長井勝一の名前を聞いてすぐにお分かりになる方はサブカルチャー通ですね。『月間漫画ガロ』の名物編集長です。宮城県の長井勝一漫画美術館はマニアが驚愕するようなお宝がいっぱい!
日本の漫画の歴史に大きな影響を与えた『ガロ』
長井勝一漫画美術館(ながいかついちまんがびじゅつかん)は塩竈市の生涯学習センター内にあります。日本の漫画の歴史において大きな影響を与えた漫画雑誌『月間漫画ガロ』。長井勝一氏は初代編集長で、数多くの漫画家を育ててきました。彼は漫画編集の神と呼ばれているんですよ。
白土三平や水木しげるを有名にした名編集長
長井氏は1921年生まれ。宮城県塩竈市の生まれで、終戦後に古書店で働いたことがきっかけで貸本漫画の出版社・大和書店を開設。その後日本漫画社、三洋社と出版社を開業しました。白土三平や水木しげるは三洋社から有名になりました。
病弱なのに漫画のために懸命に働く
しかし長井氏には結核の持病があり、片肺の切除手術も受けています。それほど体が丈夫なわけでもないのに、次々と出版社を設立したり浅草のバーを経営したり──かなり活動的な人物なんですね。
1960年代に青林堂を立ち上げ
そして1960年代に青林堂を立ち上げます。青林堂は貸本漫画の漫画家たちが自由に活躍できる場を作りたい──という願いから設立されたものです。その当時すでに貸本漫画は衰退に向かっていたからです。
1964年に『月刊漫画ガロ』創刊
そして1964年に『月刊漫画ガロ』が創刊されました。『月刊漫画ガロ』のメインは白土三平の漫画『カムイ伝』です。最初の発行部数はわずか8千部。しかし徐々に人気が出て、最盛期には8万部も売り上げました。
ガロからデビューした漫画家の面々
『月刊漫画ガロ』と言えば、新人漫画家の登竜門として有名ですよね。ガロは商業性よりも漫画家の個性を大事にする雑誌なので、オリジナリティ溢れる漫画家がたくさん生まれました。
水木しげる、つげ義春、蛭子能収、花輪和一、丸尾末広、内田春菊、池上遼一、ますむらひろし、みうらじゅん、唐沢直樹、杉浦日向子、近藤ようこ、古屋兎丸、滝田ゆう、久住昌之、小林よしのり、しりあがり寿、とり・みき、ねこぢる
数え上げたらきりがありません。漫画界の大御所がずらり!
再現された長井氏の机とパネル
しかしながら1970年代には売上が下がり始め、青林堂の編集部には返本のガロの山が築かれるようになってしまいました。写真はイラストレータの南伸坊氏による長井氏のイラストパネルと、再現された長井氏の仕事場。積み重なったガロにはご丁寧に「返本」という短冊がつけられています。
「ガロは原稿料が出ない」って本当?
あなたも「ガロは原稿料が出ない」という噂を聞いたことがあると思いますが、この噂の一部は事実です。1980年代にはもはや社員でさえまともに給料が払われないような状態でした。ただあまりに極貧で生命の危険があるような漫画家には1ページ数百円の原稿料が出たそうです。
漫画家に愛された長井氏
そんな激安の原稿料でもガロからデビューしたいという漫画家がたくさんいたのは、編集長の人柄によるものなのでしょうね。写真は長井氏が亡くなった時に寄せられた漫画家たちによる寄せ描きです。矢口高雄、丸尾末広、しりあがり寿、近藤ようこなど有名なマンガ家が描き込んでいます。
びっくりするようなお宝が詰まったコーナー
こちらはガロに掲載された貴重な原画が展示されているコーナ。ガラスケースの中と引き出しに、たくさんの原画が収納されているんですが、これがまあ、マニアにとっては心臓バクバクの垂涎モノなんですよ!
有名漫画家の直筆原稿が見られる
水木しげるの点描の凄さが分かる漫画原稿、丸尾末広の『少女椿』のカラー表紙、花輪和一のフルカラーポスター、杉浦日向子の直筆イラスト入りうちわ……。こ、これ、すごすぎでしょう! こんなもの無料で見れちゃっていいのかしら。
漫画家からの年賀状も展示
長井編集長宛ての有名漫画家による年賀状もすごい。中でも花輪和一の年賀状は涙無くしては読めません。
私の近況は、なんとか今年は百万円くらい稼ぎたいと思って心機一転がんばっておりますが、どうも作品の方にこの熱意があらわれず、次々とまずい作品ばかりが出来て困っております。(1979年)
サブカル漫画の大御所なのに年収百万円以下……。花輪先生ェ……。
レア漫画や資料も読み放題!
そして読書コーナーでは今ではめったに入手できないレア漫画や、ガロに関する資料を自由に読むことができるんです。ちょっと、これ本当に無料でいいの? 宮城県塩竈市在住のあなた、恵まれすぎです!(2014年05月05日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
長井勝一漫画美術館(ながいかついちまんがびじゅつかん)
住所 :宮城県塩竈市東玉川町9-1
電話 :022-367-2010 (塩竈市生涯学習センター)
時間 :10:00〜18:00(平日)10:00〜17:00(土日)
休館日:月曜、祝日(こどもの日、文化の日は開館)、年末年始、毎月末日
入館料:無料
駐車場:無料