ダムと聞いただけでワクワクしてしまうダムマニアの方はいらっしゃいませんか? 沖縄県宮古島には世界でも珍しいダムがあるのですが、それは目に見えない奇妙なダムなんですよ。
目に見えないとは?
目に見えないダムとはこれいかに? 実はこのダムは地下にあるのです。宮古島は地下水が豊富で、昔から生活用水を地下から汲み上げて使用していました。
川がないと海は美しいけど……
宮古島はサンゴ礁が隆起してできた島で、島全体が珊瑚の石灰岩に覆われています。石灰層は水が浸透する速度が早いため宮古島には川がありません。
川がないということは山の土が海に運ばれないということで、宮古島は世界でも有数の美しい海を誇っています。しかし川の水を使うことができないために地下水を使用せざるを得ず、昔から水汲みは島の人々にとって非常に辛い労働でした。
地下水を大規模に利用するプロジェクト
(写真は地下ダム資料館 パンフレットより)
さきほど島の地質が石灰岩に覆われていると書きましたが、石灰岩の下には水を通しにくい泥岩と砂岩からなる地層があります。だから地下水は下に漏れることなく遮られ、石灰岩の小さな穴や隙間に溜まっています。これを大規模に利用しようと、昭和の時代になって、640億円で建設されたのが宮古島の地下ダム。これは世界初の試みであり、奇跡的な大偉業なんですよ。
資料館の中は撮影できませんでした
こちらは地下ダム資料館残念なことに資料館の館内は撮影禁止。特に著作権にうるさそうな美術品もないのになんでかなあ。館内ではビデオやジオラマ模型などでダムのメカニズムが学べるようになっています。宮古島の地層断面模型なども展示してありました。
地下ダム水位観測施設なら見えるよ
せっかくのダムが見えないとは……とお嘆きのあなた。大丈夫! 資料館の近くには地下ダムの止水壁(水が海に流れだしてしまわないための壁)とせき止められた地下水をが見られる建築物があるのです。ここは地下ダム水位観測施設です。
地上で観察できるように建設
生活用水や農業用水に適切に水を使うには、降雨量や利用推量、地下水位、超流量などを把握しなければなりませんが、このようなダムは世界でも例がないため、超流量を推測するのが難しいんですね。だから地上で観測できるようにしてあるのです。
地盤沈下はノープロブレム
地盤沈下しちゃうんじゃないかと心配しなくても大丈夫。写真では地下水が池みたいに溜まっていますが、地下ダムと言っても、宮古島の地下が地底湖のようになっているわけではありません。石灰岩の層があるのみ。石灰岩は硬く強度がありますが、まるでスポンジのように穴ぼこだらけで、穴の中に水を貯めることができるのです。
地下ダムのメリット
つまり地下に中空があって水が溜まっているのではないから、構造上地盤沈下の恐れはないのですね。他に地下ダムのメリットとしては、土地の水没がない、ダムの決壊による災害がない、水温が一年を通して安定している、長期間に渡って安定した取水が可能である──などなど。地下ダムは長所が多いですね!
宮古島の農業に貢献
地下ダムによって蓄えられる水源は2,400万トン。石灰石に貯められた水はミネラル豊富で、農作物の栄養価を引き上げます。またこれまで天候任せで雨が降るのを待っていた農家の方たちも、計画的な栽培をすることができます。地下ダムは宮古島の農業に大きく貢献しています。
バイオハザードごっこができるよ
記事の写真は屋外の地下ダム止水壁のものばかりになってしまいましたが、構造的にはかなり私のツボにハマりました。というのもここはバイオハザードとかのアクションRPGに出てくるような風景なんです。真ん中の通路をタッタッタッと端って、キコキコとクランクを回すと水が引いて、秘密の入口が現れる──なんてね(妄想)。中二病全開の人にお勧めスポットです。(2011年04月20日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
地下ダム資料館(ちかだむしりょうかん)
住所 :沖縄県宮古島市城辺字福里1645-8
電話 :0980-77-7547
入館料:大人300円
休館日:月曜
時間 :09:30〜18:15(4月〜9月)08:30〜1715(10月〜3月)
駐車場:無料