高さ12.5m、周囲約60m。総重量数十トン。沖縄県下地島の帯岩は大津波で打ち上げられた巨岩です。津波による死者、行方不明者の合計はなんと1万2000人にものぼりました。
津波の凄まじさにゾッとする
帯岩(おびいわ)は海岸から数十メートル離れた小高い丘の上にあります。鳥居をくぐり抜け帯岩の前に立つと、東日本大震災の津波のニュース映像が蘇ってきます。見あげるような巨大な岩です。こんなものを運びあげてしまう津波の凄まじさにゾッとします。
津波石とは何か?
津波によって打ち上げられた岩は津波石(つなみいし)と言い、沖縄県の島々でよく見られます(※)。写真は同じ下地島の佐和田の浜です。無数に海岸に散らばっている岩も津波によって運ばれたものです。しかし帯岩は群を抜いて巨大。これほど大きな津波石は珍しいのです。
島を壊滅させた明和の大津波
岩の前に置かれた説明書きには、帯岩は1771年4月24日(明和8年3月10日)に起きた、明和の大津波で打ち上げられたと書かれています。下地島の通り池の伝説では、人魚が起こした津波が木泊村を襲い、島全体が壊滅状態になってしまったと伝えられています。
死者・行方不明者1万2000人
明和の大津波は、マグニチュード7.4の巨大地震によって発生した津波で、八重山群島、宮古群島に3波が来襲しました。この津波により亡くなった方、行方不明者の合計は1万2000人にものぼります。記録によると、最も大きかった第2波の遡上高は85.4メートルにも達したそうです。これは東日本大震災の津波の最高値約40メートル(岩手県大船渡市)(※)の倍。
85メートルだ……と?
ニュースによく登場する、桜田門の警視庁本部庁舎が74.3メートル(最高部の高さは83.5メートル)ですよ。警視庁のビルを見たことがない方はマンションの28階ぐらいと想像してください。いくらなんでも明和の津波が東日本大震災の津波の倍の遡上高とは信じがたく、ネットで調べてみました。するといくつか情報を探すことができました。
実は10メートルほどだったらしい
千葉工業大学の後藤和久上席研究員によると、信頼出来る古文書のデータから数値計算を行ったところ、下地島の津波の遡上高は12.3メートル。八重山でも34.8メートルが最大で、これまで定説だった85メートルには達しないことが分かったそうです。また、明和の大津波の以前にも大地震が発生しており、明和の大地震が最大であったとは限らないとのことです。
帯岩はもっと知られてほしい
さすがに80メートルはなかったようです。とは言え、明和の大津波は多数の死者を出した沖縄史上最悪の大惨事であったことは間違いがありません。今後津波の被害を最小限に抑えるためにも、この帯岩は石垣島の津波大石とともにもっと広く知られてほしいと思いました。
本岩根岩って何?
ところで、帯岩の真ん前。案内板よりも大きく置かれていたこれはいったい何なのでしょうか? 本岩根岩とあるけど帯岩の別名かしら。「本岩根岩」で検索しても、個人のブログなど6件しか出てきません。
なんか圧倒されるオーラが
聖徳太子、乃木大将、菅原道真先生様──。書かれている人物や表現を見ると、ものすごいオーラ(というかトンデモ的な香りというか)を感じるんですが……。これ触れちゃいけないもの? 教えて下地島の人。(2011年04月21日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
帯岩(おびいわ)
住所 :沖縄県宮古島市伊良部佐和田1742
電話 :09807-8-6250(宮古島市伊良部町役場商工観光課)
時間 :見学自由
入場料:無料
駐車場:無料