広島県福山市の南端では瀬戸内海の絶景が楽しめます。そんな美しい島々を望む断崖絶壁に、朱塗りの観音堂阿伏兎観音が建っています。足をガクガクさせながら回廊を巡ると意外な光景が!
風光明媚な瀬戸内海の風景が広がる
なんと清々しい光景でしょう。福山の阿伏兎岬(あぶとみさき)の先端までやってきました。瀬戸内海の島々が点在し、ブルーグリーンの海がキラキラと輝いています。水底の石が透けて見えるほど透明度が高く、思わず泳ぎたくなってしまうほど。
14世紀半ばの臨済宗のお寺
岬の突端にある磐台寺(ばんだいじ)へとやってきました。磐台寺は暦応年間(1338〜1342)に覚叟建智(かくそうけんち)が開いた臨済宗のお寺です。一時期衰退して廃墟状態になっていたのですが、元亀年間(1570~1573)に毛利輝元によって再建されました。
十一面観音を安置した阿伏兎観音(あぶとかんのん)
磐台寺は阿伏兎岬の突端に建っているため、この観音堂は阿伏兎観音(あぶとかんのん)と呼ばれて、昔から漁師などの信仰を集めてきました。というのも寛和の頃(986)に花山法皇が航海安全を祈願して岬に十一面観音の石像を安置したからなのです。
朱塗りの柱が印象的な室町時代の建築様式
阿伏兎観音堂こと磐台寺観音堂は、室町時代の建築様式で知られています。朱塗りの柱に石段は古式ゆかしい佇まい。断崖に建っているため海の眺望が絶品──とのことで上ってみることにしました。
目の前に広がる絶景!
わあ! 目の前に広がる一面の海! 海風が頬をなでて気分爽快! 欄干から覗き込んでみるとザパーンと波が打ち寄せてダイナミックな光景になっています。やや薄曇りなのが残念だけれど、これは絶景かな、絶景かな!
高所恐怖症の人にとっては絶叫スポット
──なんて爽やかさを満喫しているようですが、実はここは高所恐怖症の方にとっては絶景ならぬ「絶叫」スポット。お分かりになるでしょうか。床が斜めになって海の方に下がっているのですよ! ちょっと、なんでこんな設計にしたのよ!
強度的に大丈夫なのかしら……?
欄干も私の膝上ぐらいの高さしかなく、しかも木製なので危なっかしいことこの上なし。海風をもろに受ける建物だし、強度は大丈夫かしらとビクビクものです。私が背中を壁につけるように立っているのは、海に向かって斜めっている床が怖くて仕方がないからなのでした(旦那様は壁につかまりながら這うように歩いていました)。
観音堂の中は──?
海に向かったお堂の中を見て驚きました。こ、これは……
おっぱいがいっぱいだ!!!
十一面観音は子授け・安産の仏様
いったいなぜおっぱい? と思ったら説明書きに
本尊の十一面観音は、子授け・安産・航海安全の祈願所として広く信仰を集めてきた
と書いてありました。なるほど十一面観音は子宝や子育ての仏様だったのね。
愛情いっぱいの手作りおっぱい絵馬
参拝者が購入できるおっぱい絵馬もありますが、観音堂内に奉納されているものは手作りの絵馬が圧倒的に多いようです。ボール紙や板に綿を詰めた布で作ったDIYおっぱい絵馬。子供のことを思う親御さんやご親族の愛情がひしひしと伝わってくる風景でした。
なるべく他の参拝者がいない時がおすすめです
観音堂の回廊は幅が1メートルほどしかなく、端っこは危なくて仕方ないので、すれ違いは難しそうです。参拝した時には他に誰もいなかったのでホッとしましたが、団体旅行のみなさんがどやどや訪れたら相当怖いことになりそう。他の参拝客がいないときを見計らってどうぞ。
いったいどうやってこのお守りを結びつけたの?
回廊の先の木にたくさんのお守りが結び付けられていました。……ん? ちょっと待って。これいったいどうやって結びつけたの? 回廊からこの木まで1メートルぐらい離れてるんですよ。しかも下はガケだし……。「母の愛は強し」のど根性で木にぶら下げたのかしら?(2017年05月03日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
阿伏兎観音(あぶとかんのん)
住所 :福山市沼隈町大字能登原
電話 :084-987-3862
休業日:年中無休
時間 :08:00~17:00
入場料:100円
駐車場:無料(4台)