沖縄県与那国島の西の端に、とても不思議な廃墟があります。柱と屋根だけの回廊のような廃墟。ボロボロに崩れているコンクリートと、大自然が不思議なマッチングを見せています。
久部良バリの近くに古代神殿?
ここは前回ご紹介した久部良バリのすぐ近くにあります。遠くから見るとまるで古代ローマ神殿の遺跡のよう。いかにも荘厳な雰囲気です。久部良バリを見学した後に、あれは一体何だろう? と近寄ってみました。
円形の巨大な建築物
近くで見るとその大きさに圧倒されます。楕円形をした回廊が2つ並んでいます。むき出しのコンクリートの基礎は海風にさらされてボロボロ。もう何十年もここに建っているかのような風格があります。
「黒潮海塩 アダンの夢」製塩所跡
ここは「黒潮海塩 アダンの夢」という与那国島の塩を製造していた工場跡なのです。サイト「美ら島物語 母なる島、与那国」(リンク切れ)によると、九州商事株式会社が自社製品の醤油と味噌に使う塩を調達するため、与那国島に製塩所を建てたのが始まり。
2004年に火災で燃えてしまった工場
これは「美ら島物語 母なる島、与那国」(リンク切れ)のスクリーンショットですが、写真からこのコンクリートの建造物が塩の樽の置き場となっていたのが分かります。1983年に生産を始めて、製塩所が建てられたのが1985年。しかし2004年に製塩所は火災に遭って全焼してしまったのです。
10年でこの状態に
たった10年でこんな廃墟になってしまうんですね……。与那国島では台風の直撃などで、建物がすぐに傷んでしまうのでしょう。どうもこの先工場を再建することもなさそうです。手間暇かけて丁寧に作られた与那国地産の塩だったのに、本当に惜しいですね。
まあるい味ってどんなかな?
「ソルトコーディネーター青山志穂のブログ」(リンク切れ)によれば、火事に遭った工場からなんとか持ちだしたアダンの夢を、与那国島の飲食店のオーナーが買い取って「国境(はて)の幻の塩」として販売していたそうです。なんでも「塩かどがとれてまあるくなって、そして旨みが増した味」だとか。私も一度味わってみたかったな。
アダンって何?
ちなみに「アダンの夢」のアダンって何かご存じですか? これがアダンの実。パイナップルみたいに見えますし甘い香りもするのですが、ほとんどが繊維質で食べられる部分はほんのわずか。しかも灰汁(あく)を抜かないと食べられないので、食用としては適していません。アダンは島のあちこちに自生してるのに残念だなあ。(2012年05月13日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
アダンの夢・製塩所跡(あだんのゆめせいえんじょあと)
住所 :沖縄県八重山郡与那国町与那国
駐車場:無料