沖縄県久米島の上江洲家(うえずけ)は琉球王朝時代の殿様の家です。上江洲家はお茶の栽培や久米島紬の普及に貢献しました。石垣に囲まれた赤瓦の建物は、古き良き沖縄そのもの。
代々市長を務める上江洲家
上江洲家は、代々「具志川間切地頭代(ぐしかわまぎりじとうだい)」という要職についていた家系です。具志川間切は久米島にあった具志川村の昔の名前のことで、地頭代というのは今で言う市長のことです。この建物は現在国の重要文化財に指定されています。
31代地頭代・上江洲智英が建造
名門・上江洲家の家屋は、1754年に31代地頭代である上江洲智英が建造したという記録が残っています。現在の建物は建築当初のものですが、1992年から1994年にかけて解体修理が行われました。
石垣と赤瓦の沖縄の家
屋敷の周りは立派な石垣で囲まれています。このように石垣で囲まれた家は石垣殿内(いしがきどぅんち)と呼ばれています。赤い瓦屋根と石垣はいかにも昔ながらの沖縄の家。私が訪れた時はあまりお天気が良くなくて残念でしたが、青天には赤瓦とのコントラストが美しい建物です。
植えられたフクギの役割
宅地面積は660坪あり、庭のあちこちにフクギ(福木)の木が植えられています。フクギは並べて植えると壁のようになるので、沖縄では防風林として栽培されることが多いようです。また火事の時にも燃えにくく、延焼を防ぐ役目もあります。
すがすがしい主屋の大部屋
主屋は居室部となるウフヤと台所まわりのトングヮからなっています。ふすまなどを開け放つと、風が通り抜ける大部屋になります。板壁と畳は掃除が行き届いていて美しく保たれています。
風水思想の影響を受ける
屋敷全体は中国の風水思想に従って建築されています。例えば石垣は南側が膨らみ、北東の隅が欠けた形をしています。これはグスク(城塀)的な作りでもありますが、風水で言う魔除けの意味も込められているのです。
エキゾチズム溢れる建築
沖縄全体は本州よりも中国の文化の影響を受けているのですが、久米島は昔ながらの沖縄が残っているので本島よりも強いエキゾチズムを感じました。縁側に座ってぼーっとしていると時がたつのを忘れてしまいそう。
家畜小屋と穀物倉庫
上江洲家にはメーヌヤと言われる蔵があります。蔵は一見して平屋建てに見えますが、中は上階と下階がある2階建て。牛、馬、ヤギなどの家畜を飼育したり、瓶に穀物を入れて保存したりしていました。
沖縄のトイレ「フール」
そして私がこの手の歴史的建造物を訪れるときに必ずチェックする便所(※フール)。豚舎と一緒になっているのが沖縄のトイレの特徴です。上江洲家のフールはとても頑丈な作りで、屋根瓦も美しい立派な建物です。
はるか昔から循環型社会
それは沖縄のトイレがご不浄と呼ばれるような忌み嫌われる場所ではなく、「人間と家畜が一緒に生きる場所」だからなんでしょうね。私は沖縄のトイレが大好きです。エコ、リサイクルなんて言葉が普及するはるか昔から、循環型社会を実践している素晴らしい建築だと思うからです。(2013年11月03日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
上江洲家(うえずけ)
住所 :沖縄県島尻郡久米島町西銘816
電話 :098-985-2418
時間 :09:00~18:00
休業日:不定休
入場料:大人300円
駐車場:無料