福島県会津若松市の会津武家屋敷は、家老・西郷頼母(さいごうたのも)の家を復元したミュージアムパークです。リアルな蝋人形で再現された「自刃の場」は涙無くして見られません。
見どころは西郷頼母の屋敷
会津武家屋敷(あいずぶけやしき)には他にも旧中畑陣屋や数奇屋風茶室、藩米精米所などの歴史的建造物が集まっています。いわば野外型の博物館。一番の見所は38室もあったという西郷頼母の屋敷でしょう。
菊の香りただよう武家屋敷
訪れたのがちょうど菊の季節だったこともあって、屋敷のあちこちに美しい菊の花が飾ってありました。一面に菊の香りが漂ってなんとも風流。会津武家屋敷では四季折々の植物も楽しめます。
精巧にできている蝋人形
ここの人形はマネキンではなく蝋人形。顔の作りがとても精巧に出来ています。西洋のものではなく日本人形の流れをくんでいるような印象です。珍スポットでは西洋人顔のマネキンにむりくりカツラをかぶせているケースもありますが、ここにはそんなトホホ人形がいません。
トイレは必見
私がこのような野外型の再現建築物で必ず見ることにしているのがトイレです。でもトイレはパンフレットや案内図に載っていなかったりして、存在しないとされがちなかわいそうな部屋。なんでかなあ、トイレ面白いよね? 昔の人どうしてたんだろって、私は興味津々。
プライバシーゼロのお殿様
これは御成の間(おなりのま)の厠(かわや:トイレ)。御成の間というのは、お殿様が来た時だけ使われる部屋。だから西郷頼母のトイレじゃなくて、会津藩主の松平容保(まつだいらかたもり)が使ったもの。床下には砂を敷いた箱車が、木製のレールの上にのっています。
使用後に箱車のブツを見て健康状態を調べた後に、砂ごと処分したそうです。お殿様ってプライバシーゼロだね。
お殿様のトイレは畳敷き
内側から見た厠。三畳の畳敷きの小部屋に便器があるタイプ。さすが殿様専用。美しいトイレです。
天井板がないトイレ
厠には天井板がありません。これは敵の間者(暗殺者・スパイ)が忍び込むのを防ぐためなんです。江戸時代中頃から始まった建築です。お殿様は用便中も気が抜けませんね。
お風呂に入るのも一苦労
お風呂は檜造りですがかまどがないので台所で湯を沸かして、手桶で運んでお湯をためました。でもなんでかまどをお風呂場に作らなかったかというと、火災予防のためだったとか。バケツリレー式にお湯を運んだのかな。下働きの人は大変だね。
西郷頼母の一族の自刃の場
ここでは西郷頼母の一族の自刃を人形で再現しています。人形のできが良くてかなりリアル。戊辰戦争では女子供含めて一族がことごとく自害。武家の女のたしなみとは言え、自分の子を刺し殺して自らも自害して果てた、妻の千重子さん。彼女は当時34歳。私より若い……。
戊辰戦争の悲劇
一族が自決した直後に西郷邸に突入した土佐藩の中島信行が、死にきれずにうめいている娘を見つけました。彼女は16歳の娘・細布子(たえこ)。細布子は中島信行を見て「敵か?、味方か?」と聞きました。中島は敵方でしたが「味方です」と答えると、細布子は安堵の表情で刀を差し出して介錯を頼んだのでした。
今で言うならJKの女の子が介錯を頼む感じでしょうか。まだ若いのに……。嘘をついて武士の情けをかける中島信行も男だね。うう……だめだ、こういうの。歳のせいか最近涙もろい。
逆さ屏風の意味
奥には屏風が逆さまに置かれています。これは遺体の襟を逆にあわせたり、湯灌(ゆかん)の時に水にお湯を注いだりと、葬儀の時には普段とさかさまのことをすることに由来しています。このことから武士や家族が覚悟の自決をするときには屏風を逆さに置くという作法が生まれたそうです。死の瞬間にも作法を忘れないってすごく日本的ですね。
鹿鳴館の華・大山捨松
場面変わってこれは「鹿鳴館の華」と呼ばれた、大山捨松(おおやますてまつ)の人形。会津藩の国家老・山川尚江重固(なおえしげかた)の末娘です。会津戦争にで大怪我して、明治時代には官費留学生としてアメリカに渡り、帰国後は参議陸軍卿・大山巌と結婚、そして日米親善のために鹿鳴館で活躍──という波乱の人生を送った人です。
日本初てんこもりのスーパーレディ
大川捨松と言えば、日本最初の女子留学生、日本初の帰国子女、日本最初の女子大生、日本最初の看護師資格保持者、日本最初のマルチリンガル(英語、フランス語、ドイツ語、日本語)、日本初の社交ダンサー──とどんだけ「日本初」なのかっていうスーパーレディです。本物の貴婦人ってこの人のことですね。キリッとした表情が魅力的な人形でしたよ。(2013年11月27日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
会津武家屋敷(あいずぶけやしき)
住所 :福島県会津若松市東山町石山院内1
電話 :0242-28-2525
休業日:年中無休
時間 :08:30~17:00(04月~11月)09:00~16:30(12月~03月)
入場料:大人850円
駐車場:無料(200台)
関連URL:会津武家屋敷は歴史感動ミュージアム