アスファルトの地面が切り取られて垂直に突き刺さっている! こんな奇妙奇天烈な光景が見られるのが、高知県香南市夜須町の手結港(ていこう)。手結港可動橋という、動く橋なのです。
日本発の本格的な堀り込み港
手結港(ていこう)は1653年に土佐藩が作った堀り込み港です。堀り込み港とは海岸の砂丘地帯を掘り込んで作った人工の港のことで、一般的になったのは土木技術が発達した第二次世界大戦後。江戸初期に作られた手結港は国内最大級で日本発の本格的な堀り込み港と言われています。
歴史ある港に32メートルの可動橋
港の大きさは南北に100メートル、東西に50メートルほど。現代の私達からすると小さな港ですが、重機のなかった当時人の手で作るのはさぞ大変だったでしょうね。今では石積みが情緒あふれるのんびりした港町といった風情。そんな歴史ある手結港に2002年に建設されたのが、手結港可動橋です。長さは32メートルあります。
手結港可動橋のしくみ
(写真は近くに展示されていたパネルの画像)可動橋にもいろいろあるのですが、手結港可動橋の仕組みです。普段は左の絵のように通行できるようになっていて、時間がきたら橋桁が跳ね上がるように直立して行き、その間に船が港を出入りできるのです。跳開橋(ちょうかいきょう)という跳ね橋ですね。同じしくみの橋としては東京の勝鬨橋(かちどきばし)が有名です。

跳ね上がっている間は通行不可
この橋は一日に6回、約7時間だけしか渡れません。橋の上を通行できるのはは早朝から夕方までの間、1時間〜1時間30分間橋は下がっています。夜の間は橋は立ち上がりっぱなしで通ることができません。うっかり通行できない時間帯にここへ来てしまうと迂回することになります。
踏切以外は普通の道路に見える
これは橋が閉じている風景。左にある標識には「通行可」と表示されていますね。ちょっと変だなと思うところは、線路もないのに踏切があるところでしょうか。一見ごく普通の道路に見えます。しばらく時間待ちをしていると、踏切がカンカン鳴り始めました。
【動画】手結港可動橋が動く様子
橋が持ち上がっていく様子を動画でご覧ください。踏切が鳴り橋が持ち上がり始めてから、完全に直立するまでは約6分かかります。この動画は3分ほどを撮影しました。
静かに立ち上がる橋はSF的
最初に「ん? 動いてる?」という私の声が入っているのは、意外に静かだったからです。橋のごつさから、もっとガタンガタンギリギリと機械音がするのかなと思っていたから。ゆっくりと道路が持ち上がっていく様は、いかにもSFチックで迫力があります。小さな港町と重厚な機械式跳ね橋というミスマッチがよりそう思わせるのかも。
裏側から見た橋
持ち上がった橋を下から眺めると壮観。裏側のツゴツした鉄筋がカッコいいですね。橋の上にあった砂やゴミなどがざーっと下に落ちますので、橋は常に美しく掃除されている状態。できてそれほど経っていないのですが、妙に橋がキレイなのもそのためかしら。
安全ですから大丈夫
ところで。ぐんぐんと立ち上がっていく道路を見て、無性に駆け上がりたくなるバカ(私も含め)がいるのではないかとご心配の方もいらっしゃるでしょう。しかしご安心めされよ。ちゃんと右側の操作室には係員がいて安全を確かめてから可動させていますよ。くれぐれも進入禁止の踏切をかいくぐってチャレンジしないように。(2009年05月03日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
手結港可動橋(ていこうかどうばし)
住所 :高知県香南市夜須町手結港
電話 :0887-57-7520(香南市商工水産課)
時間 :見学自由
入場料:無料
駐車場:無料(9台)