岩壁にへばりつくようにして建っている木造の観音堂。福島県の左下観音堂(さくだりかんのんどう)は、世界的に珍しい驚異の建築です。心霊スポットよりも震える超絶景をご堪能あれ。
行き方がちょっと分かりにくい
左下観音堂はちょっとわかりにくいところにあります。地図上では確認できても、山の中にあるのでどこからたどり着けるのやら結構迷いました。他にも良い道があるのかもしれませんが、私が行ったのは「会津工場フェニックスGSP」の看板がある小道からのルート。「有限会社山王」の看板方向へどんどん山を登って行きました。
山道を徒歩で登る
途中でクルマを駐車して、歩きで山道を進みます。訪れたのは晩秋。落ち葉をカサカサと踏みしめながら滑らないように足を運びます。本当にこんな山の中に寺院があるのかしら……と不安に思いつつも登り続けました。
唐突に姿を現す観音堂
すると5分ほどで忽然と三階建ての大きな木造建築が目に入ってきました。途中に看板も案内板もないので、あまりの唐突さにびっくり。思わず「わあ!」と小学生みたいな声が出てしまいます。
世界的に珍しい懸造り(かけづくり)
このような崖や山にぴったりとくっつくようにして建てられた木造建築物を「懸造り(かけづくり)」と言います。崖造り(がけづくり)とか舞台造り(ぶたいづくり)などとも呼ばれています。京都の清水の舞台が一番有名でしょうか。懸造りのお堂は全国各地にありますが世界的には珍しい建築方法です。東北にはこの左下観音堂の他にも10ヶ所以上の懸造りが存在しています。
廃墟マニアは心惹かれるかな
清水寺の豪華さに比べると、左下観音堂はかなり地味に感じるかもしれません。でもその素朴な外観こそ侘び寂びに通ずる気がします。ノスタルジックかつダイナミック。たぶん廃墟マニアはかなりこの路線好きなんじゃないかしら。
建立から1000年以上
左下観音堂は縁起によると830年に弘法大師が開山したと言われています。またしても空海の偉業です(一説には徳一大師だとも言われていますが)。建立から1000年以上も経っているんですね。さすがの風格です。
左手の坂から観音堂へ
観音堂に向かって左手にある坂がお堂に通じています。石段、木の階段を上って観音堂にお参りしましょう。ここにはご本尊の首頸(くびなし)観音が祀られています。首頸観音は秘仏とされていて見ることはできません。
神秘的な岩屋
先へ進むと、その先に岩屋があります。神秘的な雰囲気の洞窟です。
首頸(くびなし)観音のいわれ
お堂の前にあった説明書きはこうありました。延長(923〜930)のころに、越後の人が無実の罪を受けて救いを求めて観音堂に逃げてきました。しかしその人は追手に捉えられて打首になってしまいました。生首を越後の殿様に見せた所、それは観音の石の首に変わっていたそうです。これが首頸観音のいわれ。
背筋がヒヤリのスポット
洞窟の中には赤いべべを着た石がたくさん並んでいて、背筋が冷やっとするような気持ちがしました。でも冷やっとするのは、この洞窟の作りのせいでもあります。岩屋の地面は穴に向かって徐々に下降していて、その先には観音堂の三階部分の廻り縁が見えているのです。つまりそこは断崖絶壁。足をすべらせると地面に向かって真っ逆さま!
跳べるかな、跳べないかな(跳ぶな、馬鹿!)
頑張って先まで進んでみました。身の軽い人だったらジャンプすれば向こう側の周り縁に飛び移れるかもしれません。高所恐怖症のくせに衝動的にやってしまうような気がして心臓バクバクしてきました。馬鹿だからやりかねない。
周り縁から見るとたいしたことない?
これは周り縁側から見た岩屋。こっちから見ると「なんだたいしたことないじゃん」と思ってしまいますが、下は結構な高さがあって落ちたら大怪我しかねません。
床を踏み抜きそうな音
しかし本当に怖いのはこれからだ! 床は歩くたびにギシッ……ギシッ……ってかなりの音がするんですよ。木が腐ってて踏み抜いてしまわないだろうか、いやいや大丈夫、会津美里町教育委員会の説明書きだってあったし、ちゃんと修繕管理はしてるはず。と自分に言い聞かせながらおっかなびっくり歩きました。
常にへっぴり腰
手すりとかロープとか、観光客を甘やかしたヌルい安全装置はゼロ。吹き抜けのテラス部分も、急な階段も常にへっぴり腰で移動。ギッ! という音が鳴るたびに、「ぅひゅ〜」とか変な声が出ます。眺望も素晴らしいんだけど、手が震えて上手く写真が撮れなかったです。
くれぐれも無茶しないこと
これは下手な心霊スポットよりもよっぽど怖い。例によって他に観光客が全くいないし周囲一体が山なので、一人で来て落っこちても誰も助けてくれなさそうな状況です。だから絶対に夜に肝試しに来たり、無茶なことをやらないようにくれぐれもお願いします。
高所恐怖症の人には過酷な参拝
ぐるぐると観音堂内を巡って、階段から下りて地面へ。地に足をついてようやく震えが止まりました。高所恐怖症にとってはかなり過酷な参拝でした。
ぜひあなたにも体験してほしい
写真だけでは決してすべてを味わうことができない左下観音堂。忽然と姿を表した時の感動、洞窟からの息をのむ眺め、(恐怖で)高鳴る鼓動! ぜひあなたにも体験していただきたい。この素晴らしい、驚異の懸造りをもっともっとたくさんの人に知ってもらいたいと思いました。(2013年11月27日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
左下観音堂(さくだりかんのんどう)
住所 :福島県大沼郡会津美里町大石字東左下り1173
電話 :0242-56-4882(会津美里町観光協会)
休業日:年中無休
時間 :見学自由(夜はおすすめしない)
入場料:無料