愛知県半田市のはんだ山車まつりにて当代きってのからくり人形師・九代目玉屋庄兵衛氏の実演がありました。江戸時代のハイテク・からくり人形の動きを動画でご覧ください。
5年に1度31台の山車が集結
愛知県半田市の山車祭りは5年に1度、市内全ての山車が集結するイベント。現在の価値にして1台数億~10億円と言われる山車が31台も! 岐阜高山の祭屋台と同じく、金糸銀糸で彩られた刺繍、豪華な彫刻、山車の上のからくり人形で知られています。
大人気のからくり工房展
岐阜、愛知、三重など東海地区の山車からくり人形の修理・復元・制作を行っているのが、尾陽木偶師(びようでぐし)・九代玉屋庄兵衛氏です。松華堂(しょうかどう)ギャラリーで開かれたからくり工房展は大人気で、朝一番で並んだのにすでに長蛇の列。
ギャラリーはお客さんでぎっしり
前方に畳敷きの台が置かれ、壁に沿って10点ほどからくり人形が展示されています。30人ほどでギャラリーの中はいっぱい。皆さん床の上に体育座りでやや窮屈な感じ。でも仕組みを詳細に見られるからこのくらいの広さが良いのかな。
日本のからくり人形の材料は木
日本のからくり人形と西洋のオートマタとの最大の違いが「素材」。日本のものは人形本体や装置が木でできているんです。それも材料となる木はパーツによって使い分けられています。例えば胴体は加工しやすいサクラ、歯車にはゆがみにくく乾燥に強いカリン、顔は表面がきめ細かいヒノキなど。からくり人形師が一人前になるには15〜20年ほどかかります。
7代目が復元した茶運び人形
木は丈夫で狂いがない部品にするため、10年寝かせてから作り始めます。そうやって作ったからくりは数百年経ってもちゃんと動くんですって。今回披露されたのは座敷からくりの茶運び人形と弓曳き童子。茶運び人形は1680年代に作られたもので、九代目のお父様7代目が初めて復元しました。
畳の縁ぎりぎりでターン
頭をふりふり歩きます。台から落っこちないかなとヒヤヒヤしているとちょうど縁のところでターン。お客さんがお茶を手に取るとピタリと止まり、飲み終わった茶碗を持って引き返していきます。なんて愛らしい動きでしょう!
今度は内部の構造を見ながら
今度はちょっと可哀相だけど、着物を脱がせてお茶運び。内部の構造がよく分かります。歯車のカムが1回転すると畳1畳を進むんです。お客さんの距離によってカムを調節することで、ターンの位置を決められるんですよ。
天才人形師・田中久重氏の弓曳き童子
次に弓曳き童子。大きさは全体で30センチほど。江戸時代の人形師・田中久重氏(通称「からくり儀右衛門」)が発明したからくりです。彼は日本で初めて蒸気機関を発明した人で、芝浦製作所(現東芝)の創設者でもあります。私は一体を上野の国立科学博物館で見たことがありますが、なんでも1体数億円するんですって。
人間そのものの動き
1998年に九代玉屋庄兵衛氏が復元した、材料も大きさも田中久重氏のものと全て同じというもの。1メートルほど離れた的に向かって、イヌワシの羽のついた矢を放ちます。首をかしげて狙いを定めるところなぞ人間そのもの。顔の角度を変えることで、上手く射抜けると喜びの表情を、はずすと(一本はわざとはずれるそうです)悲しみの表情を顔に出します。
見えないところにも遊び心
箱の中では小さな唐子が一生懸命歯車を回しています。重りには純金、矢には象牙、豪華な衣装と細かい部分にも手を抜かない芸術品です。復元には半年以上かかったとおっしゃっていました。
年々難しくなっているからくり人形作り
素晴らしいからくり人形を目の前で見られて感激です。でもからくり人形のバネのクジラのひげだけは現在入手困難だそうで人形作りは年々難しくなっているそうです。玉屋庄兵衛さん、どうぞこれからもたくさんの人をわくわくさせてくださいね。(2007年10月07日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
松華堂(しょうかどう)ギャラリー
2007年10月06日、07日限定開催のイベントです。常時展示ではありません。住所 :愛知県半田市御幸町103
電話 :0569-21-0046
関連URL:和菓子と生菓子の松華堂・愛知県半田市 | 伝統的な製法を守る安全で安心なお菓子