沖縄県八重山諸島の由布島は、西表島に隣接した周囲2キロの小さな島です。空を背景に牛車がゆっくり海を渡っていく──。沖縄の旅番組などでこの風景をご覧になったことがあるのでは。
人気の観光地だけど珍スポマニアもぜひ
由布島(ゆぶじま)は西表島からの日帰りツアーで最も人気のある離島です。年間30万人以上が訪れる人気の観光島なので、珍スポマニアは素通りしてしまうかもしれません。でも島内にはユニークな珍オブジェが点在しているので、ヘタウマオブジェ好きの方々はきっと楽しめるはずですよ。入り口にある水牛オブジェからして期待大です。
歩いて渡ろうと思えば渡れる……けど
由布島は島全体が亜熱帯植物園なので、入園料を払って水牛車で渡ります。由布島と西表島の距離はわずか400メートル。しかも大人の膝ぐらいまでしか水深がないので、歩こうと思えば歩いて渡れる距離(水牛車で往復する場合は入園料込みで1300円、歩いて渡る場合は500円の入園料)。でもある理由から徒歩での上陸はお勧めしません。理由は後で分かります。
1時間の駆け足観光
私が由布島入り口に到着したのは閉館1時間前の16時。1時間しか見られないのはちょっともったいなかったけど、駆け足なら島を一周できますよと言われて入園することにしました。
水牛の優作くんの牛車でのんびりと
私が乗った牛車をひっぱってくれたのは、水牛の「優作」くん。平成12年生まれの13歳。水牛は2歳からトレーニングを始めて3歳からお客さんを乗せて運ぶようになるので、優作くんは立派なベテランです。乗務員のおじさんの説明を聞きながら、のんびり海を眺めます。
ん? 水の底に沈んでいるのは?
ふと下を見ると水の中にポツポツと黒いものが見えます。これ、水牛のフンなんですよ。おじさんは「最終便に遅れないように待合所に戻ってくださいねー。でないと水牛のフンを踏みながら自力で海を渡らないといけませんよー」とニコニコ。うっ、こりゃ時間厳守だね。
台風によって荒れ果てた無人島状態に
10分ほどで由布島到着。『楽園をつくった男―沖縄・由布島に生きて』という書籍によると、由布島は1970年以前は栄えていたのですが、台風で壊滅状態になって以降無人島状態の荒れ果てた島になっていたと言います。
西表正治さんの努力で楽園に生まれ変わる
それを西表正治さんという方が由布島をハワイのような楽園にすることを夢見て、四半世紀以上かけてほぼ一人で植物園を作り上げたのです。荒れ果てた土地を黙々と耕し、木々を植え、病苦を乗り越え、夢を実現。すごい! セルフビルドのパノラマ島だ!(←違う)
西表さんの夢が実現したスポット
私はこういうたった一人の力によって作り上げたスポットを大変リスペクトしているのですが、ここはまさに西表正治さんというオジイが生涯をかけて作った究極のオヤジ系スポット。その手作り感はこんな味のある珍オブジェにもあふれています。
なんともあたたかみのある珍オブジェ
水牛や昆虫、鳥類をモチーフにした、なんともあたたかみのある素敵オブジェが島のあちこちに見つかります。珍オブジェに目がない皆様も、満足間違いなしのフォルム。水牛にまたがったり、牛車に乗っての記念撮影もできます。
水牛の始祖は大五郎と花子
由布島の象徴と言えば水牛。この水牛は台湾から連れて来られた「大五郎」と「花子」というつがいの水牛が始祖です。水牛の家系図を見ると、今では40頭以上も繁殖しています。
大五郎の頭蓋骨
食堂にある水牛の始祖、大五郎くんの頭蓋骨です。すごく大きくて立派な角ですね。写真を見ると「こんなに大きい角ではバランスが取りにくいのでは?」と心配になるほどの巨大さ。見知らぬ土地に連れて来られてよく頑張ったね。
水牛に感謝する水牛之碑
島の一角には、大五郎と花子に感謝する「水牛之碑」が立っています。こういう動物に感謝して記念碑を立てたりお墓を祀ったりするのって、日本人の素晴らしいところですね。
日本全国にクジラに対する感謝や追悼の意を表した鯨塚がありますが、このような風習や宗教観は世界に誇れる日本の美点です。
まさに南国のパラダイス
花咲き乱れ、蝶が舞い飛び、鳥の鳴き声が辺りに満ちています。オウムやニワトリが飼われている飼育舎や、ヤギやイノシシがいる動物エリアもありますよ。西表の強い日差しで緑は青々と輝き、まさに南国のパラダイスそのもの。
何もないを楽しめる人にお勧め
やっぱり1時間じゃあ、ざっと見るぐらいしかできませんでしたね。ここは半日、いや1日たっぷり時間をとって、木陰のベンチで昼寝をしたり、花々や動物の写真を撮ったり、珍オブジェを探したりして遊ぶべき島でした。
何もないを楽しめる人にお勧め
観光サイトを見ると、「観光化されすぎている」「見るべきものが特にない」という評判も見かけますが、個人的にはこのブログを読んでいるような「自分で面白さを見つけられる人」にはぜひお勧めしたい場所です。
おじいの三線を聞きながら西表島へ
最終便の時間17時ギリギリに牛車の待合所に駆け込みました。最終便を引いてくれる水牛は「海(かい)」くん。今回は乗務員のおじさんの三線つき。ここち良い歌声を聞きながら、また西表島にのんびり帰っていきます。川は流れて どこどこ行くの〜、人も流れて どこどこ行くの〜♪
次回は歩いて渡ろうかな
ふと横を見ると、車が牛車を追い抜いて行きました。由布島で働いているお姉さん二人組も浅瀬を歩いていました。この次来る時には、歩いて渡るのも悪くないかもしれないですね。水牛ちゃんのフンを踏みしめるのを覚悟の上で。(2012年05月14日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
由布島(ゆぶじま)
住所 :沖縄県八重山郡竹富町古見687番地
電話 :0980-85-5470
時間 :09:00~17:00
料金 :大人1760円
休業日:年中無休(台風時をのぞく)
関連URL:由布島 | 亜熱帯植物楽園