神代の昔、スサノオノミコトの蛮行に心を痛めたアマテラスオオミカミが、天の岩戸に隠れて世界が闇に包まれた──と神話にあります。そんな神秘的な雰囲気の天の岩戸が京都にあります。
京都のお伊勢さんとも呼ばれて親しまれている
京都市山科区の日向大神宮(ひむかいだいじんぐう)は天照大神(アマテラスオオミカミ)を祀っている神社。清和天皇の勅願によって伊勢神宮の社殿を模して作られたことから、「京のお伊勢さん」とも呼ばれて親しまれています。
九条山浄水場ポンプ室の坂をさらに上がった先にある
実は日向大神宮は、前回ご紹介したインクライン・九条山浄水場ポンプ室の脇の道を上った山の上にあります。結構な坂なので訪れる人は少ないようですが、レンガ造りの美しいポンプ室を見たついでにぜひ訪れてほしい穴場スポットです。

京都の名泉の一つとして有名な・朝日泉
貞観年間に疫病が大流行した時、清和天皇がこの地に湧き出る清水を汲んで民に与えよという神のお告げを受けました。その通りに人々に水を配って飲ませると疫病がおさまったと伝えられています。日向大神宮の泉は朝日泉と名付けられ、京都の名泉の一つとなっています。
天照大神を祀る神社と天の岩戸
私が足を運んだ理由は、京都のお伊勢さんや霊泉ではなく、神秘的な岩があると聞いたからです。アマテラスオオミカミを祀る神社には神話にまつわる不思議な物(天の磐船など)が祀られていることが多く、ここにも天の岩戸(あまのいわと)と呼ばれる巨石があります。

日本神話の「天の岩戸隠れ(あまのいわとがくれ)」とは?
ここで神話に登場する「天の岩戸隠れ(あまのいわとがくれ)」をおさらいしてみましょう。
イザナギとイザナミの間に生まれた、アマテラス、ツクヨミ、スサノオの3姉弟。アマテラスは高天原を、ツクヨミは夜の世界を、スサノオは海を治めるようにイザナギに命じられます。
暴れまわるスサノオノミコトとアマテラスオオミカミ
ところがスサノオは全く言うことを聞かずに暴れ放題。とうとうイザナギに追放されて、姉が治める高天原に向かいます。あわや姉弟間の戦争勃発か──と危ぶまれましたが、アマテラスオオミカミとスサノオは和解。しかし調子に乗ったスサノオは傍若無人に暴れまわり、皮をはいだ馬を機織女がいる部屋に投げ込むというとんでもない悪さをしました。
太陽神・天照大神が岩に隠れ、世界は闇に包まれた
そしてショックを受けたアマテラスオオミカミは天の岩戸に引きこもってしまい、太陽神が岩に隠れたので世界が闇に包まれてしまいました──これがいわゆる天の岩戸隠れの伝説です。日向大神宮の裏山にある天の岩戸は、そんな神秘的な物語を実体験できる大岩です。
岩をくぐり抜けると罪や穢が祓い清められるご利益
巨大な岩の中央に人がやや屈んで入るぐらいの大きな穴が空いています。ここをくぐり抜けると、罪や穢(ケガレ)が祓い清められて福を招くといわれ、「ぬけ参り」とも呼ばれています。本来のぬけ参りは立春を一年の始めとして節分の日(02月03日)に厄を払うものですが、一年中参拝することができます。
岩の中に天手力男を祀る戸隠神社がある
穴は直角に曲がっているL字型をしています。直角部分には天手力男(アマノタヂカラオノミコト)を祀っている戸隠神社があります。天手力男は天の岩戸の岩の扉をこじ開けたという剛力の神様です。筋トレをがんばれますようにと手を合わせてきました。
明るい光を見るとホッとする
岩の洞窟はそれほど長くはなく、ほんの数メートルです。すぐに出口が見えますが、岩の中は薄暗いので外の明るい光を見るとホッとします。アマテラスオオミカミが出てきて世界が再び光に満たされたという神話のエピソードが頭に浮かびました。
【動画】で見る天の岩戸くぐり
天の岩戸の入り口から出口まで歩いた動画です。あっという間の天の岩戸くぐりでしたが、岩の中はひんやりとしていて神秘的な雰囲気でしたよ。
日本全国各地にある天の岩戸の一つ
天の岩戸事件は本当は高天原の天上界で起った出来事なのですが、日本全国各地に「こここそ、あの天の岩戸です」というスポットがあります。お近くに天の岩戸があるという方は、ぜひ訪れてみてください。時を忘れるような神秘体験になるかもしれませんよ。(2017年02月26日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
日向大神宮(ひむかいだいじんぐう)・天岩戸(あまのいわと)
住所 :京都府京都市山科区日ノ岡一切経谷町29
電話 :075-761-6639
休業日:年中無休
時間 :参拝自由
拝観料:無料
駐車場: 無料
関連URL:日向大神宮