宮古島に到着した最初の日に漲水御嶽で旅の無事を祈りました。八重山にはたくさんの御嶽がありますが、ここは宮古島で最も格式の高い霊場。現在も地元の人々に厚く信仰されています。
仲宗根豊見親が建設
漲水御嶽(はりみずうたき)は16世紀に仲宗根豊見親玄雅(なかそねとぅゆみやげんが)という宮古島の首長が築いたと言われています。仲宗根豊見親は前に記事で紹介しましたね。美しい屋根瓦が特徴的な歴史を感じさせる御嶽です。
御嶽とは何か?
ところで御嶽(うたき)とは何でしょうか? 御嶽は神が降臨する聖地のことです。沖縄の集落には必ず御嶽があると言われ、沖縄全体で400以上あります(諸説あり)。本来は女性しか立ち入ることができず、男性が入ると神罰が下ったとか。沖縄の信仰では神の言葉を聞けるのは女性だけだったからでしょうね。
ここは男子禁制ではないけれど
今でも男子禁制の御嶽は多いのですが、この漲水御嶽は男性もお祈りすることができます。でも島の人々の信仰の場所ですから、観光客である我々はなるべくお邪魔にならないようにそっと拝ませていただきましょう。私が訪れた時にもちょうど地元の方がお祈りされていました。
古意角と姑依玉の国生み神話
漲水御嶽の祭神は、宮古島を作ったと言われる古意角(こいつぬ:または恋角)と姑依玉(こいたま:または恋玉)です。天帝に命じられて降臨し、あらゆる生物を生み出してまた天に登りました。漲水御嶽は古意角と姑依玉が下った跡地であると伝えられているのです。
漲水御嶽のもう一つの伝説
漲水御嶽にはもう一つ興味深い伝説があります。それはこんなお話。
ある美しい娘が突然妊娠してしまいます。娘の両親は相手は誰なのか問い詰めると、娘は名も知らぬ美青年が忍んでくるのだと言います。両親は針に長い糸をつけて、男が訪れた時に髪の毛に刺すようにいいつけました。
蛇の男の正体は……
男が去っていった日の朝、両親が糸をたどっていくと漲水御嶽の洞窟につきました。そこには首に針が刺さった大蛇がいました。その夜、美しい青年は娘の夢に現れて言いました。「私は島を作った古意角である。お前は守護神である3人の娘を生む。娘たちが3歳になったら漲水御嶽に参れ」
娘たちが3歳になった時漲水御嶽に詣でると、3人の娘は現れた大蛇の首、腰、尾に抱きつきました。娘たちは漲水御嶽の中に入って姿を消し、以後島の守り神となったそうです。
典型的な蛇婿入り(異類婚姻譚)
これは民俗学で言う典型的な蛇婿入り(異類婚姻譚)です。犬、猿などの型もありますが、蛇が男に化身し人間の娘と契る話は全国各地に伝わっています。中でも針と糸で行方を突き止める話は、針糸型と言って『古事記』『日本書紀』にも登場します(蛇の正体は大物主:おおともぬし) 。
古代ロマンシリーズもよろしくね
昔話や民話の研究者・小澤俊夫先生を私淑している私は大変嬉しく思いました。珍スポットではありませんが、伝説・伝承が残る歴史的スポットは今後も追いかけていきますので、ぜひ他の記事もご覧くださいね。(2011年04月18日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
漲水御嶽(はりみずうたき)
住所 :沖縄県宮古島市平良字西里8
時間 :見学自由
拝観料:無料
駐車場:なし
関連URL:漲水御嶽 宮古市島西里