バーネットの『秘密の花園』を読んだことがありますか? 高知の伊尾木洞のトンネルを抜けるとそこはまるで「秘密の庭」。シダと彫刻の空間が広がるとっても神秘的な場所なんですよ。
川の中を入るので服装注意
ここは高知県安芸市。伊尾木洞(いおきどう)は伊尾木駅近くの国道55号線から北にある洞窟です。ちょっと見つけにくい場所にあるのも「秘密」っぽいです。川の中を入っていくことになるので、それなりの靴、服装で訪れてくださいね。
地元作家による彫刻プロジェクト
見つけにくいと書きましたが、目印となるのがこれ。彫刻です。『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行(都築響一著)』には、地元作家らによる「伊尾木・彫刻の村プロジェクト」なる町おこし計画の一環であるらしいことが書かれているのですが、ネットで調べても詳細が分からず。もう解散しちゃったのかしら。
真っ暗な洞窟を進む
さきほどの彫刻がある細道を伊尾木川に沿って先に進むと、川の中にあるトンネルに行き当たります。一見入り口に見えないですが、それが入り口。トンネル洞窟の中はまっ暗な上、ゴロゴロとした岩が多く、川も流れていますから、どうぞ足下お気を付けて。
思わず声が漏れる幻想空間
トンネルを抜けるとそこは別天地。シダが生い茂る鬱蒼とした森。深い峡谷の底。思わず「わあーっ」と声が漏れます。『もののけ姫』『天空の城ラピュタ』など、宮崎アニメに出てくるような風景ですよ。だーれもいない秘密の場所。
裸婦の彫刻
女性の彫刻像が置かれています。表面がコケむしていてあたりの風景に溶け込んでいます。自然の中で裸婦像を見る。こんな美術館賞もアリですね。
侘び・寂びのある空間
人が住まなくなって長い年月が経った場所──そんな感じもします。遺跡や廃墟で感じるような侘び・寂びもあるような。彫刻がもっと風雨にさらされてコケやツタで覆われたら、さらに神秘的になるんじゃないかな。彫刻の作家さんはあまり嬉しくないかもしれないけど。
上からの木漏れ日が美しい
薄暗い谷底に、上から木漏れ日が振ってくるのがなんとも美しい眺めです。伊尾木洞には暖地性のシダ類が7種類(ホウビシダ、コモチシダ、ノコギリシダ、ホウライシダ、ハゴロモシダ、シロヤマゼンマイ、クリハラン)が群生しています。
シダの群生は天然記念物
多くの種類が一ヶ所に群生するのは学術的にも大変貴重なため、伊尾木洞は1926年に国の天然記念物に指定されました。温度、湿度、光量、地形の絶妙な組み合わせによって、伊尾木洞の特別な環境が作られているんですね。そんなところも神秘性が増しているような気がします。
みんなに来てほしい、でも……
神々しく幻想的な世界が広がる秘境。いつまでも風景を眺めていたいような、心が癒される空間でした。あまり知られていない観光スポットなので、ぜひたくさんの方に訪れてほしい。でもやっぱり人がまったくいない秘密の庭であってほしい──と心が揺れる伊尾木洞でした。(2009年05月03日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
伊尾木洞(いおきどう)
住所 :高知県安芸市伊尾木
電話 :0887-35-1011(安芸市商工水産課)
時間 :自由(※夜は危険なのでお勧めできない)
入場料:無料
駐車場:なし
関連URL:伊尾木洞