福井県出身の作家・水上勉。重厚感ある社会派の小説家として知られています。晩年は社会福祉活動に力を尽くしましたが、その功績の一つである若州一滴文庫をご紹介いたしましょう。
竹人形劇の若州人形座の拠点
水上勉(みずかみつとむ 1919~2004年)氏の代表作は『飢餓海峡』『はなれ瞽女おりん』など。若州一滴文庫(じゃくしゅういってきぶんこ)は、水上氏が主催していた竹人形劇の若州人形座の拠点として、1985年に建設されました。竹人形を展示した竹人形館の他、本館には水上氏の蔵書2万冊を収めた図書室も開館しています。
「たった一人の少年に」
水上氏は「たった一人の少年に」という文章でこんな風に書いています。
ぼくはこの村に生まれたけれど、十才で京都に出たので、村の小学校も卒業していない。家には電燈もなかったので、本もよめなかった。ところが諸所を転々として、好きな文学の道に入って、本をよむことが出来、人生や夢を拾った。どうやら作家になれたのも、本のおかげだった(中略)本は多くの人によまれた方がいい。どうか、君も、この中の一冊から、何かを拾って、君の人生を切りひらいてくれたまえ。たった一人の君に開放する
緑豊かな若州一滴文庫
私も一ビブリオマニアとして大いに氏に賛同するものであります。こちらは茅葺館。建設当初は竹人形劇の劇場や展示室として使われていました。樹木が美しく植栽されていて癒される風景となっています。
ベストセラから稀覯本まで
本館にある図書室はベストセラから稀覯本まで素晴らしいコレクション。思わず涎が……じゃなくて、水上氏の知的好奇心の強さに思わずため息が出ました。才能があって優しくハンサムな水上氏。カッコイイオジサマですなー。
自然に任せた庭造り
7000平方メートルの敷地には古き良き時代の建物が草木の中に溶け込んでいます。これは「草も花も仲間です。大事にしてやってください」という水上氏の言葉どおりに、自然に任せた庭造りをしているからです。心が癒されます。
壁にびっしりと数百の人形の首が並ぶ
さて、ここがなぜ珍スポットなのかと申しますと、竹人形館がそりゃあもう、すごい光景なんですよ。若州人形座に出演した竹人形(本体と頭)が300以上も部屋中に展示されているんです。壁にびっしりと数百の人形の首が並んで、こちらを見つめているのだから背筋がゾクゾク。まさに幽玄の世界。
竹人形は息詰まるような迫力
かなり食い下がったんですが、撮影は禁止。薄暗く、白熱灯がぼんやりと灯った空間に並ぶ首・首・首。文楽の人形と違って、竹人形は素朴で簡素な作りです。それだけに人形に込められた思いが濃縮されているようで、息詰まるような迫力があるんですよ。ううう、写真でお伝えできないのが悔しい。
六角堂でおそばを
六角形をした建物・六角堂ではおそばやよもぎ餅などを味わうことができます。囲炉裏を囲んだテーブルで庭の木々を眺めながら一休み。慌ただしい珍スポ旅行の清涼になりました。(2007年06月09日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
若州一滴文庫(じゃくしゅういってきぶんこ)
住所 :福井県大飯郡おおい町岡田33-2-1
電話 :0770-77-2445
時間 :09:00~17:00
休業日:火曜日(祝日の場合はその翌日)年末年始
入場料:300円
駐車場:無料
関連URL:トップページ | 若州一滴文庫 ― 水上文学と竹人形文楽の里 ―