三重県の鳥羽湾めぐりをド派手な遊覧船・龍宮城で満喫。浦島太郎の民話の真の意味とは? 浦島伝説の民族学的考察について、伝承文学研究で有名な三浦佑之先生の説をご紹介します。
人気の鳥羽湾めぐりとイルカ島コース
伊勢の鳥羽湾は数多くの島々が連なる美しい景勝地。1時間20分かけて、佐田浜港からイルカ島をぐるりとまわる「鳥羽湾めぐりとイルカ島コース」は人気の観光コースです。この遊覧船・龍宮城のルックスは不必要なほど豪華絢爛なんですよ。いくつかある船の中で一番人気です。
『浦島太郎』をまるごとフィーチャー
なんとこの船、おとぎ話の『浦島太郎』をまるごとフィーチャーしてるんです。中国風の緑の屋根に朱塗りの柱。動く横浜中華街のよう。乙姫様の住む龍宮城がドカンと船に乗っかってます。船の先端には黄金に輝く、カメに乗った浦島太郎、屋上には5メータはあろうかという巨大な乙姫像が。
メインカラーは朱・緑・金
目が痛いほど極彩色。風光明媚な鳥羽の自然から極端に浮きまくっているデザインです。屋根の上に乗った金鯱や龍がマブシイ! 「メインカラーは朱・緑・金の3色」と公式サイトで宣言しているだけあって、その派手な色づかいに唖然。
珍な風味の人形がいっぱい
また人形が実に珍風味。ラストシーンで玉手箱を開けておじいさんになった浦島太郎は、驚きと悲しみが入り交じった良い顔をしてるんですよ。小学生の女の子が複雑な表情で浦島太郎をじーっと見つめていました。
客室も龍宮城や海の風景
船内も、浦島太郎一色。お話に登場するシーンを船のあちこちで再現しているんです。ここは2階・後部客室。龍宮城の乙姫様とおつきの少女の人形が置かれています。中は赤と緑を基調色とした中華風。席で飲み物を注文することもできます。
『浦島太郎』のお話のおさらいもできる
こちらは2階前部客室。壁に浦島太郎のお話を天井近くの壁に紙芝居風に展示してありますので「どんなお話だっけ?」というあなたにも大丈夫な親切設計。
おやつを食べながら優雅に船旅
売店もありまして客室でおやつを食べることもできます。たこ焼きやフランクフルトなどの軽食があります。私はドーナツとカフェオレのセットで優雅に船の旅を楽しみました。売っているスナック菓子でカモメの餌付けができるサービスもあります。
チャッピー号やフラワーマーメイド号も
志摩マリンレジャーでは、他にも変わった船が用意されています。上の画像はイルカ島にちなんだチャッピー号。69トンの小さな船で、黄色いイルカが海の上で遊んでいるような可愛らしさがあります。下の画像はフラワーマーメイド号。屋上デッキのセクシーな人魚像が目印。
イルカ島でイルカショーも堪能
寄港地のイルカ島はイルカの形をした小島です。アシカやイルカのショーを開催していますよ。ゆっくりまわれば約2時間楽しめるマリンリゾート。イルカ島で船を乗り換えることもできるので、ぜひ一度は龍宮城に乗ってみてくださいね。(2006年11月27日訪問)【麻理】
【コラム】浦島太郎はなぜ老人になったの?
『浦島太郎』はもちろんあなたも知っていますよね。でもこのラストシーンを納得できる方はほとんどいないのではないでしょうか?
亀を助けたお礼に龍宮城へ行ったはいいけれど、地上に帰ってみれば数百年の時が経っち、乙姫様にもらった玉手箱を開けてみたら、白い煙とともによぼよぼのおじいさんになってしまう。「亀なんか助けるんじゃなかった!」と己の運命を呪わずにいられません。
伝承文学研究者・三浦佑之先生の説をご紹介
なぜこんな理不尽なお話が長年伝えられているのでしょうか。この謎を解くために伝承文学研究で有名な三浦佑之(みうらすけゆき)先生の説をご紹介いたします。
日本書紀や万葉集の浦島子
浦島太郎の元ネタは日本書紀や万葉集までさかのぼります。主人公は浦島子。漁で亀を釣り上げたら、その亀が美しい女に変身して、一緒に蓬莱山に行ったと書かれています。蓬莱山は中国の神仙思想でいうユートピア。仙人が住み永遠の命を謳歌できる夢の地です。
実はポルノ小説だった浦島太郎物語
問題は浦島子と女の詳しすぎる性描写。平安時代、漢文で書かれた浦島子伝説では、蓬莱山の美女とのベッドシーンが体位も含めて延々と書かれています。実は浦島子伝説は恋愛ポルノ小説として読まれていたんです。
現在の浦島太郎は明治時代に書き直されたもの
中国の房中術(男女の交わりによって不老長寿を目指す技法)を表しているともいえますが、実際平安時代の貴族の男子が、ポルノ小説として楽しんだのは想像に難くありません。現在の『浦島太郎』は、明治時代に性的な描写をそぎ落として、子供の教科書のために書き直されたお話なのです。
白い煙は浦島子の魂
蓬莱山は時間が流れない不老不死の国。里心が出た浦島太郎が地上に戻るとき、女は玉手箱を渡します。この中に入っていたのは、浦島子の魂であると三浦先生は述べています。白い煙が抜け出た時に、浦島子が死者の魂を呼び戻す「魂呼ばい(たまよばい)」という行為をしているからです。
魂が劣化するから、肉体も劣化する
古代の思想では、肉体が老い死に至るのは魂が衰弱するからだと考えていました。地上へ戻る浦島子を心配して、女は浦島子の魂を完全な密封状態で玉手箱に閉じこめました。外界の空気に触れなければ魂が劣化せずに、永遠の生命を保つことができるからです。
浦島子は箱から出たのが自分の魂だと気づき、慌てて魂呼ばいをしたものの時既に遅し。たちまち数百倍のスピードで肉体も劣化してしまいました。玉手箱を開けさえしなければ、永遠の命を得られたのに。
まるでCGのホラー映画やSF映画
万葉集の長歌に書かれた伝説では、このシーンを迫力ある語り口で表現しています。みるみるシワが寄り、髪が白くなり、やがて息絶えてしまう浦島子。三浦氏はまるでホラー映画やSF映画を見ているようだと言いますが、当時の人々はまさにドキドキハラハラしながらこの物語を読んだり聞いたりしたのでしょう。
エロ&ファンタジー&ホラー&SFスペクタクル
浦島子の物語は、中国の神仙思想、古代日本の死生観が混じり合い、奇想天外な物語としてたくさんの人々を魅了してきました。エロありファンタジーありホラーありSFありの大スペクタクル物語が受けるのは今も昔も変わりません。興味のある方はぜひ三浦先生の著作を読んでみよう!(2006年11月27日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
志摩マリンレジャー 鳥羽湾めぐり(しままりんれじゃー とばわんめぐり)
住所 :三重県鳥羽市鳥羽1-2383-51
電話 :0599-25-3145(鳥羽マリンターミナルのりば)
休業日:下記サイトURL参照のこと
料金 :大人1900円(鳥羽湾めぐりとイルカ島)
時間 :下記サイトURL参照のこと
駐車場:有料
関連URL:志摩マリンレジャー