「恥ずかしながら生き長らえて帰って参りました」という言葉を知る人も少なくなっているのかもしれません(「よっこいしょういち」も)。愛知県名古屋市の横井庄一記念館を尋ねました。
奥様の横井美保子さんが館長
横井庄一記念館は一見して普通の民家。ここは横井さんが日本に帰国して後結婚された、奥様の美保子さんと過ごした家だからです。2006年06月に開館して以来、館長の美保子さんとボランティアの方々が共に運営していらっしゃいます。
奥様の横井美保子さんが館長
実を言うとこの言葉が小野田寛郎さんのものなのか、横井庄一さんのものなのかがあやふやでした。この無知こそ「恥ずかしながら」ですね。自宅の一室には横井氏ゆかりの品々が並んでいます。晩年に製作した陶芸作品が多いみたい。
28年間ジャングルでサバイバル生活
横井庄一(1915~1997)氏とはどんな方か? 彼は元伍長の日本兵。太平洋戦争で召集され1944年からグアム島に配属。しかし1945年の敗戦も無条件降伏も知らされず、28年間もの長きにわたってジャングルの中でサバイバル生活を続けたという驚きの人です。
昭和のロビンソンクルーソーとしてマスコミの寵児に
1972年01月に地元民に発見され、02月に帰還。横井氏の発見と帰還のニュースは全世界に衝撃を与え昭和のロビンソンクルーソー、旧日本軍の英雄としてマスコミに大々的に取り上げられました。帰還の第一声「恥ずかしながら──」だけでなく「よっこいしょういち(よっこいしょの洒落)」までが大流行語になったんだそうです。
密林の極限状態
密林の中という劣悪な環境のもと、敵に発見されてはならないという精神的極限状況で、たった1人何十年も生活……。想像を絶する世界です。館長さんである美保子さんや周りの人から見て、実際はどんな方だったんだろうとますます興味津々。
記念館の目玉・横井ケーブの再現模型
記念館での目玉展示は横井氏が住んでいた穴(ヨコイケーブ)を再現した実物大模型。部屋の一室がまるまる模型という大きさです。実際の穴は地中にあったので入口は天井にあるのですが、便宜上横から入場する形になっています。材質は竹や紙。しっかり作ってありますよ。
1人でこんな穴掘れるの!?
中には裸電球が一つ灯っていますが、当時は横井氏手作りの油のランプでした。電球の明かりでも中は暗いです。竹で棚が組んであったり、地面が竹敷きになっていたり。これ個人で作れるもんなの!? ものすごくバイタリティある人だなあ!
手先の器用さに脱帽
中にはトイレや空気の循環をうながす排気管まであったそうです。なかなか文化的な生活。当時を再現したイラストを見ると、竹でカゴを編んだり、木の繊維で織物を織ったり、ココナツでお椀を作ったりと、とても手先が器用で賢い人だったことが分かります。
日本生活になじんで精力的に活動
戦中から28年も経ったら浦島太郎状態ですよね。日本になじめるのだろうかと思ったのですが、帰国した同年に結婚、サバイバル生活についての講演、評論で全国をかけまわり、参議院議員選挙にも立候補、陶芸を始めて個展を開催するなど精力的に現代日本生活を謳歌されたようです。
実際の横井さんはどんな人?
記念館でいただいた『GUAM LIFE』というグアムの情報誌の特集に妻の美保子さんのインタビューが載っていました。実際の横井さんは物静かでロマンチストだったみたい。美保子さんとはお見合い結婚なんですが、その時横井さんはグラスのコースターに「君想う 心に勝る 名城の月」と書いて美保子さんにそっと渡したそうです。素敵ねえ☆
想像力豊かなナチュラリスト
奥様が語る横井さん像を想像するにジャングルでたくましくサバイバルする野人(失礼)というよりは繊細で器用、想像力豊かなナチュラリストだったんだろうなあ。ご存命の頃にお会いしたかった。(2008年06月29日訪問)【麻理】
追記:2018年04月03日
2018年03月にグアムに滞在されていた、イラストレータ・法廷画家の榎本よしたか(@YoshitakaWorks)さんが、現地のヨコイケーブの写真を撮影されました。またパイレーツコーブというレストランには横井庄一さんコーナーもあって、壁にパネルや写真イラストが展示されているそうです。貴重な資料ですね。ブログ掲載へのご快諾ありがとうございました。私も現地をぜひ見てみたくなりました。
タロフォフォの滝を見物後、横井庄一さんが潜伏していた洞穴も見てきました。実物を観るとやはり感じるものがありますね。こんなところで孤独に28年も・・・。 pic.twitter.com/wcwfeWYDO7
— 榎本よしたか (@YoshitakaWorks) 2018年3月30日
滝から横井さんの洞穴までの間は歩いて10分ほどなのですが、モノレールが走っていると聞き、乗ってみようかと足を運ぶとこのようにラピュタ化していました。これはこれですごい絵面。 pic.twitter.com/kNBv3pBNIY
— 榎本よしたか (@YoshitakaWorks) 2018年3月30日
パイレーツコーブのオーナージェフさんは横井庄一さんと交流があったらしく店の一角に横井さんの展示コーナーが作られていて見応えがありました。パネル前に大きなベンチが設置されており「よっこい・・・しょーいち!」と言いながら座ったら妻に白い目で見られたのがグアムにおける黒歴史の一頁。 pic.twitter.com/o75N1MKRq4
— 榎本よしたか (@YoshitakaWorks) 2018年3月30日
参考文献
地図&情報
横井庄一記念館(よこいしょういちきねんかん)
住所 :愛知県名古屋市中川区冨田町千音寺稲屋4175
電話 :052-431-3600
時間 :10:00~16:30
開館日:日曜日のみ開館
入館料:無料
駐車場:1台のみ
※団体や日曜日以外の訪問希望は記念館まで連絡のこと
関連URL:横井庄一記念館・明日への道