前回に続いて愛知県犬山市の博物館明治村で、明治人になりきって明治時代の衣食住を体験してみました。服装は、食べ物は、住居は? 昔の人々はどんな風に暮らしていたのでしょうか?
ざんぎり頭を叩いてみれば?
ざんぎり頭を叩いてみれば、文明開化の音がする──歴史の授業でやりましたよね。長らく鎖国状態にあった日本が開国し、急に西洋文明が流入したことによって、東洋と西洋が入り交じった独特な文化が花開きました。ちょんまげを切り落とした散切り頭は、文明開化の象徴的。でも日本全体が一気に西洋化したわけではありませんでした。
【1】明治時代の「衣」:服装について
これは横浜商館天主堂ノ図。当時のキリスト教教会前の様子です。横浜は西洋文化流入の中心地だったので、この絵の中にも欧米の女性、中国人など様々な国の人々が描かれています。しかし洋服を着た人もいるものの、日本人はまだちょんまげに着物姿が多かったみたい。
スキーなのに着物姿?
明治時代の将校夫人たちのスキー練習風景を撮影した写真です。みなさん着物に袴姿ですよ。髪型も昔ながらの髷(まげ)を結っています。着物でスキーなんて現代では考えられないですね。西洋のスポーツでありながら、当時のスポーツウェアは日本式だったんですね。
洋風と和風の髪型が混在
北里研究所本館・医学館の写真。看護師が(当時は看護婦だけど)アンプルの封入作業をしている風景です。左端の女性の髪型に注目してください。他の女性は西洋風に大きく結い上げた髪ですが、左端の方は桃割れと呼ばれる日本髪です。最先端の職業婦人の間でも、髪型は完全に西洋化していたわけではないようです。
全員が一斉に洋服になったわけではない
歴史の教科書には「鹿鳴館」だの「ざんぎり頭」だのと書いてありますから、日本人全員が急に着物を脱ぎ捨てて背広やドレス姿になったのかのような印象があります。しかしこういった西洋化は都市部、それもごく一部の上流階級や知識人のみだったと考えられます。
ドラマ『坂の上の雲』の衣装
ちょうどNHKドラマ『坂の上の雲』展をやっていました。左は秋山真之役の本木雅弘さんの衣装。右は秋山季子(すえこ)役の石原さとみさんの衣装です。羽織の長さは時代によって流行がありますが、当時は現代よりもかなり長い丈です。
ドラマの中でも軍服を除けば、ほとんどの登場人物は着物に日本髪。日本全体で見れば一般庶民は江戸時代と変わらぬ着物を着ていました。
ドレスを着たい貴女に
とは言え、女性なら一度は鹿鳴館の貴婦人ドレスに憧れるものでしょう。そんなニーズにも答えてくれるのがこちら。明治時代のドレスの貸し出し&写真撮影サービスがあるんですよ。貴女も明治人になりきって写真撮影はいかが?
【2】明治時代の「食」:牛鍋を食べてみよう
仮名垣魯文の『安愚楽鍋』には「牛鍋食わぬは開化不進奴(かいかひらけぬやつ)」と書かれています。牛鍋を食べないなんて、文明開化してない遅れたやつだってことですね。明治村には牛鍋屋さんがありますよ。1887(明治20)年に建てられた大井牛肉店です。
大井牛肉店で牛鍋
大井牛肉店は牛鍋のお店として神戸に建てられました。ベランダ付きの洋風建築ですが日本古来の建築技術を使い、木造に白漆喰を塗って柱や窓廻りを形作っています。お店の中に入ると大きく土間があり、奥に二階へ続く階段があります。洋風と日本風が混じったユニークな建築物です。
大奮発して牛鍋を食べてみました
二階は座敷になっていて実際に牛鍋が食べられるんですよ。ただし愛知県犬山市という土地柄、神戸牛でなくて飛騨牛ですけどね。お値段5,000円(松)。お財布的に痛いけど、明治人体験のため奮発しましたよ。もちろん大変おいしゅうございました。
明治時代のスナック・カレーパンはいかが?
明治村村内には、リーズナブルなファーストフードもたくさんあります。小倉ドッグ、コロツケー、串かつ──などなど。こちらは明治時代のベストセラー小説『食道楽(しょくどうらく)』に登場するカレーを再現した、カレーパン。手軽なスナックを片手に明治の街並みを歩くのもオツなものです。(各180円〜300円ぐらい)
ラフカディオ・ハーンの珈琲
帝国ホテル内の喫茶店のラフカディオ珈琲です。松江を愛した明治時代の文豪・ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は、毎朝コーヒーを飲んでいたと親友に手紙に書いています。ハーンの著書『LA CUISINE CREOLE』に彼独自のコーヒーの入れ方が書き残されているのですが、そのコーヒーを再現したものがこれ。明治の香りがするかも?
【3】明治時代の「住」:様々な建物を観察
最明治村の見所は、何と言っても明治時代の建物をそのまま移築・復元した西洋館の数々。フランス、イギリス、ドイツ、アメリカなど欧米各国の有名建築家の設計による、当時の職人の粋を集めた最先端の建物。どれも個性的で大変美しい建築物ばかりです。
夏目漱石と森鴎外の家を訪問
西洋建築は外国人や貴族のための住居、公共の建物として都市部に多く建てられました。しかし一般庶民が西洋建築に住むことは考えられませんでした。こちらは文豪・夏目漱石と森鴎外が住んだ家です。当時の典型的中流住宅と説明されていますが、彼らは帝都に住むインテリゲンチャですから、この家は地方に住む一般人にとっては高価な物件でしょう。
地方の文明開化を進めたもの
明治時代の文明開化の地方への伝播はかなりゆっくりと進みました。例えば鳥取県に電話や電灯が導入され、大通りや橋などが建設され、区画整理が行われたのはようやく明治40年代に入ってからのことでした。このような地方の改革が行われた背景には、当時の皇太子・裕仁親王殿下の地方視察がありました。
あなたも明治村の住人に!
一日明治人になりきって過ごした私ですが、1日と言わずずーっとここに住みたいぐらい! 実はそんな夢を叶えてくれるサービスもちゃんとありますよ。年間3,500円で住民登録をすると1年間無料で何度も入場できるのです。しかも自分が好きな建物に住民登録できます。私? もちろん帝国ホテルの住民。ワタクシ、今はホテル住まいですのよ。(2010年12月18日訪問)【麻理】
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参考文献
地図&情報
博物館明治村(はくぶつかんめいじむら)
住所 :愛知県犬山市字内山1
電話 :0568-67-0314
休業日:火曜日・年末年始(季節によって変動するので要確認)
時間 :09:30~17:00(季節によって変動するので要確認)
入場料:大人2000円(乗り物料金別)
駐車場:有料500円(季節によって変動するので要確認)
関連URL:博物館明治村