美しすぎる放散虫のガラス模型、不思議な冬虫夏草の標本──宮城県仙台市の東北大学総合学術博物館は、化石、動植物標本など地球科学分野の資料約1200点を公開している博物館です。
貴重な資料を惜しみなく一般公開
東北大学は1907年(明治40年)に日本で3番目の帝国大学となった大学です。大学の理念は「研究第一主義」「門戸開放」「実学尊重」の3つ。その理念にふさわしく、東北大学が誇る貴重な資料を一般公開している施設が東北大学総合学術博物館です。入場料が大人150円(小中学生は80円)というのも嬉しいですね。
入り口の化石板「デボンの海」
たいていの博物館は資料の劣化を恐れて一般公開しているものはレプリカが多いんですよね。でもここは公開資料のほとんどが本物! 入り口に置かれたこの板はアンモナイト類と直角石類の化石が密集したモロッコ産の石灰岩石材です。年代はデボン紀後期(3億6千万年前)。オウムガイやアンモナイトがびっしり!
コンパクトながらみっしりと標本などが並んだ館内
館内はコンパクトながらも1階、2階を立体的に使った展示方法で、みっしりと資料が並んでいます。手前の骨格標本はステゴサウルス、その奥はフクイラプトル。中空に浮かんでいるのはヒゲクジラ類のイワシクジラです。この日は休日だったので、お子さん連れのご家族も結構いらっしゃいました。
白亜紀の貝の化石
白亜紀の化石がずらり。白亜紀は中生代最後の時代(1億4400万年前〜6500万年前)です。地球が温暖な気候になり南極大陸でさえ植物が繁茂していました。白亜紀の末には恐竜やアンモナイトが絶滅したのでこのようにたくさんの化石が残っています。
古人骨のコーナで人類の進化を学ぶ
こちらは古人骨のコーナ。東北大学の医学系研究科人体構造学講座には、東北の遺跡から発掘されたたくさんの人骨を保存しています。縄文時代から現代までの頭骨を見比べることで、人間がどのように進化していったのかを理解することができます。最初は頭ちっちゃかったんだねー。
意外にも長い歴史のある東北大学珊瑚研究
意外なものがありましたよ。東北なのになぜサンゴ?──と思ったら、実は東北大学は熱帯・亜熱帯のサンゴ礁の研究を熱心に続けている大学なんですね。地質学講座の矢部長克初代教授(1878-1969)はサンゴ礁の研究の第一人者だったそうです。現在サンゴの採取は研究機関と言えども難しくなっていますからこれは大変貴重な標本です。
世にも不思議な冬虫夏草の標本コーナ
私が心ときめかせたのは、冬虫夏草(とうちゅうかそう)の標本コーナ。冬虫夏草は古来より虫が草へと変態する不思議な現象で、主に中国で漢方薬として不老不死や滋養強壮に効果があると伝えられてきました。
人間に寄生する冬虫夏草菌もあるのかな?
実は冬虫夏草は冬虫夏草菌という菌類が昆虫に寄生したキノコです。でもある菌類が寄生するのは特定の虫に限られているという不思議な性質があります。この広い世界にひょっとしたら人間にのみ寄生する冬虫夏草菌もあるのかもしれませんよ? それはどんな薬用があるんでしょうね。ワクワク(ゾクゾク?)する展示です。
美しすぎる放散虫のガラス細工模型(パイレックス)
こちらは硝子機器開発・研修室の柴崎正行先生の放散虫のガラス細工模型(パイレックス)です。こんな美しい模型は生まれて初めて見ました。模型というより、もはや美術品ですよね。これは東北大学総合学術博物館でしか見られないんですよ。
ヴンダーカンマーのようなレトロで文化的な博物館
じっくり見学しても1、2時間ほどの博物館です。ここはいわゆるベタな珍スポットではないのですが、私はコンパクトに標本・資料が集められた科学系博物館が大好きなのです。かつて近世ヨーロッパで流行したヴンダーカンマーのような、レトロで文化的な香りのする東北大学総合学術博物館でした。(2014年05月04日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
東北大学総合学術博物館(とうほくだいがくそうごうがくじゅつはくぶつかん)
住所 :宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-3
電話 :022-795-6767
休業日:月曜日(祝日の場合はその翌日)
時間 :10:00~16:00
入場料:大人150円
駐車場:無料(15台)
関連URL:東北大学総合学術博物館