠の人々。胸に熱いものがこみ上げてきませんか?
失われつつある左官技術と鏝絵
たくさんの鏝絵に出会えてワタクシ大感激。でも残念なことに、鏝絵の技術を持った左官職人さんは年々減り続けています。そして鏝絵が外壁にあるため痛みが激しいこと、個人所有のため保存が難しいことなどから、全国各地で鏝絵が失われつつあるのです。
鏝絵の保存に熱心な安心院町・作家江藤智子氏
幸い安心院では鏝絵保存に熱心なグループが発足して、調査や修復に取り組んでいます。また20代の新人鏝絵作家・江藤智子氏の活躍もあり、活発な鏝絵保存運動が行われているんですよ。
ちょ、そのデザインは……
小学生が作ったと思われる鏝絵の展示がありました。お花やピカチュウなど微笑ましいデザインですね。でも一人だけ「DEATH(死)」という鏝絵作ってる子が。君なあ、デスはないでショ……。(2006年12月12日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
安心院 鏝絵ツアーガイド(あじむ こてえつあーがいど)
住所 :大分県宇佐市安心院町下毛2074-1
電話 :0978-34-4839(安心院町観光協会)
ガイド:事前に電話で問合わせ・予約
料金 :無料
関連URL:宇佐市安心院のイベント情報