埼玉県秩父の即道(そくどう)という人物が残した謎の石があります。石に刻まれた暗号文を解けば、即道のような怪力・快速の超能力者になれるという伝説も。即道の謎に挑戦してみる?
道路脇にひっそりと立っている即道神社と薬師如来堂
秩父市の道路脇の民家の一画に、小さな祠がふたつあります。ひとつは即道神社(そくどうじんじゃ)、もう一つは薬師如来堂です。現地に行くまでは鳥居や拝殿のある普通の神社を想像していたので、見逃してしまうところでした。
即道の怪力エピソード
即道は江戸時代中期の人物で、出家前は六兵衛定之という名前でした。子供の頃から怪力で知られていて、数人がかりでも動かない大岩をかついで放り投げたり、12段ある梯子に薪を積んで走り回ったりしたと言います。
ものすごく足が速い即道さん
また即道は俊足の持ち主で、一反(12m)の布を腰に着けて走った時には一度も布が地面につかなかった、お湯を火にかけて沸騰する前に武甲山(標高約1300m)の頂上の鐘をついて帰ってきた、100km以上離れた江戸の魚市場で魚を買って夕食までに戻った──という驚くべきエピソードがいっぱい。
即道伝説の物的証拠は?
かなり話を盛ってる気もするけれど、実はオリンピック選手並の脚力の持ち主でウワサ話に尾ひれがついたのかなとも思います。でも即道の超人エピソードはそれだけではありません。ちゃんと物的証拠もあるのです。
富士山から巨大な石を懐に入れて持ち帰る
六兵衛は晩年に村の贄川(にえがわ)の常明寺(じょうみょうじ)の住職にり、名前を即道に改めました。そして後世の人々に置き土産を残したいと言って富士山へと走って行きました。しばらくして即道は懐に巨大な石を入れて帰ってきて、自分の爪で石になにやら彫り始めました。
爪彫石に刻まれた謎の暗号
それがこの爪彫石。重さは少なく見積もっても300キロ以上あると思います。表面に円を描くようにぐるぐると文字や図形、和歌、年号が刻まれています。「不思議、菩提明、後世誌置、まさにねはんまさにいるか那」のような意味がよくわからない言葉です。一説には即道が体得していた怪力・快足の奥義が書いてあるそうですよ。
即道が一晩で彫った薬師如来像
即道の不思議な力を示す証拠は爪彫石の他にもあります。即道神社の隣りにある薬師如来堂。このお堂の中にある薬師如来坐像は、即道が山中にこもってたった一晩で彫り上げたと伝えられています。
なんと橋立寺の鍾乳洞・岩窟も即道が作った!?
さらに前回ご紹介した、秩父34ヶ所観音霊場の28番札所・橋立寺の鍾乳洞や岩窟も即道が掘った(発見した)という言い伝えもあります。どんだけ超人なのよ! 超人エピソードがインフレ起こしそうです。

即道はタイムトラベラー? 宇宙人?
おそらく即道は秩父の山で修験道に励んでいた修験者なのかもしれませんね。でも個人的には、即道はタイムトラベラーで遠い未来からやってきて不思議な道具を使って奇跡を起こした、または実は宇宙人で──みたいなお話の方が好きですが。
我まさに入定す──でも即道は消えた!
また即道は没年もはっきりしていません。というのも享保15(1730)年の9月7日に贄川の常明寺で「我正に入定す」と言って穴の中に入っていったのですが、しばらくして村人が穴の中を覗いてみると即道は煙のように消え失せていたのです。
四国・高松での目撃談も
その後に四国の高松で即道を見たという目撃談までささやかれるようになりました。四国の即道はまったくの別人? それとも……? うん、やっぱり即道さんは未来人か宇宙人かもしれないわね。(2016年07月16日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
即道神社(そくどうじんじゃ)
住所 :埼玉県秩父市荒川上田野975
電話 :0494-22-248(秩父市教育委員会事務局)
拝観料:無料
駐車場:なし
関連URL:即道終焉の地/秩父市