洞窟内の無数の磨崖仏に震える濃密な時間「鶴の岩屋」【佐賀】

鶴の岩屋
佐賀県鶴の岩屋を訪れた人は、息苦しくなるような背筋が寒くなるような、不思議な心持ちになるに違いありません。人の祈りがこれほど濃密に実体化した場所はそうはないでしょう。

目印はにあんちゃんの記念碑

鶴の岩屋
佐賀県唐津市肥前町。「にあんちゃんの里(※)」として知られています。にあんちゃんの記念碑がある広場から坂道を登って行くと、鶴の岩屋(つるのいわや)のお堂が見えてきます。

『にあんちゃん』(安本末子)は1958年に出版されたベストセラ。著者が10歳の時に書いた日記を元にしている。

A級の「B級スポット」

鶴の岩屋
鶴の岩屋とは何かというとお寺です。珍スポットマニアの間では有名な場所なのですが、ガイドブックにもほとんど載っておらず、知る人ぞ知るA級の「B級スポット」。ご住職はいらっしゃらない無人の寺ですが、拝観は自由にすることができます。

本堂裏手の洞窟を拝観

鶴の岩屋
メインは本堂。でもまずは本堂の裏手にある洞窟を見てみましょう。本堂の反対側が山になっていてそこに2つの大きな岩の裂け目があります。

左側の洞窟

鶴の岩屋
左側の裂け目の方が小さいのですが、岩肌がダイナミックにうねっていて迫力があります。こちらには多賀大明神と書かれた石碑と小さな石仏が祀られていました。

右側の洞窟

鶴の岩屋
右側は数段の階段が設けられています。登ってみると、小部屋のような洞窟の岩壁に5体の仏様が彫られていました。衣や冠が赤く彩色されています。

崩れやすい砂岩でできた洞窟

鶴の岩屋
岩壁をよく見ると、細かい筋の入った砂岩です。なるほど、これなら柔らかいので石仏を彫るのに都合が良いのでしょう。ただし少し触れただけでボロボロとくずれそうな質感です。彫りやすいけれど崩れやすくもあるようです。

本堂の鶴の岩屋へ

鶴の岩屋
いよいよ本堂の方へ向かいます。他に人は誰もいません。畳敷きの部屋を奥に進むと、壁に幕がかかっています。この奥が鶴の岩屋です。中は真っ暗。「岩屋内の電源 必ずスイッチを切ってください」という注意書きがあります。

異様な光景に震える

鶴の岩屋
蛍光灯の白っぽい光が洞窟内を照らすと、思わず声をあげそうになりました。ゴツゴツとした岩肌に数十体、数百体の仏像が浮かびあがったからです。天井にも壁にもびっしりと仏様が並んでいます。異様な光景に体がぶるりと震えます。

強烈な圧迫感を感じる洞内

鶴の岩屋
洞窟内は6畳ぐらい、天井は2メートルはあるでしょう。でも息苦しいような強烈な圧迫感を感じます。壁の仏像は四国八十八ヶ所、西国三十三ヶ所の尊像で約120体あるそうです。

作者・製作年代ともに不明

鶴の岩屋
暗闇に浮かぶおびただしい数の仏。安永2年(1773)と天保14年(1843)に修復された記録が残っているものの、作者や製作年代は全く分かっていません。

500年前の旅の修行僧が彫ったものか?

鶴の岩屋
寺の由来にはこうあります。500年前に旅の修行僧が通りかかり、鶴が舞い降りるのを見ました。霊験あらたかな土地に違いないと思った僧は洞窟を掘り広げながら仏像を彫刻し、疫病や飢饉などこの世の苦行から人々が救われるようにと祈り続けたそうです。

崩落・劣化が激しい状態

鶴の岩屋
ひょっとしたら一人の修験者ではなく、複数の人々が何世代にもわたって彫り続けたものなのかもしれません。お堂内は綺麗に清められていますから、今も熱心に信仰されている方々もいらっしゃるのでしょう。

しかし壁の崩落がはげしく、いくつかの磨崖仏はボロボロに崩れ、赤や白で彩られた部分もひび割れてはげている状態です。この石仏はいずれ風化してなくなってしまうのかもしれません。

夢から覚めたような気持ち

鶴の岩屋
洞窟内に立っていると、四方八方からじっと見つめられているような落ち着かない気持ちになってきました。石仏に手を合わせ、早々に鶴の岩屋を後にしました。外のまぶしい光を浴びると、夢から覚めたような気がしました。(2015年01月03日訪問)【麻理】

参考文献

地図&情報

鶴の岩屋(つるのいわや)

住所 :佐賀県唐津市肥前町鶴牧322
時間 :拝観自由(夜はお薦めしない)
拝観料:無料
駐車場:無料

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