沖縄県那覇市の内金城御嶽(うちかなぐすくうたき)には奇妙な伝説の残る場所があります。妹が女陰で鬼になった兄を退治するというお話。「下の口は鬼を食べる口」とはいったい?
日本の道100選にも選ばれた石畳
那覇市首里金城町の石畳は、昔ながらの沖縄の様子が伺える観光名所です。日本の道100選にも選ばれている美しい小道で、民家や沿道の花々を楽しみながら散歩ができます。この石畳をどんどん登って行くと内金城御嶽(うちかなぐすくうたき)という看板が見えてきます。
熱帯のジャングルのような森
さらに登って行くと道幅が狭くなり、木々が鬱蒼としてきます。内金城御嶽には樹齢200年以上の大アカギの大木が生えています。熱帯のジャングルのような森が見えてきたらもうそこは内金城御嶽。
内金城御嶽の大嶽・小嶽
御嶽は、日本の神社の鳥居のようなわかりやすい建造物や、お寺のご本尊のようなものはありません。御嶽の境界はぼんやりとしていることが多く、気がつくと御嶽の中に入っていたりするのです。金城御嶽には2つの御嶽があります。それは地元の人に大嶽・小嶽(おおたき・こたき)と呼ばれています。
鬼餅(ウニムーチー)行事
大嶽・小嶽は270年前から伝わる鬼餅(ウニムーチー)行事由来の場所です。鬼餅とは何なのか、そして鬼餅にまつわる伝説をご紹介しましょう。
昔、首里城の近くに仲の良い兄妹が住んでいました。ところがあるとき兄は鬼になってしまい、村の人々や家畜を食い殺すようになりました。
兄には鉄の入った餅を食わせる
兄をなんとかせねばと思った妹は、鬼が好む餅を作り中に鉄を入れました。妹は兄を崖に呼び出し、餅を兄にすすめました。けれども餅には鉄が入っているので、鬼といえども兄はなかなか噛み切れません。妹は平気な顔をして、鉄の入っていない餅をパクパクと食べました。
下の口は鬼を食べる口!
驚いた兄はふと妹の下半身を見ました。そして「お前の下の口はどうなっているのだ?」と尋ねました。すると妹は「上の口は餅を食べる口、下の口は鬼を食べる口だ」と言うやいなや着物をまくりあげて陰部を見せ、兄に迫りました。
旧暦12月8日に餅を食べる
驚いた兄は足を踏み外し、崖から落ちて死んでしまいました。妹が鬼となった兄を退治した日は旧暦12月8日。沖縄ではその日を厄祓いの日として、鬼餅を作って食べることになりました。大嶽・小嶽は、その兄妹が住んでいた家があったところで、大嶽には兄を小嶽には妹が祀られているのだそうです。
女陰で鬼を退治する妹
懸命な読者諸君はもう分かったと思います。なぜ私がここを訪れたのか。そう、女陰で鬼を退治したという伝説に心惹かれたからです。鬼餅行事を体験した子供なら誰でもこの伝説を知っています。「女の下の口は鬼を食べる口だ!」というくだりは、子供、特に少年にとってはかなり衝撃的でしょうね。
呪術的パワーを秘める女陰
日本の神話では女陰(ほと)がモチーフとしてよく出てきますし、古代の信仰において男根・女陰を崇めることは珍しくありません。命を生み出す不思議な器官としてある種の呪術的なパワーを持つ女陰。そんな女陰が鬼を倒す力を秘めているのは大いに頷けることです。私はそんな文化が現代の沖縄でも生き続けていることが大変素晴らしいと思いました。
神秘的なパワースポットとしても人気
大嶽・小嶽は鬱蒼とした木々に囲まれていて、本当にここは那覇市なんだろうかと思えるほどの静けさ。とても神秘的です。なお大アカギの木の祠には旧暦6月15日に神様が降りられて、願い事を年1つだけ聞いてくださるそうですよ。パワースポット好きな方にもお勧めの場所です。(2012年09月12日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
内金城御嶽(うちかなぐすくうたき)大嶽・小嶽(おおたき こたき)
住所 :沖縄県那覇市首里金城町3-18
電話 :098-853-5776(那覇市教育委員会文化財課)
時間 :見学自由だが夜はおすすめしない
拝観料:無料
休業日:年中無休
駐車場:なし