埼玉県吉見町の吉見百穴に隣接している岩室観音は、岩をくりぬき88体の観音石仏を祀った古刹です。岩と岩の間に挟まるように建てられた珍しい建築。神秘的で荘厳な雰囲気です。
吉見百穴の隣にある荘厳なお堂
岩山にボコボコとあいた穴の奇景で知られる吉見百穴(よしみひゃくあな)。そのすぐ隣ともいえる場所に、岩室観音(いわむろかんのん)という観音堂が建っています。岩にすっぽり包まれたように建っています。荘厳なお堂は前に立つと圧倒されるような気持ちになります。
弘法大師が開いたが、戦乱で焼失
その昔、弘法大師・空海が観音像を彫刻してこの岩窟に納め、岩室山と名付けたと言い伝えられています。さすが超人・空海、埼玉でもその名を轟かせていますね(空海関係の記事一覧はこちら)。ただこれも伝説のようなもので確かな記録はありません。
またもともとのお堂は天正18(1590)年に豊臣秀吉が関東に出陣した際に焼失しており、現在のお堂は江戸時代の寛文年間(1661~1673)に龍性院第三世堯音が再建したものと言われています。
88体の石仏を拝むと四国八十八箇所めぐりと同じ功徳が
岩室観音には88の石仏が祀られており、それぞれは四国八十八ヶ所のお寺の御本尊を模したものです。この石仏に手を合わせると、実際に四国をお遍路するのと同じだけの功徳があるのだそうです。ここ一か所だけお参りすれば良いとはイージーですが、忙しい現代人にとってはありがたいことです。
災難除け、交通安全、商売繁盛、安産に霊験あらたか
二階部分に登ってみました。梁や壁にたくさんの千住札が貼られています。災難除け、交通安全、商売繁盛、安産に霊験あらたかと書かれていました。人間のだいたいの願望や厄除けをカバーしてくれていますね。
岩窟に作られた、懸造(かけづくり)の建築
この岩室観音のように岩窟にへばりつくようにして建てられた建物を、懸造り(かけづくり)と言います。いちばん有名なのは京都の清水寺観音堂があります。福島県の左下観音堂(さくだりかんのんどう)も同じ懸造のお堂です。この建築法は世界的にも大変珍しいものです。
真新しい御札が貼られた石仏
お堂の両サイドの側の岩は洞窟のようにくり抜かれていて、そこに石仏を祀っています。各石仏に数枚ずつ御札が貼られています。御札は真新しいので、地元の方が今も熱心に信仰されていることが分かります。
秘密の隠れ家のような雰囲気
ただ中には首が落ちてしまっている石仏もちらほら。バーミヤン遺跡もそうですが、壊れてしまっている仏像を見ると完全でない分よけいに心に迫るものがあります。吉見百穴は観光客でいっぱいですがここは訪れる人もほとんどおらずひっそりしていました。秘密の隠れ家のような雰囲気です。
岩室観音の背後の山に松山城跡
この岩山の上には松山城跡があります。岩室観音は代々松山城主が信仰して護ってきたお堂なんですね。観音堂の背後は急斜面の山で登れないことはないのですが、ここから松山城跡までたどり着くのには結構な登山を覚悟してください。
胎内くぐりにレッツチャレンジ
そこまでしたくないという方は、途中の胎内くぐりで引き返すと良いでしょう。斜面にとりつけられた鎖をたよりに岩をよぼると、ハート型の穴があいています。その穴をくぐると願い事が叶うそうですよ。通り抜けた向こう側からハートに見える角度を探すと上手く撮影できます。
吉見百穴だけ見て帰るのはもったいない!
洞窟の先から漏れる光に照らされた石仏が神々しく見えました。吉見百穴には大型観光バスがずらりと並んで次から次へと観光客が足を運んでいました。でも吉見百穴だけを見て引き返してしまう方も多いみたい。もったいないなあ! 目と鼻の先にこんなにすごいものがあるのに。(2016年07月17日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
岩室観音(いわむろかんのん)
住所 :埼玉県比企郡吉見町北吉見
電話 :0493-54-9111 (吉見町埋蔵文化財センター)
時間 :参拝自由
駐車場:無料